【IF Another despair】 SIDE-K 星屑

 
 妄想シルバーレイン。
 
 【IF Another despair】 TRANSMIGRATION 20XX
 
 「……。」
 
 丘が目を覚ますと、豊満なリリスが彼の上に乗って首筋に歯形を立てていた。
 その頭を丘が撫でてやると、リリスはびくりと震えて飛び退った。
 
 「あんた……どんな体してるの?」
 「鍛えてますから♪」
 
 あーあー、こんなに爪と歯型つけちゃって、痒い痒い。丘が舌を出して笑うと、そのリリスは更に困惑した。
 
 「歯、通らなかったでしょ。」
 
 戯れの甘噛みでもない。伽の喜びに爪を立てたのでもない。引き裂き食らおうとしたのだ。それが全く、無駄だった。
 
 「やめといた方がいいですよー。僕、ゴースト退治はプロなんで。あなたは依頼に入っていませんし……何より、リリスはあんまり好みじゃないんです、死体が残らないから。」
 「……。」
 
 リリスは強い目線を向けたまま後ずさりすると、逃走して行った。
 
 「ふふ、アングラのデバイスというのも、役に立つものですね♪ありがと、ソーセンおじさん♪」
 
 ベルトのバックルを弄りながら、丘は笑った。
 
―――――
 
 「コールドスタンバイ。」
 
 筧・小鳩は街田・良を後ろに下がらせると、声と共にベルトのバックルを回した。3秒間まばゆい光が彼女の右腕を包み、ぎらぎらと鉄色に光る肉食恐竜の形をしたリボルバーガントレットが顕現した。
 
 「それは……。」
 「イグニッションカード以外にも、能力の圧縮解凍を行うデバイスはあった、というわけです。
  実験的なものでしたが、学園に属さないわたくしのようなものにとっては便利でね。」
 
 見れば、彼女の後ろに集っていた悪霊達は消え去っていた。
 能力を解放した気力、圧力によるものだろうか。
 
 「……それで本気、という訳ですか。」
 「いいえ?これは手加減です。」
 
 小鳩は振り返り笑いかけた。
 
 「詠唱兵器の能力以上の攻撃力は、出せませんからね。能力者というものは。」
 
 彼女等の前面を覆う衛兵達は、銃を構えたままゆっくりと接近してくる。
 
 「……にしても、力を『隠す』なら、見つかる前の方がよかったんじゃありませんか?」
 「ですねえ、失敗ですわ失態ですわ。」
 「丘君は大丈夫でしょうか。」
 「あれでも忍者ですもの♪死んだ振りでは誰にも負けませぬよ。」
 「そうですか。」
 
 銃口は相変わらずこちらを向いたまま。
 彼らはわかっている。一発でも仕損じれば、自分の命が危ういことに。
 『幽霊せせり』は優男ではあるが無用な容赦をする男ではないし、ましてやこの灰色髪の女に至っては、未知数に過ぎる。ただ、何もしなくても亡霊がついてくるという異様さからして、詠唱兵器の一発二発で倒れるようなタマではないのは分かっていた。
 
 「さんはい、と言ったら一斉に撃つとよろしい♪」
 「!!」
 「ちょっと小鳩さん!」
 「さん、はい!」
 
 小鳩の合図で引き金が一斉に引かれた。絶対に成功させねばならぬ連携の切欠を向こうが作ってくれるなら、これほどありがたいことはない。
 
 つまりは、それほどに彼らは切羽詰っていたし、
 その時点で勝負は、決まっていた。
 
 「鎧袖一触……。」
 
 潰れて倒れる衛兵たちを見て、良はため息をつき、小鳩はくすりと笑った。
 一斉射撃の雨は、小鳩の左腕が弾き、彼らの命は、小鳩の右腕が刈り取った。
 
 「もう少し弱い兵器の方がよろしかったですかね?」
 
 小鳩は笑いながら散った肉片を踏み潰し、跡形を消し去っている最中。
 あの弟子にしてこの師匠ありか、と、良は二度目のため息をついた。
 
 「もう少しスマートにできないのかなあ?もう少し……。」
 
 
――――
 
 「やほうやほうお嬢さん、初めまして♪
 夜明け前より瑠璃色な、
 空の彼方を駆ける星、
 地上最後の清廉紳士にして
 今世紀最高の潔白男児
 『筧次郎』・カケイジロウでございます♪」
 「丘君か……。」
 
 街田が師匠の姿にため息をついていたころ、教会では、葛葉・いなりが弟子の有様にため息をついていた。
 
 「やめてや、それ。嫌な人を思い出す。」
 「僕のようないい男を振ってしまった苦い記憶でも?だとしたら謝ります、申し訳ない♪」
 「これ、全部あんたか。」
 
 教会には、肉体を切り開かれて骨と内臓を晒すリリスがうめいていた。
 丘の手には忍者刀とナイフ。どちらも柄に動力炉を携えた『詠唱兵器』である。
 忍者刀の刀身は凍てついたような瑠璃色で、星のように散りばめられるのは銀の輝き。
 ナイフの刃は燃え上がるような朱色が薄く溶けていて、血を滴らせる鋼が放つのは滅びの煌き。
 真っ赤な衣装、真っ赤な洋靴、真っ赤な口紅、真っ赤な……腸(はらわた)。
 
 「ええ、暇だったんで。」
 
 リリスが血を流しうめく地獄のようなこの様相は教会にはこの上なく不似合いにも見えたし、お誂え向きにも見えた。
 
 「目立つ拠点だったんでね。どうやら中の人は全員出て行った後みたいですけど。」
 「能力全開か……。制御受けてるはずやねんけどな?」
 「そこはほら♪僕忍者ですから♪」
 「忍ばんようなったいうことは……やる気やね?」
 「なにやらタイミングがかち合ったみたいですが、まあ、繰り上げるわけにも行きませんのでね。」
 「よういうわ、ぶつけて来た癖に。」
 「どうします?止めます?異端分子の僕を。それとも、あなたの絵図に僕は織り込み済み?」
 「平和が一番やからねー。
  ほら、国同士やってあれやん?軍隊がおるから戦争をせん、というのがあるやんか。
  あれにしたいんやわ。」
 「無理。」
 「これでも現実的なつもりなんですけど。」
 「個人レベルでは、やはり排除するより他にありませんよ。
  この世界は人類のもので、この社会も人類のもの。
  彼らがずっとそうしてきたように、空気を読まない奴には懲罰を与えなければ。
  空気を読む見込みのない奴は抹殺しなければ。
  一人残らず。」
 「無理やね。」
 「これでも現実的なつもりですけどねぇ♪」
 
 葛葉が震えるリリスをちらと見やる。刃物で冒された赤い痕の上に、肉で犯された白い跡が残っている。
 
 「あんたも、大概不適合。女として正直どうかと思うよこれは。」
 「今ここでやります?それでも構いませんけど。」
 「……連絡だけ入れとくわ。あんたが背中を見せたらばっさりやったげる。それまで待っとき。」
 「素晴らしい♪そのときにはあなたの内臓を見てもいいんですね?」
 「……やってみよし。できるもんなら。」
 
 教会を出るいなりの背には、楽しそうな笑い声がいつまでも投げつけられた。
 世を掌に乗せて遊んだ悪魔、『瑠璃最狂の掃除屋』と同じ、不愉快な笑い声が。
 
 
 
 
 
 以上。
 
 ……いつか、鮫のような笑みというフレーズを使います。」
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