妄想シルバーレイン~開戦の砲~

 「生きる価値のない奴が何故生きているんだ?
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 本日は、妄想シルバーレイン劇場にお越しいただきありがとうございますか?
 
 本日お借り上げいたしますのは、神井・上人様と、ピジョン・ブラッド様
 
 どうぞ……。
 
――――大阪府、東三国 
 とある零細マンションの一室に、神井上人(かみいうえと)はいた。
 「どうぞ。」
 「いえ、お構いなく。」
 「遠慮なさらずに。」
 殺風景な、家具も食器すらもないまるで作りたてのようなその一室で、座布団に座る長身の男が神井を見上げていた。
 上井は立っている。勧められた座布団から一歩引いて。
 「用件は短いことですので。それに……もしかしたら無礼なことを口にするかもしれませんから。」
 「……まあ、いいでしょう。そこまで仰るなら。」
 男が立ち上がった。30がらみのその黄色人種は、身長が190cmに届こうかと言う大男で、しかし、ジャージに包まれた肉体は決して横幅を感じさせるものではなかった。
 顔は、にこやかに笑んでいる。
 神井も、にこやかに笑んでいる。
 「お聞きしましょう?」
 「実は、ゴーストハントの依頼に来たのですが。」
 「ふむ。おいくらご用意で?」
 「はは、恥ずかしながらこの業界については疎いもので、相場がわからないのです。とりあえず、言い値をお聞きしてから考えようかと。」
 「そうですねえ。こちらも現場を見ませんと判断ができませんし。まあ、数十万から数百万ぐらいが範囲にはなりますが、今いくら、とは、確かにいえません♪」
 朗らかな笑みで、彼らは語らう。
 人間は、人間自身思っているほど実は朗らかには笑わない。大笑いするか、苦笑いするか。営業スマイルと呼ばれるものも、朗らかというよりは、押し付けるような意図的な「輝き」が見えるものだ。
 彼ら二人の笑顔は、不自然なまでに、自然だった。
 「ところで、筧さん。」
 神井が言った。
 「何でしょう?」
 「瑠璃とは、何ですか?」
 筧と呼ばれた男の表情が一瞬だけ固まり、そして、また笑みを取り戻す。ただ、目だけは神井の相貌を覗き込む茶色い輝きに変わっていた。
 「では、こちらからも一つ。貴方は、鎧讐鬼を始めて見たとき、どう思いました?」
 
 
―――――同時刻 大阪 新世界 通天閣入り口
 
 「全く貴方の趣味には呆れますわ。」
 「そのお言葉、お返しいたします……。」
 ピジョン・ブラッドは、目の前の少女に掌を向けながら強く笑んだ。
 対して、少女は灰色のツーテールを揺らし拳を構え、顔は凍りついたような無表情。
 「まさかスマートボール屋に入り浸っているとは思いませんでしたもの。」
 「……3000円飲まれました。」
 「おかげで、我々の戦いを許容できる広場はこのぐらいしかなかった。ああ、全くいつ見ても下品な街だこと。」
 「いつも来ていらっしゃるのですか?」
 「ええ、貴方を探してね。」
 ツーテールを更に二つに分け、縦にロールを入れた金髪。目と服は鮮やかに赤く、わずかに覗く首筋の筋肉はしなやかに隙なく鍛え上げられている。
 「……貴方の趣味も、悪う思います。」
 「そんな口でも聞けなくなると思うと少しだけさびしいですわね♪最後に、何か言って置くことはあって?」
 『氷着(コールドスタンバイ)』。灰色の少女が呟きベルトのバックルを回転させると、その手足に鉄の魔獣が搭載された。
 「……貴方を殺したら、報酬はおいくらいただけるので?」
 「ははっ!貴方『も』月のエアライダーに!『点火(イグニッション)!』」
 金髪少女の両足と右手にも、鋼の獣が装備され、二つの邪悪はその存在だけで群がる人間たちを大きく退かせた。
 
