生まれながらに嵐ならば

 「豚め!
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 青田ぱとすのリプレイが返ってきましたのでお披露目……。プレイングはこちら。
 
 概ね成功です……。
 
 では、ブラジル水着に想いを馳せてまいりますのでまた自戒……。
 
 
「正直、前は油断してた。」
「……。」
 
 横たわる鳩の頭をとどめとばかりにもう一踏み。
 彼女の体はくの字に折れ、肘と膝はあるべき方向とは逆に折れている。
 魔装の篭手は顕現していない。
 踏みつける男、植松宗撰の肉体にも紋様は浮かんではいない。
 
「今度は、ちゃんと人化状態のままというわけですか♪」
 
 ぱちぱち、と拍手をしているのは、鳩の主、筧次郎。
 
「ああ、ルール破ったのはこっちだからな。何をされても文句言えない状態に、『自分からしちまった』。」
 
 前回はそれが失敗だった。その場は一敗地にまみれても、人化を解くべきではなかった。
 そのせいで鳩も『それ』を正しいルールと認識し、全力を叩き込むことを選択した。
 結果はぐだぐだ。被害がより大きくなっただけ。
 
 今回は、自分と相手の戦法を理解し、攻略法を見出し、実践した。
 スタミナがあって倒しきれないならば、膂力と気合ではどうにもならぬ場所を破壊し戦闘不能にすればいい。
 しかして作戦は成功。見事に堂々と打倒を果たした。
 
「しかしまあ、飲み込みがお早くございますな。」
 
 きっちりと四肢と腹部を破壊された鳩の姿を見て、次郎が感嘆する。彼が着ているのは清掃作業服。青いツナギに青い帽子。腰には道具袋を提げている。
 
「借りは返す性質でね。同じ相手に二度も三度もやられるようじゃ、先がねえだろう。」
「仰るとおりですが、この子の師匠としては、聊か複雑な気分ですよ♪」
 
 次郎は笑いながら言った。
 
「なんなら、仇討ちと行くかい?ジロさん。」
「いいえ?でも、手合わせぐらいなら♪無構えとやらを、こちらも学んで置きたいですからな。」
「……ただじゃあやだなあ。手の内を見せるんだからさ、何かくれねえと。」
「じゃあ結構。」
 
 次郎はあっさり引き下がると鳩の体を担ぎ上げ、では、お世話になりました、と言って去ろうとする。
 
「おいおい、拗ねるなよう。」
「だってこちらには、提供するようなものがないのですもの。応じようがないじゃあありませんか。」
「それじゃあ俺がつまらん。」
「では、楽しみを提供する、ということでは如何?」
「……そりゃノらないと俺が空気読めない奴ってことになりそうね。いいぜ。」
 
 言いつつも不満そうな宗撰の顔に、次郎はにこりと笑った。
 
「ではもう一声イロつけましょうか。
 『相手をしなければ、ティアちゃんを襲うぞ?』、ということで。」
「ああ、充分に過ぎる。畜生め。」
 
 他人の逢魔を叩いておいて、自分の逢魔には触れるなと文句を言える立場では、まあ、無い。
 
 次郎が適当に鳩を横たえる。糸の切れた人形のように、がしゃりと『それ』は地面に張り付いた。
 
「では。」
「じゃあ。」
 
 薄く笑う次郎に、宗撰はす、と息を吸って、佇む。
 次郎も、ただ笑ったまま立つだけ。構えもしない。
 
「おい、ジロさんも『使える』のか?」
「『使える』って言うよりもー……。」
 
 次郎は笑った。悪魔のように。
 
「一つの掃除にいちいちどしんと地面を踏んでいたら、仕事になりませんからなあ。」
「……なるほど?」
 
 舐められているのか、本気なのか、宗撰には図りかねた。
 ただ、これはすこし面倒だな、とも、思った。
 無構えはニュートラルな状態からの千変万化がモットー。相手に機を悟らせず、相手の機を読む。
 そして、一撃でも打ってしまえば、その瞬間それは「構え」ではなくなる。ニュートラルではなくなる。鳩には以前、そこをつけ込まれた。
 先に手を出せば、『崩れる』。
 
