鬼と悪魔 虎と龍

 「潰れておしまいなさい。
 
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 最近は光栄なことが多くてよいですね。空助神様ジュン神様、そして黒猫神様
 
 当然のように迎撃。ガントレット、出番です……。
 
 
 昼も尚薄暗いその客間。
 大きな机に乗った大きなディスプレイに向かって、銀髪ツーテールの女がキーボードを叩いていた。
 カチカチという音が金属音交じりなのは、彼女の指先が銀で出来ているから。
 
 Enterキーを小気味よく叩くと、女は左手で黒電話の受話器を取り、ダイヤルを回した。
 
 呼び出し音は6回。聞こえてきたのは陽気な女の声。
 
 『アロアロ、ボス、お呼びで?』
 「遅い。もっと早く出なさい。」
 『ご機嫌よろしくなさそうな。』
 
 銀髪の女がディスプレイを見ながら続ける。
 
 「黒血狗(こっけつぐ)の一族を知っていますか?」
 『コッケツグゥ?』
 「黒い血の、狗。」
 『……あ。』
 「あ、じゃありません。」
 
 電話の相手の名は大般若・如月。
 
 「あなた、知らないわけが無いでしょう。」
 『……ボス意地悪だなあ、全部知ってるくせに。』
 「やりあいました。」
 『えーと、姉と妹どっちっすか。』
 「狂犬を名乗っていたので、あなたが 『 愛 し 合 っ た ほ う 』 です。」
 『ボス、怒ってますか。』
 
 大般若・如月とやりあったのは、妹と彼女が呼んだ、ブラッディ・ドッグ。殺し屋、否、『壊し屋』だ。肉体の半分を機械と化し、メンテナンスでいかなる怪我も修復できる。
 能力は確かだが破壊衝動を抑えきれないという大きな問題があり、一人のターゲットを殺すのに建物が半壊するなどは茶飯事で、業界でも名の在る嫌われ者の一人である。
 
 「怒ってませんよ。」
 『なら……いいんですけどね。で……殺しちゃったんですか?』
 「残念そうに言いますね?」
 『いや、いや、いやいやいや。』
 
 “あいつとは気が合うから”とは、言えない。死んでしまうことを惜しいと思ってしまったなんて、いやいやいや。ボスの敵は如月の敵。そう。そうだとも。
 
 「逃がしました。」
 『……。』
 「今ちょっとほっとしませんでしたか?」
 『もう、意地悪やめてくださいよ。電話越しで死神の目に見られるなんて勘弁ですぜ。』
 
 死神の目。パティ・ガントレットの隠された能力、魔眼。アイスブルーの瞳は、それを見たものを必ず殺すと言われる呪物。
 
 「まさか頭ぶっとばして死なないと思わなかったというのが一つ。」
 『うわあ……。』
 
 パティはさりげなく、“最初は躊躇無く殺すつもりだったのだ”と明かす。
 
 「どうやったら死ぬのかわからないのを相手にするのは面倒ですしね。それと、あれはまだ不完全です。」
 『不完全。』
 「あなたと同じ。成長の余地がある。
  といいますか、“全力が出せない”ようでしたので、興が冷めたというのが二つ目でございます。
  あれは飢えている。押さえつけられている自分を認識して、まだ足りないまだ足りないと吼えている。心に余裕が無いのは、付け入る隙になりまする。」
 『ボス、飼いならすつもりですか!』
 「できれば、姉のほうも芋づる式に。」
 
 姉、と彼女が呼んだのは、黒曜・ブラッグァルド。ブラッグァルド家の現当主を名乗る大女だ。血が繋がっているわけではないが、便宜上姉妹と彼女は認識している。
 ブラッグァルドの生業は何でも屋だが、狂犬の姉となれば、その何でもに内包される本質は、言わずともわかろうというものだ。
 
 『はあ。』
 「ご心配なく。あの方が我々を嫌っているのも知っています。」
 『何も言ってませんけど。』
 「ブラッディ・ドッグ。暴力に志向性さえ持たせてやれば。強力な武器になる。」
 『あたしと同じって訳ですか。命令系統を明確にせよ、と。』
 「従わないから狂犬、というのも勿論織り込み済みで。別に配下に置かなくてもいい。ただ、遣り合っている間に、“何でもいいから壊したい”という根源欲求が強く伝わって参りました。これはわたくしの理想に近いものがある。」
 
 パティ・ガントレットの理想。それは、人ならざるものを自分ともどもすべて滅すること。人が乗り越えたはずの夜の闇を、人が乗り越えたその正常な時にまで戻すこと。
 すべては“その”ために。
 
 『はあ。』
 「わたくしに手傷を負わせましたしね。瞳術全開にしても尚壊しきれなかった。急所がわからなかったと言うのもありますし、わたくしの目が無機質と相性が悪いということもありますが、それを差し引いても、その実力は確かです。
  まつろわぬならば、正式に依頼を投げかけてやればいいだけです。建物ごとぶち壊される、ということを織り込み済みで、命令すれば。」
 『ボス。そいつはグルービーですけどね。あたしが言うのも何ですけどね、評判悪いですよ、あれは?』
 
 当然、それを扱うパティの名にだって影響する。
 如月としては、ブラッディ・ドッグと一緒に仕事ができると考えるだけでも絶頂ものではあるけれど、それでも一応の心配はしてみる。
 
 「殺せばよろしい。」
 
 如月の背中に悪寒が走った。顔が歓びに引きつる。ああ、そうだ。この冷たさ。殺意。これだよ。これこそがボスだ。
 
 「手を噛む犬を処分するのに、理由など要らないでしょう?」
 
 処分するのは、実際に手を噛まれてからでいい。そういうことだ。
 
 『アイサーボス!ではあたしはどうすれば?』
 「SirかBossかどっちかに統一なさい。とりあえずこれから言う住所に行ってください。そこに犬がいるはずです。」
 『あたしが取引?』
 「好きなように愛し合ってよろしいですよ?許可します。メンテナンス代ももちますよ。狂犬の分もね。」
 
 如月の頬が緩む。あ、だめだ。だめだこれは。これはもう、足腰立たないまでヤリ合っちゃうよ大変だよすげえ、濡れて来た……♪
 
 『で、その後は。』
 
 電話の向こうの声はもう、笑みが殺しきれていない。
 
 「そこからニ区画先に、橘組があるでしょう?橘清十郎を始末してきてください。わかりましたか?ターゲットは“橘清十郎だけ”ですよ?」
 『余計な被害を出したら?』
 「あなたはわたくしの話を聞いていなかったのですか?建物ごとぶち壊される、ということを織り込み済みで、命令すると言ったばかりです♪」
 『グルービーだ、実にグルービー!』
 「ではそちらの仕事をとっとと片付けて。」
 『アイアイボス!ってことだおら、残念だったね……!』
 
 ざしゅ、と言う斬殺音を確かに聞いてから、パティは受話器を置いた。
 
 おもむろに服を脱ぎ、普段着に着替える。杖は盲人用の普通の杖。
 
 さて、こちらはこちらの仕事をしましょう。
 
 
 『時を駆ける健啖家』、平・代真子。彼女をスカウトするために。
 
 けれどそれはまた、別のお話。
 
 以上です。平様はまた今度。
 
 
 えーと、まだ書いて欲しい人とか絡ませたい人とか募集中ですよ。はい。キャラクター経由のメールやコメントでもメッセでも何でもござれ。はい……。」
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