【IF Another despair】真意の奔流

 
 
  他の執筆者より暇です。
 
 生きていてゴメンナサイ。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 ……妄想シルバーレイン。
 
  【IF Another despair】真意の奔流
 
――――決戦の前日。
 
 「……派手にやったね。」
 「今尻尾を踏まれるのはよくないんでね。」
 「違うよ。」
 
 ドラム缶に砂利と泥を詰め込む丘に、『幽霊せせり』街田・良は、低い声で言った。
 
 「『派手にやった』、と言っているんだ。」
 
 ドラム缶に折りたたまれて入っているのは、防護服を着けた教団の兵隊。
 上半身は腹から胸にかけて猛獣の爪にかかったように抉り取られ、肋骨や内臓の断面がむき出しに。
 下半身は左脚の膝が逆に折れ、右足は骨が見えるほどの裂傷で、足首から先はちぎれて無くなっている。
 切り裂いて解体するということに執念すら持つ丘のやり口とは思えない。
 青ざめた体にはもはや吐き出す血液も無く、静かに泥を被り続けるだけだ。
 
 「試したかったんですよね。」
 
 丘が手を止め、その身に水の龍を纏った。
 
 「これ♪」
 「……。」
 
 『幽霊せせり』も、教団兵を殺すことに対してはもう何も言わない。
 宗主の暴君振りはうすうす耳にしていたし、逃がしたところで碌な死に方はしないだろうことは容易に予想できた。
 「能力者でもゴーストでもないただの人間だから、殺すべきではない」
 そんな論はもはやこの鎌倉では成り立たない。
 法の庇護などありはせず、生きているだけで他の何者かに搾取される、この野性の街では。
 何より、殺意を持ち武器を携えた時点で、そいつはもう「ただの人間ではない」のだ。
 
 「それだけかい?」
 「僕は、『ちょうど死ぬように』なんて手加減は命取りだと思いますし。」
 「『それだけかい』?」
 「……。」
 
 『幽霊せせり』は海を見ている。丘は『幽霊せせり』の目を見ている。
 
 「……いやー、やりすぎちゃいましたね?流石に引きましたかぁ?」
 「……『それだけ』?」
 「……。」
 
 丘がため息をつき、ドラム缶の中に両手で抱えられるほどの大きさの岩を数個入れた。
 そして、缶の上部の口を殴りつけ歪め締め上げ蓋にすると、砂浜の上に蹴り転がした。
 
 「私怨です。ハイ。」
 「そうか。」
 「鳩様がこいつらのせいで、と思ってしまってね。」
 「そう。」
 「ああ、気にしないでくださいね?あなたを守って死んだとは言え、あなたが鳩様を殺したわけでもなければその意思があったわけでもない。
  先輩に対しては恨みはありませんよ?これっぽっちも。」
 「わかってる。」
 
 『幽霊せせり』は、丘が自分には嘘をつかないと分かっている。
 彼が自分を信頼しているらしいことはこれまでの態度からも読み取れたし、
 その上で察知する限りでは、彼は自分に対して隠し事をするのを好まないようにも見えた。
 
 「思いっきり叩きつけてやりたくなったんです。この怒りと言うものを。
  どうせ、『もののついでだから』。」
 「本当に君は……筧・次郎の教え子なんだね。」
 
 丘がベルトのバックルを回すと、彼の衣服は赤いワンピースのドレスへと変わった。
 真っ赤な衣装、真っ赤な洋靴、真っ赤な口紅、真っ赤な薔薇束。
 少しマイナーな、『あの歌』の衣装。
 足早に歩み寄った丘が、『幽霊せせり』の脚を引っ掛け砂浜に押し倒した。その上に、馬乗りになる。
 