 条件は同じ。同じはずだ。
 
 そして、均衡はゆっくりと崩れた。次郎が歩き出したのだ。約10m先の植松宗撰の体に向かい、一歩一歩。
 迎え討つ。
 宗撰の肚は決まった。奴のことだ奇手奇策を繰り出してくるだろう、しかし俺のやることは唯一つ。
 見て、討つ。
 
 次郎の歩みはとまらない。よくみると、目線が宗撰の斜め後ろに向いている。そして、其処に向かって歩いている。
 やがて次郎は、心を構える宗撰の横を、すれ違うように歩き去ろうとする。
 突如の裏拳。
 
 「おっ!」
 
 宗撰はしゃがみこんで回避。振り向いた次郎の脚を払う。
 
 「この狸!」
 
 次郎はすたんと転ぶが、間髪入れずに体を回転させ、倒れたままの状態から蹴りを振り回す。
 宗撰が下がれば次郎は蹴りの勢いで起き上がる。
 
 「ふむ。素早い対応。伸び盛りと言ったところか。」
 「大して歳も違わねえのに隠居爺みてえなこと言うな、『筧次郎』。」
 「それは失敬♪」
 
 次郎は、今度は構えた。脚は半歩だけ前後に置き、開いた両手を前に向ける。レスラーのそれに近いが、背筋はピンと伸びており、決して力強さを感じさせる構えではない。
 
 「参ります。」
 「来な。」
 
 じりじりとすり足で接近する次郎を、宗撰は飽くまで自然体で迎える。
 互いの手が届く距離に近付く。宗撰は、次郎の両手にじりじりと変化が起こっていることを目視した。
 前に出した右手は力が込められ上に。
 引いて構えた左手は腰に据えられ抜き手の態勢に。
 
 引き絞られた、剣と槍。二択の内、どちらが来るか……。
 
 互いの手足が充分に届く距離で、次郎は歩みを止めた。
 宗撰はそれを見ている。焦点は合わせないまま、観察している。体全体を視界に入れ。どこが動くか。どこに隙が生じるか。観(み)ている。察(み)ている。
 
 「いざ……。」
 
 次郎の唇が動く瞬間、宗撰の手が動いた。右手は貫き手を押さえ込みに、左手は顔面をはたくように。
 それが合図だった。
 顔面狙いの左手が掲げた右手に打ち落とされた。引き換えに次郎の左手を右手で押さえ込んだ宗撰は打たれた左手をくるりとまわし拳にして打つ。一瞬遅れて次郎も打つ。両者それをかわす。同時に宗撰が抑えていた左の抜き手が振りほどかれた。
 次郎が呪縛を振りほどき突きいれようとした左手は右の痛打で捌く。そのまま導きいれるように右掌を入れようとするが、次郎の左手が絡みつくように回り外へ逸らす。同時に右手が動いていて、それを宗撰は見逃さず、次郎もそれを見透かしていて。
 
 捌き合いは30秒ほど続いた。
 とん、と両者が互いに距離を取る。
 
 「……へえ。」
 「なかなか♪」
 「でもその程度じゃ、仇はトれねえなぁジロさん?」
 「そうですねえ、まあ、焦らず行こうと思います。今回は手合わせですし。」
 「了解した。そんじゃ、もちっと付き合ってやるよ。」
 「お願いします♪」
 
 次郎は今度は膝を大きく開いて重心を下げて構えた。鳩の構えと、同じもの。
 
 「そいつで本当にいいのかい?見ただろう?『それ』を俺は叩き潰したんだぜ?」
 「叩き潰せばよろしい?『できるものなら』。」
 
 両雄、強く笑み。そして、宗撰は、次郎の踏み込みを観ながら、ふと、思った。
 
 『今回は手合わせですし。』
 
 次郎はそういった。
 じゃあ、次回は…………きっと。
 
 宗撰は一層鋭く口角を上げ、獣の如き次郎の突進を迎え入れた。
 
 」
広告

kiwivege について

nothing
カテゴリー: びーすとないとおんらいん パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中