 
―――――
 
 「鎧讐鬼、ですか……。」
 神井が顎に手を当てて考える仕草を、筧はにこやかに見つめていた。
 「あそこまで原型をとどめない死霊がいるものなのだな、というのが、感想ではありますかね。実際には、初見では『バケモノ』という認識しかなかったのでしょうが、冷静に驚きの成分を分析するならば、『意外性に驚いた』ということでしょうか。」
 「ゴーストやゾンビなどとは違って?」
 神井が答えると、筧は次の質問を投げかける。
 「そうですね。『異形』です。ああいう種類のものもいるのだ、と。まあ、異形にもなれましたが。さて、これがわたしの問いに対する答えになるのでしょうか?筧さん。」
 「ええ、ええ、そうですとも。異形は見ればすぐわかる。あれは我々とは違う、とね。違う生き物なのだ、と。
  僕はね、少年。貴方のように、能力を持った人間ではない。『バケモノがたまたま人間の形をしている』だけなんです。」
 「……へえ。」
 神井は表情を崩さない。
 これは防衛だ。筧の目は相変わらず黒く深く覗き込まされるような闇を湛えていて、その闇は間違いなくこちらの闇を覗き込もうとしている。
 話しているのは筧なのに、感情を見られているのは神井の方。無言で無遠慮なまなざしが酷く、『心地いい』。
 「遺伝子は人間に近いので、メガリスの恩恵も授かれる。でも、魔性は生来です。いやはや、生来ではありますが、その扉を開けるのは、あなたがた銀誓館学院に集う能力者とは異質だ。」
 「……瑠璃とは?」
 「ふふ、魔物同士のコミュニティみたいなものです。僕は、その中でも最強と呼ばれたことが、自慢ではないですがあってね。まあ、昔のことですが。」
 「なるほど。よくわかりました。プライベートなことに立ち入って大変申し訳ありませんでした。」
 「いえいえ、このようなことをお話できる相手がいるだけでも、こちらは十二分に楽しいことです♪」
 「やはりメンバーを連れてこなくてよかった。あなたはバケモノだ。人間の皮を被った。それを本人の口から聞ければ。
  わたしには貴方と戦う理由が出来る。『イグニッション!』」
 神井のめがねが外れ、彼の目付きが精悍なものに変わる。細身を白い装束に包み、手には柄の長いハンマーを携えている。
 「筧・次郎。あなたの周りに群れる死霊の匂いが言うのです。あなたは、戯れに殺すと。ですから。やはりあなたはわたしの手で倒さねばならない。『悪』として。」
 「ふふふふふふ……あはははははは!!!!いい判断です!『領域確保・結界展開!(バッファリング、プロセススタート)!』」
 筧が自分の座布団を引き剥がし、下にあったレバーを引くと、ワンルームの室内は大陸系の夜の都会に変わった。
 「な……。」
 神井が見渡す。確かにここは夜だ。ビルがある。車が通る。人もいる。喧騒も聞こえる。アスファルトのにおいもする。しかし、夜景の向こうにかすむほんの5m先の窓からは、確かに今までと同じ大阪の町並みが見えるのだ。
 「我々のデバイスは、身一つをきっちり包めるようにスマートには出来ていなくてね?」
 もう一度目をやった筧の肉体は、金の刺繍が施された白いコートに、白いスラックス、そして、白い革靴をまとっていた。右手には鋭いナイフ、左手にはライフル、そして、驚くべきことに肩口にはミサイルポッドのような穴があった。
 「……なるほど。能力者の形をした異形と言うわけですか。」
 「お友達を連れてこなくてよかったでしょう?」
 「左利きなのですね?」
 「いえ?『右利きです』。」
 アスファルトの削れる音。右手のナイフが光り神井の手元に滑り込んだ。
 
―――――
 「砲天牙撃!」
 「曲水龍掌!」
 
 クレセントファングと龍顎拳が幾たびかの逢瀬を交わす。
 初めこそ掌打に頼っていたピジョンだが、最初から全力でぶつかりこんでくる少女――――筧・小鳩(かけい・こばと)――――に対し、威力に優れるローラーブレードでの攻撃へと即座に切り替えた。
 
――――これも互角?!
――――……鳩はまだまだ未熟か。
 
 ピジョンの瞳はますます燃え盛り、小鳩の瞳はいよいよ凍りつく。
 「認めません……認めません認めません認めませんわ!あなたなど!」
 右手の魔獣甲『破裂骨折』は、小鳩の右手の魔獣殻『内臓破裂』の打撃により早々に戦線を離脱。虎の子と鍛え上げてきた蹴り技も、『内臓破裂』の顎と、小鳩のローラーブレード『心筋梗塞』の前に実のならぬ火花を散らすばかり。
 「吼えろ『轢殺女王』!微塵に切り裂いて差し上げますわ!」
 ピジョンのローラーブレード『轢殺女王』が回転動力炉を鳴らして応え、彼女の体が高速で回転を始める。
 「2秒で沈めてやる!」
 「……助かります。」
 小鳩は表情を崩さずに、飽くまで冷徹に言い放った。
 「こちらは、迎撃準備に0.1秒を要するのです。」
 
 
 
