それはただの音伽噺

 「理不尽か?
 
 そうだな。人間の理屈はまだ未完成だという証拠だ。
 
 こんばんは。鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン
 
 Gig the Alternative
 
 「久しぶり?いや、初めましてでしたっけ?」
 「呼び出し食らったときは、行くかどうか随分悩みましたわ。
  告白されたらどうしよ、とか思て。」
 
 オレンジの髪が風に揺れる。
 屋上の片隅、斑尾・恋次が黒いツーテールの後姿を見ている。
 
 「そこまで酔狂じゃない。」
 「感情欄『純愛』になってましたけど。」
 「お気に召しませんか?」
 「どんな無茶振りやと思いましたよ。
  オレ基本ツッコミなのに。」
 「でしょうね。あの方の子なら。」
 
 そういって、ツーテールの方は、ポケットから取り出したものに火をつけた。
 
 「それ……。」
 「木炭です。」
 「何でですのん!」
 
 紛うことなき、真っ黒な木炭の棒であった。
 
 「……まずい。」
 「でしょうとも!そらそうでしょうとも!」
 「大人はみんなこんなものを」
 「吸ってない!吸ってないから!」
 
 黒いツーテールが木炭の棒を地面にこすりつけて消火する様を見て、恋次が会話を再開する。
 
 「何の用ですか。」
 「愛の告白です。」
 「お断りします。」
 「嘘です。」
 「ですよね。」
 
 屋上の風は冷たい。
 ツーテールの先がひらひらと揺れる。
 
 「卒業しちゃいますね。」
 「あ、そうですね。高校三年生はね。」
 「それぞれの社会への門出。」
 「喜ばしいですな。」
 「そうでしょうかねえ?
  何ぞ、もっとこう……平行してゴーストバスターズ!できるような選択肢とか」
 「無いのですよ。」
 「ありませんか。」
 「……学業の傍ら、戦っている間は出席は偽身符というのがここでもアリだった。
  その延長線上なら、当たり前のことです。」
 「まあ、まあ。わからんでもないですけどね。
  でもこう……なんや。」
 「まして。
  社会人はサボれませんからね?
  ゴーストバスターが金になるなら別ですが。
  バケモノが人の振りをするなら、それなりに無茶な妥協点を通すべきであって、
  むしろ、不自然の無い融和などあってはならない。
  ありえないのではない。あるべきではないんだ。
  不自然で、無理で、無茶で、不安定でなければならない。
  我々はそういういつ消されてもおかしくない、危ういものとしてしか存在を許されない。」
 
 恋次はしばし視線を空に投げ、言葉を探す。
 それから一つ、話を渡す。
 
 「実家には帰られました?丘君は。」
 「ええ。」
 「オレもね、帰ったんですよ。
  や、居心地がいいというか、懐かしいもんですね。
  ほんの数ヶ月おらんだけやのに……。
  違うな。数ヶ月もまったく別の生活してんのに、ちゃんと覚えてるんですよね。
  人間て不思議やなあって思いましたよ。
  かーさんもねーさんも変わって無くてね。
  何や忙しい人たちやけど。ああ、でもこの人たちに育てられたんやと自覚しましたわ。
  体に馴染んでんねん。」
 「それはそれは♪」
 「そっちは。どうでしたん。」
 「ひどいものでしたよ。
  修行不足がたたってね。
  懲罰を食らってしまいました。
  縁起の悪い年明けですが、厄払いが出来たと割り切ることにしました。」
 「大変ですな。忍者は。」
 「どこも大変でしょう。たぶん。」
 「そいで……。」
 
 恋次の声が、心なしか低く、重くなった。
 
 「何の用なんですか。鳩さん。」
 
 
 ツーテールの肩が震えた。
 くつくつという忍び笑いが聞こえてくる。
 自分の頭髪をつかんで剥がした下から出てきたのは、灰色のツーテールだった。
 振り向いた姿は、白い肌に青い目の小柄な女性。
 
 「気づいてましたか♪」
 「だから僕ずっと敬語やったやないですか。
  何しに来たんですか?」
 「何しに?と言われてもね?
  時々こうやって見に来るんです。縁のあるものの子たち。
  ゆかりある神々の子の様子を。」
 「神?」
 「そうです。
  ありようは色々とありますが……。」
 
 鳩はそこで言葉を区切った。
 
 「まあ、ここで言うのはやめておきましょう。
  世界結界とやらもありますしね。」
 「左様ですか。」
 「虹子さんは相変わらずのようで。」
 「セラ姉さんも。」
 「そうですか。
  それは、よかった。」
 
 「……もう、帰ってもええですか。」
 
 恋次は、彼女の目に何か嫌なものを感じていた。
 見下げる、見下ろす、ゴミでも見るような表情。
 以前の自分なら睨み返したかもしれないが、今はもうそこまで子供じゃない。
 
 「いえね。
  あなたは確か、能力者連続殺人事件の標的になった所を保護され、転校してきた、んでしたよね?」
 「……それが何か。」
 「入学してからこの日までずっと、
  生き延びさせてしまった。」
 「!……ありえへん!イグニッション!」
 
 鳩がベルトのバックルを回すと、両腕に恐竜の形をしたリボルバーガントレットが装備された。
 恋次がカードを掲げて、装備を呼び出す。
 
 「勘弁してくださいよ。」
 「こちらこそ。
  これ以上この地上で呼吸をするのは勘弁していただきたい。」
 「どんだけ嫌いなんですか!」
 「あなた個人に恨みはないし、あなたがいい人なのも存じている。
  でもあなたは能力者だ。
  このわたくしと同様に、
  ほかの多くの生徒たちと同様に、
  来訪者たちと同様に、
  ゴーストたちと同様に。
  世界の名のもとにいつ消されてもおかしくない、危うくてありえない不安定で不自然なバケモノです。」
 
 でも鳩はブラストヴォイスを一撃食らっただけで退散したという話。
 
―――――
 
 「お前んとこの首領、無いわ!」
 「はあ!?」
 
 息せき切って、寮の丘の部屋の扉を開けた開口一番がこれだったという。
 
 以上。
 
 ああ。
 
 公式の世界を愛するがゆえに何よりもそれを憎んだ我々です。
 
 公式の世界だと我々が思っていたものが公式裁定に壊されていく様を見て、業を煮やした我々だ。
 
 公式のありよう、その世界のあるべき姿を逸脱する事や、者を、やはり何とも耐えられないサガを持っている。
 
 
 
 
 
 ……偽身符でなんとかなるとあの世界の公式が言うたなら、それが答えなんでしょう。
 
 鳩は不満も理不尽も感じません至極妥当というか他に答えの無い正解だと思います。
 
 だから不満を漏らしている方の気持ちが露ほどもわからない。
 
 不安になります……。
 
 『ここで不満や理不尽を感じない自分は、果たして本当に、公式の世界をきちんと認識しているのか?』
 
 『皆の不満は、これまでの公式の世界を踏まえてきたものには当たり前で、鳩の方が公式の世界を踏まえられていないだけなのか?』
 
 ……まあ、符術士じゃなくても偽身符使える辺りは正直どうかという気もしますがそれはこれより以前にあった設定ですし……。
 
 大学があったとしてそしたら次はどうするんだってのもあります……。
 
 
 
 ……あ、そうか!
 
 お前ら全員進路はゴーストバスターだから!
 まともな職業とかねーからー!
 
 というのが正解か!
 
 エウレカ!」
 
 0971_wt03pcicon01_w3a379ouma
 
 
 
広告

kiwivege について

nothing
カテゴリー: シルバーレイン パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中