姿に向かって

 「見下ろすことを悪いといってるわけじゃない。お前は見下ろせるような立場にいないといってるだけだ。
 
 それなのに、「お前は反省すべきなのに普通に生きている。わたしに失礼だ!」何様だと。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン
 
 散らかった心
 
 忍者の里、瑠璃。
 洋室のロビーにて、テーブルを挟んで男が二人。
 一人はツーテールの男子、丘・敬次郎。
 もう一人は長身の青年、筧・次郎。
 
 「で、どうでした?宿題は。」
 
 筧が屈託の無い微笑みで問うと、
 
 「なかなか歯ごたえがありました。」
 
 歯をむき出して、丘が笑う。
 
 「ほう。と言うことはステキな告白を頂いた、ということですね。」
 「全ての情報を引き出せたか、と言われれば自信はありませんが、今回の任務については十分な量と質だと思いますよ。」
 
 目を細めて屈託無く、しかしどこか薄ら寒い空気を纏って笑うのが筧・次郎の癖であり、
 口の端を引き上げ、剥き出した歯の間から舌を出して気味悪く笑うのが丘・敬次郎の癖であった。
 
 「して、どのような方法で。」
 「こましました。」
 
 どたどたっ
 
 「珍しいですね、先代殿がずっこけるなど。」
 「いやはや、14,5歳の男児からまさかそんな言葉が出るとは思っていませなんだので。」
 
 がたがたと座りなおしつつ、筧は再び笑顔を向ける。
 
 「しかしなるほど。
  ということは、こちらに引き込んだということなのですかな?」
 「ええ、ただ再利用は不能ですね。
  死んでしまったので♪」
 「ああなんだ。開いちゃったんですか♪」
 「いやああああ、悪くないですねええ、ああいう体験は!」
 
 丘は、思い出をかみ締めるように、俯いた顔に手を当ててくつくつと笑い出した。
 
 「痛いのはあんまりスキじゃないんで、今までは割りと麻酔とか使ったり痛くないところを探したりして捌いてたんですが、
  悲鳴を聞くのもいいですねえ。
  許して、とか、やめて、とか。
  禁止されるとやりたくなってしまう♪」
 「もう、戻れませんな♪」
 
 丘の様子を見て、筧も嬉しそうに笑った。
 
 「戻る場所なんてありませんよ、初めから。」
 「まあ、然り。報告は?」
 「鳩様には既に。
  先代殿へのご報告が残っていただけです。」
 「なるほど。では、ご苦労様でした、と申し上げましょう。」
 「ありがとうございます。」
 「では、僕の方はもう訊く事はございませんので。
  何か別にそちらの方で用は?」
 「ございません。
  それではこれにて、ということで。」
 「では。お疲れ様でした。」
 「お疲れ様でした。」
 
 
 「僕を先代と呼びましたよ、あの子。」
 
 丘・敬次郎の背が筧の視界から消えた頃、代わりに隣に灰色のツーテールの女性が立っていた。
 
 「自覚が出てきた、ということでしょうか。」
 「悪くない体験だと言っていました。
  何かに目覚めたのかもしれませんね。」
 
 女の名は筧・小鳩。
 丘の直属の上司であり、筧・次郎の元従者でもある。
 
 「悪に目覚めるというのは、目も眩む様な体験です♪」
 「左様でございますか。」
 「鳩はまだですか?」
 「主(あるじ)は今まで一度も正義を見せてはくださいませんでしたから。
  目覚めるまでも無く、鳩は純然たる悪でございます。」
 「……そういうことじゃないんですが、あなたには一生わからないのかもしれませんね。
  一生わからないということは、『いい人』ということでもあるんですけど。」
 「では、目覚めるように努力を致します。」
 「精々頑張って。」
 
 そう言って筧・次郎がさりげなくあげた右掌が、透明な刃を受け止めた。
 細長いそれは水となって落ち、飛んで来た先に目をやると、去ったはずの丘が立っていた。
 
 「やりましょう。先代。」
 
 丘がそう言って舌を出すと。
 
 「いいですとも、若頭♪」
 
 筧・次郎は菩薩のように笑んだ。
 小鳩は足早にその場を去り。
 敬次郎の手には既にもう一つの水の刃は渦巻き。
 筧の肉体に黒い印が浮かび上がる。
 
 「あの日から、血が沸き立って仕方が無いのです。
  あなたを苦しめたい。殺したい。」
 「僕を征服したい、というわけですか。
  手足を賭ける覚悟はお出来で?」
 「もちろん、ただし、僕が勝ったらお命を頂きます。」
 「ああ、手でも足でも意味が無いのだ。
  腎臓の片方だって取り出して売り払ったって構わない♪
  あなたが本当にこの悪魔の生まれ変わりなら、
  手だろうが足だろうが内臓だろうが脳だろうが、
  生きている限り5日でピンシャンに戻る。
 
  そのはずだ。」
 「だからあなた方はきっと強かったのですね。
  身体の欠損は、全く恐るるに足りないから。」
 「簡単に欠損するほど弱くもありませんでしたしね。」
 「是非。先代殿の中身を見たい!」
 「きっとファンタスティックな体験になると思いますよ!」
 
 丘が再度放った水の輪を
 筧の指先から放出された紫の光線が貫き散らした。
 
 胸骨を強かに打たれた丘はしかし。
 湧き上がる歓びを我慢できず、打ち震え笑い立っていた。
 正面から強者に立ち向かうという、恐らくは初めての、勇者たる喜びに。
 
 
 以上。」
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