退屈と平和と異端と子猫

 「何回でも生かしてやる。お前が生きたいと願うまで、死ぬことは許さない。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 「レイナさんはいつ見ても体のラインが整っていて、実にステキですねえ♪」
 「残念ながら売約済みなの♪」
  コーヒーを出しながら逢魔・ナイトノワールのレイナが悪戯っぽく笑いながらテーブルの上にコーヒーを置いた。その数4。
  魔皇・筧次郎とその逢魔・レプリカントの鳩、魔皇・天剣神紅鵺(あまつるぎかぐや)と、逢魔・ナイトノワールのエルヴェイル。合計4。
 「で、雁首そろえて何の用よ?」
 「暇潰しです♪」
 「主のお供に。」
 「暇潰しだ。」
 「こいつの監視だ。」
 事務所の主、魔皇・風間総一郎は溜息をついた。
 「俺んちは憩いの場じゃないんだけどね。」
 「ビジネスの話も持ってきましたよ。」
 次郎の言葉に総一郎の眉がく、と持ち上がった。
 「……ビジネス?」
 「楽しいぞ?叩いたりぶったり叩かれたりぶたれたり撃ったり撃たれたりだ。」
 総一郎はまた溜息をついた。テロリスト討伐か。今の世じゃ珍しくもない。その手の要望は探せば何処にでも転がっている。
 わざわざ拾って届けてくれるなんて、随分と酔狂な魔もいたものだ。最も、酔狂でない魔がいるのかと問われれば……。
 「……何?」
 いないか。レイナの顔を見て、総一郎はまた溜息をついた。レイナは無言でその横顔をはたく。
 ――――俺は乾いている。
 はたかれた頬を労わりもせず。総一郎はタバコに火をつけた。
 筧次郎。神魔戦線で中国、近畿地方を中心に活動していた魔皇。第二戦では打って変わって鳴りを潜めたが、『瑠璃最狂の掃除屋』という異名だけは、第二次戦線でも不気味に響いていた。
 天剣神紅鵺。現役のテロリスト。どこからそんな資金が出ているのか疑問に思うほどの大火力を用いてテロ活動を推し進める謎多き魔皇。
 縁起のいい組み合わせでないのは、彼らが入り口をくぐった時からわかっていた。総一郎は探偵だ。『有名所』の情報ぐらい、とっくに押さえている。
 「……テロの片棒は担がないぞ。」
 「そんなことはしませんよ。」
 「鳩の情報網より入ってきた、サーチャーよりも早い、まだ噂の段階です……。テロリストと、GDHP部隊の戦闘が近く、発生するらしい、と。」
 「テロそのものじゃないか。」
 「わたしは加担していない。」
 言葉を挟んだのは、神紅鵺。
 「理想が違うからな。どちらにも、滅んでもらって構わない。」
 「……ふん。」
 「僕も同意見でしてな。それで、同行を願ったのです♪」
 「……ビジネスと言ったが、金は何処から出る?そもそも、テロじゃなく戦闘の発生とは、どういうことだ。」
 総一郎が短くなったタバコを潰して消す。
 「芝居ですよ、芝居。GDHPにも崇高な思想を持った方がいらしましてな。テロリストと結託して一戦交え、『敗北する』。つまりは、勢いの水増しをしたいわけです。」
 「そこでビジネスだ。それを面白く思わないテロリストがいるのさ。思想が違う奴ら。そいつらから依頼を受けて、『全部ぶっ潰せ』と。」
 「やっぱりテロじゃないか。」
 「……行動は飽くまで鎮圧です……。それに、人材の外部協力を求めるような組織など……取るに足らない弱小組織に過ぎません……。手を貸したところで誰にテロリズムをもたらすものでもない……。」
 「……。」
 鳩の言葉を聴きながら二本目のタバコを銜えると、次郎が恭しげに火をつけた。その様子をレイナが心配そうに見ている。
 『話にならない』と一蹴しない。それなりに、興味を持っている。こんな危ない話に。
 「報酬は?」
 「総一郎!」
 レイナが叫んだが、総一郎の目は飽くまで冷静だ。
 「120万。」
 「安いな。」
 「プラススリルとサスペンスでは?」
 「……さすがは、瑠璃最狂と言ったとこか。」
 神紅鵺のフォローをした次郎の言葉に、総一郎はふ、と笑った。
 「まあ、裏は取らせてもらってからだな。」
 「ええ。いい返事を期待してます♪連絡はこちらだそうなので、よろしく。僕の名前を出せば話をしてくれますよ。」
 「では失礼するよ。わたしも準備を進めなければいけないしな。」
 
 次郎と神紅鵺がいなくなった事務所内で、総一郎は黙ってタバコをふかしていた。
 「行かない、わよね?」
 心細そうなレイナの声にも、返事はしない。
 「馬鹿げてる!」
 「ああ、俺もそう思う。」
 「じゃあ、行かないわよね?」
 「馬鹿げてる。と思うよ。」
 「ちょっと何処行くのよ!」
 コートを羽織り外出の用意をし始めた総一郎に、レイナは怒鳴った。
 「裏取りにだよ。探偵だからな。」
 「総一郎、あなた……。」
 「だから、馬鹿げてると思う、って言ったろ?」
 
 馬鹿げてる。テロに加担するのも鎮圧するのも、同じことだ。
 俺には俺の居場所があって、俺には俺の求めるものがあって、俺には俺の思想がある。
 テロリズムなんぞ知ったことか。俺は美酒で喉を鳴らしたいだけなんだ。飛び切りの、火酒で。
 そうさ、一瞬のヒリつきに命を賭けたいなんて、『そんなの馬鹿げてる』。
  
 
 バカ!
 「わかってるさ。」
 ドア越しの声にくつくつと笑いながら、総一郎は次郎が渡したメモにある連絡先に向かって、歩き出した。
 
 ございました……。」
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