おばちゃん回顧録 ~珍しいこともあるものだ~

おばちゃま
 
これに触発されて。
 
 ちょっとあたしも色々書いてみようかと。
 
 羊皮紙と、ペン。
 
 
 ……(ガリガリガリガリ)。
 
 ……。
 
 ……羊皮紙がゴミのようだ……、
 
 あ、そこの記録係。ちょうどよかった、手伝え。何見習い?知らんがな。あのな……。
 
 
 
 
 
 パトリアンナ・ケイジという名前に、ただの一つも真実は無い。
 パトリアンナなど、誰が聞いてもまず間違える。仕方が無い。コレは造語なのだ。
 
 本名は、アンナ・コッポラという。もう、誰も知らない名前だし、誰も知らなくていいことだから、どうでもいいのだけれど。
 
 このオバチャンにも一応少女の時代というものがあって、そのときはそれなりに恵まれた生活も送っていた。
 血筋は悪くなかった。ただ、貴族としてはどん底の底だった。
 
 だから、家柄にしがみつく父母が嫌になって、兄弟たちに倣ってとっとと家を出てしまった。
 
 一人で何でもできる。これからは自由なのだ。
 
 お金はない。だが貧乏には馴れていた。馴れていると思っていた。だから、絶望は無かったね。
 だから。すぐに世間様の厳しさに打ちのめされることになった。
 家も無い。体力も無い。そしたら仕事なんてあるはずも無い。その時のあたしには、家を捨てたくせに妙なプライドがあったらしく、どうにも仕事場で馴染むことができなかった。
 
 雨に降られて、金も底をついて。新しい仕事を探す気にもならない。そんな所に行かなくても、人間関係なんか無くたって一人でやっていける。
 
 本当に、妙なプライドだったね。親父、つまり、Patriと呼ばれるのも今では納得がいく。
 
 間もなくあたしはゴミ漁りになった。
 
 そこらの浮浪者に混じってゴミを食う日々。それでも一人で生きている、というなけなしのプライドが何とかあたしを立たせてくれた。
 そのうち、浮浪者仲間から親父と呼ばれるようになる。そのとき自分はアンナ・ケイジと名乗っていたから、そこでパトリアンナ・ケイジの誕生と相成ったわけだ。
 
 ケイジと名乗っていたのは、家のことは忘れたかったから。それに尽きる。
 
 浮浪者でセカンドネームがあるってのは、それだけで珍しい。あたしは彼らにも暫くは馴染めなかったが、やがて泥と空腹に塗れるうちに、打ち解けた。
 あたしはここまでギリギリの状況でないと他人を信頼できないのだね。多分。
 
 仲間だとわかったら途端に愛おしくなる。親父と呼ばれるようになったのは、「女の癖に」ってのもあるが、浮浪者仲間の喧嘩の仲裁なんかを進んでやってたからだ。あたしは奴等の世話役になった。
 
 悪くは無い日々だったよ。
 
 冒険者、という職業の人間を見たのはそんな時のことだ。ウワサには聞いていた。ギルドに所属し依頼を受けて生計を立てる何でも屋。だが実際に目の当たりにしたのは、その森に入っていく冒険者たちが最初だった。
 
 森。獣達の巣窟。危険の代名詞。
 
 一人で生きていく、という望みと、身につき始めていた自立への自信が後押しした。そこには、町にもゴミ捨て場にも無い、将来への希望って奴があるような気がした。真に誰とも接しず生きていける場所。
 あたしは浮浪者仲間を振り切って、なけなしで弓と矢を買って森に踏み込んだ。
 
 泣きそうになりながら何とか生きてたね……。
 熊にも遭ったしゴブリンにも遭った。道具がないときもあったし、森に入ってすぐに矢なんか射つくしちまったから、試行錯誤で木の枝から矢を作ったり。おかげで、身につけた筋肉は未だに健在だ。
 
 40になるまでしがみついていたんだからお笑いだよな。
 よーやっと一人で生きて行けるようになって。それから冒険者になって。それから、傭兵になって。
 
 森の生活は、少女を狂戦士に仕立て上げるのに充分な試練だったよ。
 血の匂いはどうにも「美味そうな匂い」に感じちまうんだから救えねぇ。
 いい仕事だと思うよ、冒険者は。頭と躰が鈍ることはないからね。銭にも厳しくなれるし。トモガラも出来る。
 
 ただ、もしアタシに娘がいたら。全力で止めるけどね。「あんなのヤクザ稼業だから。そんなことしなくても生きて行ける。」
 いや、それとも、こうかな。「さすがアタシの子だ、どこまでも救えない。」
 
 今から子供を産むなんてまあ無いがね。相手もいないし。憧れることもあるが、似合わないとすぐに打ち消すよ。
 一人がいいと言って、ここまで来たのだから。
 
 一人では生きて行けないということも、学んだけどね。
 
 人並みの生活は、出来て当たり前なんかじゃない。と、あたしは思っている。だから、今を手放したくはない、とも思ってしまう。
 弱くなったのか、それともあたしの育ちが異常すぎたのか。時々考えちまう。そんなときはエールが苦くてたまらねえ。
 
 それこそが幸せと、人は言うのかもしれないが。 
 
 
 おばちゃんは本当に他人と絡む気ゼロ。ゼロサム。
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