黒銀の夢

 「崩れ落ちてしまえる。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 本日は、大銀嬢のお話を少しだけ……。最期に見る、夢のお話。
 
 命令一声、鬨の声を吼えあげて闇の中を闇が走り抜けた。
 
 死ぬために。殺すために。
 
 誰も知らない。誰も。何のために殺すのか。本当は何のために殺すのか。
 
 いずれの魔性も何も知らされないまま、この東京殲滅戦へと乗り出した。
 
 退魔が動く。高峰が言葉を紡ぐ。草間の下に手練が集まり、碇麗子と三下の元には記者が集まる。シズクが暗躍し、あやかし荘が揺れる。
 
 誰も知らない。瑠璃色の鳩の頭の中を。
 
 「この東京をわれらのものに。」
 
 やがて偽りの命令によって作られた濁流は裏切り者を飲み込み、異界を侵食し、虚無の境界すらなしえなかった破滅を体現し始める。
 
 
 『アロアロ、ボス、聞こえるかい?』
 
 陽気な声は悲鳴をBGMに大銀嬢の無線に。
 
 『聞こえています。』
 
 静かな声は暗黒の静謐の中に。
 
 最後尾で目を閉じて構えるパティ・ガントレット。頭狙いに来る輩もまだもたついている。
 
 
 いたぞ
 こいつだ
 瑠璃!
 止めてくれ!パティさん
 
 『待ちわびましたよ。』
 
 無線からの声ににやけるのは、大般若・如月ただ一人。彼女のみがこの破滅の真の意味を知る。
 
 『無線を切ります。これより、地獄を展開する。』
 
 そう言って唐突に通信は途絶えた。
 
 説得の声に耳も貸さず、パティはとんとん、と、両足で跳び始めた。軽くリズムを取るように。黒地の服に刻まれた無数の目がゆれる。
 
 とん。
 
 僅かに体を沈め、次の瞬間抜く手も見せず無数の暗器が勇者達に襲い掛かった。
 
 八分の一はそれだけで死に、八分の一は次に彼女が抜いた刀で死に、八分の一は彼女の篭手で叩き潰され、八分の一は彼女の瞳術で残った生命力を絞り取られた。
 
 計、四合の打ち合い。パティの傷は軽くなく、残った半分の勇者達には無傷のものさえいる。
 
 あきらめろ。
 遅くない。
 やめるんだ。
 
 パティがただ口の端をあげたのを見て、走り出したのは友峨谷・涼香。
――――うちは知っている。止まるはずがない。何故ならパティは。この女は。この瞬間のためだけに生きているのだから!
 
 振り下ろされた紅蓮の刀はしかし、暗黒色の粘体に阻まれた。
 
 悲鳴。怒号。笑い声。腕。脚。顔。口。目。鼻。耳。男性器。女性器。無数のそれは全て闇色をしていて、パティの目からあふれ出していた。
 
 驚愕する涼香が闇の隙間に見たものは、自分の眼を潰して笑む、パティの顔。
 
 彼女の瞳は果てしない闇へのチャンネル。闇の力を押さえ込み、ピントをあわせ、『シャッターを切る』。それがパティ・ガントレットの『魔眼』の正体である。
 
 そして彼女は今、そのレンズを。蛇口を。毀したのだった。
 
 
 大般若が人知れず舌打ちをする。こんなものにならなければ、あンたの望みは叶えられなかったのかよ。
 
 『大銀嬢』のままではいられなかったのかよ。
 
 
 だが命令は唯一つ。『神魔殲滅人外総滅』。
 
 
 如月が業剣大般若を携え、災禍の中心へと転進した。
 
 夜はまだ明けず、瑠璃色の鳩が望んだ狂った夢は続く。
 
 
 まあ、こんな感じで。」
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