鳩散らし

 「討ち滅ぼすのだ。
 
 その敵は会話より何より、闘うことに適している。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 ミカ様ミカエラ・バラン・瀬田のリプレイが返ってまいりましたのでご紹介……。 プレイングは、こちら……。
 
 時間的制約もあって、相談を練り上げるお手伝いができず、プレイングも今一書き込みきれていないものだったのですが……。
 
 
 
 
 犬と、画面とを交互に見つつ、ミカエラはビデオを再生させていた。折りしも、トカゲ型エイリアンが、銃を抜いて人間型エイリアンと撃ち合っている場面。
 犬の様子は、何事も無かった。背筋をぴんと伸ばし、画面をじっと見ている。
「‥‥背筋を、伸バし?」
 ミカエラは、重心を変えた。先刻に流れた「怪星からの怪物X」に出てきた、犬に取り付き変形した宇宙生物。今の犬は、恐ろしいくらいに、それに似ていた。
 犬は、ぎろりと眼球を彼女のほうへと向ける。くわっと口を開け、大きく背伸びする。
 動く事さえだるそうだった犬が、なぜか俊敏な動きを見せている。その原因を、彼女は予想し、獣化し始めた。
 刹那。
 伸びた触手が、ミカエラのいた場所を打ち据えた。
 半獣化し、翼を広げて飛び立ったミカエラは、そのまま宙を舞い、後方へと降り立った。老犬が、負の生命力をあふれさせつつ、変形する様を見つつ。
 
 (中略)
 
 情報生命体に戻れはしない。既にモニターは切られ、その前をミカエラが立ちはだかっている。ミカエラは怪物を追い詰めた事を確信し、突撃した。
 バトルガントレットとソーンナックルにより倍加した拳のラッシュが、怪物の脚をへし折り、怪物の触手を引きちぎる。
「トドメ!」
 吸蝕精気を用い、殴った腕からそいつの生命力を吸い取った。脚から力を失い、倒れたナイトウォーカーは、もはやそこまで。ミカエラは憎悪の対象よりコアを抉り出すと、小気味良い音を響かせつつ、それを踏み潰した。
 
 
 
 お疲れ様です。ナイトウォーカーとの邂逅からとどめ、初めと締めを請け負わせて頂きました……。ありがとうございます……。
 
 カッケェ。実にカッケェです……。塩田多弾砲マスター、及び、ご一緒させていただいた皆様方あっての活躍です……。ありがとうございました……・
 
 ……カッケェ。実にカッケェ。そんな、かっこよさを。
 
 鳩もまた、今宵追求しようかと。
 
 幕は、静かに開きます……。
 
 
 
 長髪にくわえ煙草の男が立っている。植松宗撰。サングラスに黒い背広、白いショール。古めかしいとすら言えるマフィアスタイルで、彼は佇んでいる。
 ツーテールに青い瞳の女が構えている。鳩。サングラスに白い貫胴衣、白いスカート。どこの国とも付かない服を来たどこの国とも付かない少女が、中国拳法の構えをとっている。
 
 「俺、暇じゃあないんだけどね、鳩ちゃん?」
 
 睨みあったまま動かない状態は、かれこれ2、3分は続いていた。
 重心を落として拳を構える鳩に、宗撰はただ佇むばかり。 
 
 「……。」
 
 飽き掛けた様子の宗撰に、鳩は顔色一つ変えず視線を浴びせかけている。
 『これ』は、鳩から持ちかけたことだった。彼、植松宗撰が自分の逢魔・ティアとスパーリングしていたのを見て、血が沸き立った。見たことのない流麗で容赦のない動きをしていた。
 興味を持った、『拳を極めるもの』として。
 
 「鳩ちゃん、なあ、聞こえてる?」
 
 顔を突き出して挑発する宗撰に、遂に鳩が動いた。半歩。半歩進み、一歩。一歩進み二歩。二歩進み、そして。
 駆け出した。
 目標地点は敵前方50cm。自分の拳で相手を『貫ける』距離。
 
