誰かの好きと戦う運命 鳩18歳の場合。

 「お前の漏らした小便だ、舐めろ。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 嬉しい世辞を頂きました……もう暫くは、エンディング前のカートゥーンにお付き合い願います……。
 
 「だからあ、好きだってことでしょ?」
 「……。」
 水鈴と『極上満開スペシャルジャンボパフェ』をつつきながら、鳩は頭を抱えた。
 「言えばいいじゃん、好きだって。」
 もふもふとクリームをかみ締めながら、水鈴は苛立ち紛れに言う。
 向かい合う鳩は、何も言わずうつむいて、スプーンも止まってしまっている。
 「食べないなら食べちゃうよ?」
 「……それは……拒絶します。」
 晴れない気分ながらも動き出した鳩のスプーンは鋭く正確にパフェの山を削り取っていく。
 「普通のことじゃない。魔皇様と結婚してる逢魔だって沢山いるよ?」
 そういう問題じゃない、とは、口にはできない。
 好きな主の望みを叶える。それは、取りも直さず別れそのものであるからだ。
 以前の自分は、「ああ、そうか」というほどにそれを受け入れていた。いつかは主を超える。いつかは筧次郎という一個体を凌駕し、その望みを叶える存在となる。
 それを夢想していた。今もそうだ。
 だが、それが夢想に過ぎないと気づいてしまったら。
 「主の望みを叶えたい」という思いの根幹が、忠誠や本能というものから少し離れているのではないかと思えてきたのだ。
 「……鳩は。」
 「はい?」
 「確かに、主を愛しています。」
 「ならそれでいいじゃん。」
 「しかし。」
 18歳。言葉を濁すことを、覚えた。少しだけ。
 「主の望む鳩でありたいと願えば。それは、結局別れに繋がる。」
 「なんで?」
 水鈴は実に子供じみた疑問を投げる。容赦なく。
 好きなのにどうして別れることになるの?全然わからない。
 なんと残酷なことだろうか。
 「……鳩は、主の為に生きたいと思っています。」
 「うんうん。」
 真剣な雰囲気の鳩も、それを聞く水鈴も、スプーンは止めない。争うように山を切り崩し口に入れる。
 「主が望むことは、何もかも叶えたい。しかし、その中には、別れが内包している。」
 「なんで?」
 本当に、何と残酷な逢魔であろう。
 「魔皇様がどうして別れることを望むの?嫌いじゃないんでしょ?筧さんは鳩ちゃんのこと。」
 そうだ。主は無二の相棒として鳩を信頼している。鳩以上に信頼をおけるものはもう、主には残されていない。だから、鳩は無二の相棒だ。嫌いではあるかもしれないが、少なくとも、信頼だけは、あるだろう。
 「……主の命ですから。」
 「そんな命令聞かなくていいよ。」
 あっけらかんと、水鈴は言った。
 「悲しい命令なんて間違ってる。命令なんて、魔皇様と逢魔の間には本当はいらないんだってわたしは思うの。だって、本当に信頼しあっていたら、命じる必要なんてないもの。」
 一方的である必要なんてないもの。
 
 ああ、この逢魔はわかっていない。従わせたいという欲求と、従いたいという欲求の合致した幸福と、それのもたらす不幸を。
 「……そうしたら鳩は、きっと後悔します……。」
 「後悔してもいいじゃない。」
 水鈴は言う。今度は強く。
 「泣いて叫んで、一緒にいたいって言えばいいじゃない!好きなんだもの。好きな人と一緒にいたいんだもの。それなのに別れなきゃいけない命令なんて聞けるはずない。」
 鳩は、少しだけ口の端で笑った。水鈴がどうしたの、と言ったが、鳩は答えなかった。
 「……おわかりに、なっていらっしゃらない。」
 そういって、パフェの底の最後の一掬いを鳩は奪い取った。
 「鳩は、主に従う以上の幸せを、知らない。背けば、きっと。後悔する。その後悔を背負ってでも主と一緒にいたいとは、決して思わない……。」
 「……なんで?」
 「水鈴さん。」
 「はい?」
 「あなたの愛する人がいて、あなたに死ねと言ったら、あなたは、死ねますか?」
 「そんなこといわないもん。」
 「鳩は死ねます。」
 殺すことすら、できるのだから。
 
 目を丸くする水鈴に背中を向け、千円札を置いて鳩は席を立ち、主が最近ご執心の『おもちゃ』である笹川璃生のまたおこしくださいという声を背中に聞きながら、ゲートに消えた。
 
 では。」
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