――――――
 
 「……!はっ、はっ、はあっ!はあっ……!」
 何が起こったかは理解していた。ただ、息をするのに時間がかかっただけだ。
 自分の体がドアを突き破り、廊下を飛び出し、アスファルトに背中から落ちたのだ。旋剣の構えにより魂を磨きこんでいなければ、脊椎か内臓をやられていたところだ。
 見上げる廊下から、追撃は来ない。ハンマーを杖に立ち上がり、しばし構えるが、やはり音沙汰もない。
 一瞬だった。
 滑り込んだナイフは、手首から肘を辿り頚動脈に到達するコースで動くようだったので、入り際を弾いて回避。旋剣の構えからロケットスマッシュで反撃に出たところを、デタラメな威力の爆水掌に打ち抜かれた。
 一撃。たった一撃。腹部が消し飛んだかと紛うほどの痛み。
 それを確かめるまもなく背中が鉄のドアに叩きつけられ、更にドアごと廊下に到達、そのまま柵を乗り越え落下。
 「殺す価値もない、ということですか……。掃除屋め。」
 殺される覚悟で来ていた。
 『瑠璃最狂の掃除屋』という奇妙な二つ名まで持ち出して、神井は彼をけしかけようとした。
 なぜかは、彼自身しか知らないし、恐らくこれからも語ることはないだろう。
 「はは、は……。」
 その笑顔の理由を、きっと誰も理解はできないのだから。
 「ははは、はは!」
 掃除屋も、己の部屋で笑っていた。
 
 
――――――
 
 「インフィニティエア!」
 ピジョン・ブラッドを風が包む。
 「無限の断裂!疾風怒濤!受けよ!『螺』、『殲』、」
 ピジョンの体が回転しながら前進を始めた。細やかに地を蹴り、回転しながらすさまじい勢いで小鳩に肉迫する。
 その姿に、小鳩はスタンスを腰を落とし広くかまえゆっくりと拳を引いた。
 「……解凍。擬態解除。」
 小鳩の装備が解き放たれる。装備の変わりに両腕には指まで包む銀の篭手が現れる。引き絞った拳を開き、手刀に変える。
 「『廻』、『断』ああああああああああああああああん!」
 「……。」
 引きちぎれるような空気の叫びは唐突に終わった。
 「……がっ!」
 銀の手に腹部を貫かれ、ピジョンはハイキックの姿勢のまま崩れ落ちた。
 「……『零銀完遂』。」
 呟いて血まみれの手を引き抜くと、小鳩は仰向けのピジョンの横に跪いた。
 小鳩が下段突きを構え、ピジョンは動かない体に歯噛みをする。
 だが、突如小鳩はどこかを振り返ると、そのまま新世界の人ごみに消えた。
 5秒ほど遅れて、遠くからパトカーと救急車のサイレンが聞こえてきた。
―――――これを聞きつけたというのですか?
 ほんのわずかな音量だ。人間では絶対にあの時点で聞きつけることが出来ない程度にはわずかだった。
―――――やはり、『能力者』なんてものではないのですね、アレは。
 銀の篭手の冷たい感触を知っている。あれは詠唱兵器ではない。回転動力炉の振動も駆動音もしなかった。ただの篭手だ。
―――――しかし、唯の篭手ではない。
 受けた本人だからわかる。あれほどの速度で貫き手を放てば、皮膚と篭手が『ズレ』る。増して貫き手は、その手の形状から篭手などの大雑把な装備品で実現しようとするとすっぽ抜けてしまいかねない。篭手で以って撃つには、すこぶる向かない攻撃。布で出来たグローブでは尚更無理。
 貫き手は、生身の手以外ではほぼ不可能な攻撃だ。ならば。
―――――あれが、手なのですわ。
 篭手を装備しているのではない。癒着しているのでもない。『手が篭手で出来たバケモノ』なのだ。人間に似た形をしてこそいるが、その中身はまるで別物。出力も性質も精神も肉体も、恐らくはまるで違う。バケモノ。バケモノだ。『筧・小鳩』と言う名のバケモノ。
 つまりは。
 能力者である自身が、絶対に負けてはいけない相手。
―――――何と言う、屈辱。これは、間違いなく、業腹ですわ……。
 救急車の中で、痛みと出血に耐えながらピジョンは確かに笑っていた。
 
 以上。
 
 追記:秋咲神様 から勝手に誘導。
 
 エロゲ、エロゲソング、アイマス。どれか一つでも属性アンテナが立っている人は是非(ニコニコ動画)。
 
 損はしないと思います。鳩なんかnicotoolで落とせなくて歯噛みしてますからね。歯噛み。」
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