知ったことかと。

 「ごめんよ。
 
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 妄想シルバーレイン
 
 幾万の若き勇者の一人なりや
 
 「口紅を。」
 
 その声に、ふと首を傾げつつ、はい、とぶっきらぼうに女がピンクの口紅を差し出した。
 男は懐から小さな筆を取り出し、少女の顎をもってその唇に塗った。
 
 「よく似合っています。」
 「子供っぽい色だわ。嫌いじゃないけど。」
 「最後に一拭き。」
 
 男は女の顎を軽く持ち上げると、自分の唇で、余った紅を盗み取った。
 
 「……。」
 「赤くなった♪」
 「リボンを出しなさい。」
 「はい♪」
 
 今度は男が懐から赤いリボンを取り出した。後ろ向いてしゃがみ、自分の頭を差し出す。
 巻き取ってあるそれは、女の手で引き出され数メートルもの長さを露にする。
 
 「いつもつけてないの?」
 「千切れたら嫌でしょう?」
 
 男の髪は、男子にはめずらしく、ツーテールだった。
 女は髪留めを外すと、代わりにその長いリボンで二つの尾を結いなおす。
 
 両の房を結い上げて尚余るリボンに男が左手を差し出した。
 女が手首にリボンを結ぶと、男がその上に何匹もの蝶を結い上げる。
 男の髪に二匹、手首に八匹の蝶。それが赤い帯でつながっている。
 
 「派手ね。」
 「あなたが贈ったリボンです。」
 「そうだわ。ねえ、生きて帰ってきてね。」
 「当然。帰ってきたら、お休みを取ってデートをしたいので。」
 「そういうことを言うのは不吉なんだって。縁起を信じる方じゃないけど。」
 「あは、死亡フラグなんぞばらばらに解体してまいりますよ。
  世の中を法則を叩き潰すのが、忍者というものなのですから♪
  では、行って参ります。」
 「行ってらっしゃい。」
 「そちらも御武運を。」
 「あなたもね。」
 
 
 
 
 「もしもし。」
 『わたくしです。』
 
 震える携帯電話を取ると、よく知っている声が男の耳に入ってきた。
 
 「もうすぐ作戦行動でございます。失礼ながら、手短に願えますか。」
 『承知しております。これより、至上命令を出す。
  今より24時間の間は、それを遂行することを最優先せよ。』
 「……は。」
 『生きて帰れ。』
 「は。」
 『復唱!』
 
 男の気が殺がれたのを感じ取ったか、電話越しの声が厳しい司令官のものに変わる。
 
 「生きて帰れ!」
 『お前はこれより24時間、生還することを最優先しろ。
  今お前が向かうは、お前の最後の戦いなどではない。
  お前にはまだ全うできていない役目がある。』
 「は。」
 『了解したか!』
 「了解いたしました。
  これよりわたしは、生きて帰ること目的とし行動いたします。」
 『では行け。』
 「行きます。」
 『つまらぬところでくたばるのは、実につまらないことだ。』
 「わたしもそう思います。」
 『では。』
 「では。」
 
 ぱくり。
 静かな戦の前の空気に、携帯電話を折りたたむ音が響いた。
 
 
 「近くに寄るな、目に見るな。
  音にも聞こえぬわたしの名。
  丘・敬次郎はお前らに
  闇と静寂以外の一切を
  与えてはやらない。」
 
 抜かれたナイフはつやを消され、輝きもしない。
 
 
 ふむ。」
 
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