血の誓い

 「お前のことは忘れられないだろうな。愚物過ぎて。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 ごっつ久々に東京怪談動かしてみようかと。
 
 ……相変わらず自分大好きな内容で申し訳ありません。先に謝っておきます。
 
 パティ・ガントレットさんと、神域のレベルで色々と交流のある城戸・康一様を借り上げ。
 
 雑種
 
 満月の夜。
 東京の夜の公園。
 漂う黒い瘴気は、その場所からあるべき常識を拭い去り。
 向かい合うは赤目の青年と、銀髪の女性。
 黒髪の吸血鬼と、銀の手を持つ魔人。
 
 「手加減、なし?」
 「まあ、試合用の本気、程度で。」
 
 青年が鎖持て背負うは黒き棺。
 女が銀の手に携えるは仕込みの杖と閉じた瞳。
 
 よもや説明の要もなく、魔性の月に双の化生は交わる。
 
 「魔眼は無しな。あれを使われると、こっちも殺しに行かざるを得なくなる。」
 「善処致します。」
 「確約して欲しいンだが。」
 「瞼が残っている内は、閉ざしておけますよ。」
 「まあ。
  それは、そうだな。」
 
 青年、城戸・康一が口元に獣の笑みを浮かべると、
 女、パティ・ガントレットは、眼を閉じたまま、安らかに笑んだ。
 
 「んじゃ、ま。」
 「始めますか。」
 
 銀色の月光に淡い風の音さやか。
 二人の体より出でる闇の気配は、ぶつかり合いながら周囲を色濃く染め。
 
 じり。
 
 足を摺り出す音がはっきりと響く。
 
 ごん。
 
 剣の閃きより僅か遅れ、重い金属音が響く。
 男が差し出した棺と、女の放った剣が火花を咲かせた。
 
 二人の手に、震える手応え。
 
――――折る心算でぶつけたんだが、刃毀れもなしか。
 
――――思った以上に硬くて重いのですね。傷を入れるのが関の山ですか。
 
 二体の化生、残心の姿勢、刹那に。
 
――――防げ無くはないが、一度でも仕損じれば真っ二つにされるな。
――――取り回しの良さは先方の方が上。分がいいとは言えないか。
 
 
 
――――なんとふざけた質量と魔性。掠めただけで骨まで持っていかれそうだ。
――――あんなものを前に出されては、こちらの攻撃の通し様も無い。
 
 
 
――――そして。
 
――――きっと。
 
 
 
 
――――『向こうもそう思っているはずだ』。
 
 暫し、竜巻。
 男が鎖を繰って振る棺を女の刃が弾き返す。
 女の剣戟を男の棺が悉く締め出す。
 
 赤い瞳には剣の刃紋までくっきりと見え、
 女の耳には鎖の風切りがはっきりと聞こえ。
 
 瘴気すら捻じ切られる、魔速の競り合い。
 火花は花火。
 一つの閃きの間に二つ生まれ、二つの輝きの中に四つ生まれ。
 まやかしの星屑が銀の月夜を彩る。
 
 二人の足元は互いの膂力を受け止める度に崩れ、半球状に潰れている。
 けぶる土埃を物ともせず、二者は魔の塊をぶつけ合う。
 
 先に綻んだのは女。
 柄の小さな悲鳴を感じ取った。
 刃は健在だが、持ち手が耐えられぬ。
 
 飛び退いた隙を見逃さず、吸血鬼が薙いだ。
 噴き出し地を色濃く染める赤と、大きく転がる女の体。
 
――――掠めただけか。
 
 手応えから伝わるのは、浅い当たり。
 衝撃の瞬間身を捩って流した女の動き。
 
 改めて見据えた女は既に射程の外。
 顔の右半分を押さえ、溢れる血をとどめている。
 指の隙間から見える、抉れた頬肉、筋繊維、そして蒼い瞳。
 
――――ヤバい!
 
 男は半ば反射的に棺の裏へ身を隠した。
 瞼を抉ってしまったのだ。
 彼女の『善処』はもはや、保障されない。
 
 「あー……顔に傷をつけたことは」
 
 謝る。
 
 言おうとした口は開いたまま止まる。
 盾にしていた棺に突進され、彼の体は、棺ごと二丈ほど宙を舞った。
 トンボを切り着地した彼が見たのは、両の掌を突き出す女の姿。
 程なくして、女は構えを解いて両手をぶるぶると振った。
 
 「あなたの寝床は本当に馬鹿げた重さでございますね。痺れるほど打ち込んだのは久しぶりですよ。」
 
 右半分を摩り下ろされた顔で、女が笑う。
 
 「あんたの傍じゃ寝たくないもんだね。
  掌打でベッドごと吹っ飛ぶ寝覚めは勘弁だ。」
 
 血唾を吐いて男が眉を顰める。
 
 「あなたですら、ヴラドの一族の末端に過ぎないのか。 
  つくづく吸血鬼は敵に回したくないものだ。」
 
 言いつつ女は右手を握り、腰に溜める。
 悪鬼羅刹を撃破し貫き殺す銀の弾丸を、装填する。
 
 「真祖を相手にしたなら、このわたくしなど塵が残るかどうかすら危ういでしょう。」
 
 青年、城戸・康一は、彼女の身から嵐の如く吹き出た念に戦慄した。
 市井の雑種の魔とは言え、溢れ出るは百鬼夜行の如き気配。
 
 「いや、なかなかイイ線行くんじゃないか?」
 
 男が右手に白い手袋を嵌め、肩の上に構える。
 怪力乱神を刺突し貫き留める白木の杭を、引き絞る。
 
 「その眼を開けば、コンマ数秒ぐらいは生きていられると思うぜ。」
 
 女、パティ・ガントレットは、彼の体から煙の如く立ち上る闇に畏怖した。
 眷属の末端とは言え、沸き出ずるは純然たる暗黒の力。
 
 白木の杭と銀の弾丸。
 向かい合ったまま時は過ぎ。
 梟が鳴いても二人の地平は琴の弦の如く、張り詰め不動。
 
 やがて、雲が流れ。
 満つる月にかかった瞬間。
 
 瘴気が風圧に負け、散った。
 
 
 
 
 さて。」
 
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