 動かない宗撰の目の前に右脚を着地させ、右拳を伸ばす。顔面に。
 
 受けたのは、鳩だった。もっとも体重の乗った瞬間に、右頬に左拳を叩き込まれた。
 のけぞるのを見逃さない。宗撰は鳩の足を踏みしめ。ワンツーの要領で右拳を差し込む。しかしそれは、鳩の左掌が受け流してつかみ、そのまま引き込んで腹蹴りに繋いだ。
 
 互いに距離を取り唾を吐く。
 
 「単純なんだよ。 」
 
 鳩の渾身の直突きに、何も構えない状態からカウンターを入れて見せた。
 
 「安直です。」
 
 カウンターを耐え切り、追い打ちを逆にカウンターして見せた。
 
 植松の戦闘術は、言わば無構え。あえて構えないことで、如何なる攻撃にも対応し、如何なる攻撃も可能にするニュートラルな心構えだ。
 対して鳩の戦闘術は、拳を打ち込むことに特化した構え。無論、拳法の構えと言うものは必ずしも攻撃に特化している訳ではないが、どこかの点に重点的に精神を置く、と言う点では偏った心構え。
 
 「……しかし、なるほど。」
 
 鳩がさらに構えを取りながら呟いた。
 
 「何も構えずとも、攻防が可能とは。鳩の知らない理合いです……。」
 「ああ、俺もなるほど、だ。」
 
 植松も、ゆるりと立って呟く。
 
 「やっぱり武術の構えってのは、馬鹿には出来ないな。」
 
  互いの最良の「構え」。
 
 最高のニュートラルと、最高の破壊力。
 
 もとより、自分にはこれしかない。
 
 「次、参ります。」
 「どうぞ?鳩ちゃん。」
 
 鳩が今度はいきなり地を蹴った。勢い込んで飛び込んでくるのをさらにカウンター、と宗撰が拳を握ったところで鳩が急ブレーキ。
 一瞬困惑する宗撰の腹にひたり、と掌を当てる。
 
 しまった、と思ったときにはもう遅い。もう一歩の踏み込みが、腹を貫かんばかりの衝撃を宗撰に与えた。
 
 「がっは……!」
 
 零距離からの押し込み。鳩は間髪与えずさらに踏み込み肩をぶつける。腹はまっすぐ顔は打ち上げ。押し込みすぎないよう、密着しながら威力のある手を繰り出していく。
 
 「っち!」
 
 宗撰の躰に紋様が浮かんだかと思うと、地面が僅かに抉れ、彼の体は後方に飛んだ。人化を解いたのだ。
 鳩の続いて人化を解く。銀の篭手を顕現させ、離れた相手にさらに追撃をかける。宗撰はまだ構えられていない。
 
 「!」
 
 否。構える必要が、ない。なぜなら無構えは彼の骨頂。なぜなら無構えは心構えのみの構え。一合目の痛い目を忘れた鳩は、まんまと疑似餌に食いつく。
 
 こんどこそ、勢いに対してこれ以上ないカウンターキックが見舞われた。
 顎を蹴り上げられた鳩が大きく揺らぐと、宗撰はツーテールの片方を握り、鳩の顔を地面にこすり付けた。
 そして踏む。踏む。踏む。
 金属音にも似た音が響く。頭の皮がはがれ、髪が抜け血が滲む。宗撰は容赦しない。知っているから。魔人はこの程度では砕けないとしっているから。
 
 「……!」
 
 不意に鳩の足が持ち上がる。宗撰は離れ、次の瞬間に回転したその脚を片手で捌く。
 鳩は回転の勢いで立ち上がり、その間に宗撰は無構えを完成させている。
 
 「カポエイラもできるのかい?」
 「地身尚拳です……。」
 
 宗撰は変わらず立ち、鳩は変わらず拳を構えた。
 
 「いくらやっても無駄だぜ?鳩ちゃんは、単純すぎる。」
 「……確かに無駄でしょう。その程度を攻撃などと呼ぶなら、一週間経っても鳩を倒すことは敵わぬ。」
 「へぇ……言ってくれるじゃないの。」
 鼻血を出しながら、強がるか。
 「悔しいならば、打ち倒してみせてくださいませ。」
 無構えは見切った。あれは。
 