 「何のつもりだ。」
 「絵になると思いませんか?ツーテールの女と、押し倒された優男。」
 「女じゃないだろ。」
 「街田先輩は僕から見ても、結構綺麗な男の人だと思うんですよねえ。
  色のある場面が似合うような、香り経つような美男子といいますか。」
 「そいつはありがとう、嬉しくないね、降りてくれるかな。」
 「その上に乗っかられる、ヒステリックな衣装の女。ね?」
 「そういう趣味はないね、残念ながら。」
 「僕が何でツーテールなのかは話しましたっけ?」
 「筧・小鳩の意思を継ぐ者、という意味だっけ?」
 「そう。
  だから僕は、別に男でも女でもなくていいんです。」
 「理由にならないな。」
 「僕ら『瑠璃』が鎌倉に対し、
  『何故』反抗作戦を決行したと思います?」
 
 丘は笑顔を崩さないまま、『幽霊せせり』の目を見下ろした。
 『幽霊せせり』は確信した。
 ああ、この目はいつか見た目だ。
 学生時代何かの縁で、筧・次郎と会ったときに見た、あの目と同じ。覗き込みたくなる真っ黒な闇。
 
 「そりゃあ……都合が悪かったから?」
 「言い方を変えましょうか。
  『何故、作戦を決行できたのか?』」
 「……話が見えないな。」
 「いくら鳩様とは言え、『瑠璃』は所詮は忍者の集団です。
  そう大きくも無く、能力者の集団というわけでもない、むしろ能力が覚醒しない者の方が多かった。
  そんな『瑠璃』が、能力者のメッカである鎌倉に攻め入るには、武装が必要だった。
  ……すなわち、金が。」
 「……。」
 「パトロンが居たのですよ。『瑠璃』の後ろにね。
  だが、さまざまな状況が重なって……まあ、あまり詳しくは言いませんが……我々の敗北は決定的になった。
  鳩様がどこまでご存知だったのかはわかりませんが、当初はそれなりに勝機のある戦だったはずなのですが。
  少なくとも外から見れば、多勢に無勢という有様で、僕以外は全員散り散りばらばらに、僕自身も投獄の憂き目。
  鳩様ですら行方不明。」
 「ご愁傷様……?」
 「おかしいと思いません?」
 「うすうすはね。」
 
 丘はにやりと笑い、『幽霊せせり』のため息をしっかりと耳に聞いた。
 
 「僕だけが、『瑠璃』の首領である僕だけが確実に生き残っているという状況が出来上がったんです。
  最も責任重い僕が、殺されてしまった部下よりも好待遇を受けた上、釈放された。」
 「……。」
 「どこまでが鳩様の口ぞえだったかは分かりませんが、
  『瑠璃』の名と、それを象徴する存在である僕だけが残った。
  ……鎌倉に対する遺恨をおまけにつけて。」
 「……そうか。」
 「そう。僕は、『もう一度』そして『今度こそ完全に』この鎌倉特区を転覆させるために生かされているんです。
  僕だから、やれる。敗戦することで動機もそろい、組織がなくなったことで隠密行動も取りやすくなった。
  それこそが、僕に課せられた、『表向き』の命令。」
 「なるほど……それをベラベラしゃべるのは、どうかと思うけど?
  信頼の証と受け取ってもいいけどさ。」
 「いい加減、任務でやるってのも飽き始めてたんでね。
  忍者としては失格だが、同じタイミングで能力者としても失格になれるなら、と思って。
  能力者でも来訪者でもない、ただのマオウに成り下がるには、『そろそろ』かな。
  むしろ、『今なれなかったらもう無理』かな。
  だから、命令ではなく自分の心の思うまま、そろそろ生きてみたくなったんです。
 
  そもそも、鳩様以外からの命令など、僕には聞く意味も興味もないのだから。」
 「……降りてくれ。」
 
 ドラム缶は波にさらわれ静かに沈み。
 ツーテール女装男に押し倒される美丈夫という耽美な姿は、物陰から『ムーンライズ』に見られていた。
 
 
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