神よどうぞ憎みたまえ

 
 こんばんは、鳩です……。 
 
 
 悪鬼の灯火
 
 「……。」
 
 生理用品を抱えた鳩が、ドラッグストアから出てきた。
 今年で19歳。
 誕生日を祝うこともせず。
 幼年で知られたレプリカントが、子供の域を卒業しようとしている。
 
 「おかえりなさい、パティ。」
 「……ただいま戻りました。主(あるじ)。」
 
 いつもと変わらぬやり取り。
 11歳の4月から、19歳の9月まで、今の今までの7年間。
 1991年8月15日に生を受けたその悪魔は、8年目の伴侶との生活をいつもどおり続けている。
 
 「……忘れていましたが、鳩は今年で19歳でございます。」
 「そうですね。大変なことだ。来年は成人ですか♪」
 
 鳩の伴侶、筧・次郎は目も合わさずに笑う。
 
 「もう、トトが買える年齢でございます。」
 「賭け事はやめておきなさいね、あれは数学的に、胴元が勝つように計算された上で客を一喜一憂させる娯楽なのだから。」
 「ええ、鳩が行うときは、必ず胴元として催すことに致します……。」
 「おや、伝でもあるので?」
 「数年の内には、必ず。」
 
 ……。
 ふふ、と次郎の笑い声が響いて、それきり。
 
 「育ちませなんだな。」
 
 唐突に沈黙を破ったのは次郎。
 
 「……そうですね。」
 
 鳩の背丈は、未だに150cmに満たない。
 胸囲は79cmほどあるが、筋肉のせいでアンダーとトップの差が無く、サイズはAA。
 19歳になってしまったということは、これから育つ宛てもないということだ。
 
 「ごめんなさい。」
 「何故、謝られるのですか。」
 「育てるのは、僕の役目だったはずなのに。」
 「……肉感より尊いものを恐らくは、手に入れたはずです。鳩は。」
 「コンプレックスでもあるはずだ。」
 「どんな体でも、不満は生まれるでしょう。恐らくは。
  主の夜伽にやや不向きな点や、年齢に比べて幼く見られる点には不満もございますが、
  反面この小さなフレームに収められた筋力は、敵の意を覆す速力を生み出します……。」
 「はは、鳩。僕がいつ、あなたの肉体に不満を漏らしたというのですか?」
 「……。」
 
 鳩が主の目を見る。じっとまっすぐに。
 
 「不満を言いましたか?僕が。」
 「……覚えはありません。」
 「ならいいではありませんか。
  より美しくありたいのは女性の本能だが、ありのままを僕は愛している。
  それでよろしい。」
 「……不満ではありませんが。」
 「はい?」
 
 目を見つめたまま、鳩が言う。
 
 「愛している、ともらしたのは、初めてと存じます。」
 「そうですね。」
 「……。」
 「疲れたのですよ。もうね。
  悪魔の力も遥かに薄れ。
  純血の魔族であるあなたですら『その程度』。
  7年もおめおめと生き続けて、
  ああ、長いともいえるし短いともいえますが、
  進歩の無い日々だった。」
 「主。」
 「我々には無限の可能性がある。
  だが、それは所詮0から10の間の非可算小数のような無限だ。
  100や1000にはなれない。」
 「主。」
 「見ることも聞く事もできず、ただ奇跡を起こすだけの神をどうやって殺せばよいのか。
  ヴァーチャー一騎にすら未だ全く及ばない魔族に何の勝ち目があるのか。」
 「主。」
 「何です。」
 「……勝ちます。主は勝利します。
  我々は勝利します。
  我々の祖先が反逆し、この地を勝ち取ったように。
  我々は勝利することが運命付けられています。
  でなければ。
  この地球に、そもそもヒトはいなかった。」
 「ふふ、ふふふふ……。」
 
 笑う。男が、笑う。
 
 「強くなった。」
 「女は男より遥かに強いと。言ったのは主です。」
 「そうですね。」
 「歴史上男が勝ったためしがないと、言ったのは主です。」
 「そうですね。」
 「ですから。勝利します。
  主は、女性である鳩より強い。
  あなたは世界で一番強い。」
 「ははははははは!
  鳩。」
 「これが例え主に調教された結果の、信仰、狂信であるといわれても構いません。
  そんなことは生まれたときから分かっている。だから。」
 「ふふふふふははははははははははは!
  恋する乙女か!まるでそのようだ!」
 「ええ、まるでそうなのです。」
 「……僕は、神など信じない。
  悪魔や天使が人類の祖先であったという世迷言に、付き合う気はない。
  君らの祖先が人類の発祥に関係があったなど、絶対に納得しない。」
 「はい、主。我々はただ、人間の形をしたバケモノです。」
 「ヒトは愚かかもしれない。
  だが、ヒトの歩みを憂う筋合いは、他のどの生命にも無い。」
 「はい、主。
  文明を愚弄する侵略者は文明によって滅びなければなりません。」
 「……探しましょうか。」
 「はい。主。」
 「何を?」
 「神を名乗るふざけた精神体を完全に完璧に殺し尽くす手段を。」
 「ははははははははは……!
  あなたは最高の逢魔だ。」
 「主。褒めてはなりません。
  鳩の知る主は、鳩をただバケモノとして蔑むのみ。」
 「蔑まれたいのですか?」
 「……。主が主たる姿を見せないのならば。愛されるよりよほど素晴らしい。」
 「全く。糞生意気な逢魔ですよ。」
 「はい、主。鳩はまだ従者として未熟にございます。」
 「……殺しにいきましょうか。」
 「はい。」
 
 扉を開くと、暗雲を抜けた淡い光が彼らを照らした。
 
 
 以上。」
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