 「よし、その誘い、乗った。来な。ティアよりは楽しませてくれそうだぜ。」
 おまえの隙を、残らず刺し殺してやる。
 
 「参ります、植松宗撰。」
 どうやっても最大破壊力に到達できぬ構え!
 
 鳩が地を飛び、植松の目が光った。
 
―――――
 
 「植松さん、あなたそりゃ馬鹿というもんですよ。」
 「馬鹿と言うかね、馬鹿と。」
 
 両手を分厚いギプスに包んで横たわる宗撰の額に、鳩の主人、筧次郎がおしぼりをあてた。
 
 「ちぇー、いけると思ったんだけどなあ。」
 「鳩も片足がごっそりやられてますから。ま、悪い取引でしたな。」
 「あれで何とかなると思ったんだもんよー。」
 
 鳩の、顎を狙った蹴りに対して、腿を破壊する肘打ち。
 決定的な一撃は鳩の機動力を奪ったが、同時に決定的な隙を作ることにもなってしまった。
 
 鳩はたたきつけられた腿をそのまま震脚に発展させ、その銀の魔拳を打ち込んだのだ。
 反応はした。両手でガードしていなければ今頃胸骨がバラバラに砕けていた所だ。
 
 「ハンパじゃねえな……。」
 「頓法としての武術と、破壊する為の武術を真っ向ぶつけるからこういうことになる。煙玉に爆弾をぶつけられたら押し負けるに決まっているでしょうが。」
 「むぅー、納得いかねー。」
 
 無構えは、他の武術における構えに比べて護身術としての意味合いが強い。千変万化に対応できる代わり、一撃の最高威力を出すには聊か不向き。隙はつけるが、つけ『こめる』か、即ち、千変万化のうちの何がベストかを選ぶのはセンスと経験だ。
 対して鳩の構えは一撃必殺を目指す、ひたすらの威力の向上が目的。センスも経験も無くても、型稽古をしっかりと行っていれば、破壊力だけならかなりの水準まで高めることが出来る。
 
 同じ手数において、宗撰は残念ながら「当たって」しまったのだ。
 ダメージに還元できた手数は鳩に大きく勝るが、残念ながら鳩を倒すには総ダメージ量が今一歩足りなかった。鳩を倒すまでの間に使われた時間で鳩は乾坤一擲のサイコロを何度も振った。そしてピンゾロを出させてしまったのだ。
 
 「ハンパじゃねえな。」
 
 植松は再び呟く。あの細い腕から。女の腕から。心臓までぶち破らんする一撃が出るなんて。魔人とは、言え。
 
 「考え方は正しい。それを実践できてもいる。ただ……。」
 「ただ?」
 
 次郎は笑った。
 
 「あれの耐久力を女性並と見誤ったのが、敗因ですな♪」
 「……。」
 
 腹を蹴っても、顔を殴っても、あいつは怯まなかった。ひたすら構え、地面を踏みしめ、体をぶつけてきた。より重く、より重くなるように。
 
 「違いねえ。」
 「あれに体力勝負に持ち込まれた時点で、あなたの戦法は半分敗れていたわけです。」
 「……違いねぇ。」
 
 あれほどまで耐えるとはおもわなかった。たかだか17,8の少女が、20代後半の俺の攻撃を耐えて耐えて尚反撃してくるなど。
 一体、どういう少女だ。一体、どういう日常を送っているんだ。一体、
 
 「一体、どういう鍛え方してるんだ?」
 「秘密です♪」
 
 次郎は笑って、笊に挙げた饂飩を洗い始めた。
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