我等の彼岸

 「本当にさっぱり羨ましくない。
 
 心配なのは自分の感覚だ。そこだけが気がかりだ。お前のことなんてどうでもいい。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 本当に他人に興味が無くて、そのせいで、“「このぐらいのことは気づいてただろ?」的なことを指摘されたけど実際気づいていなかった”という事態が発生していますが別に気にしていません。興味ないから。
 
 興味が無いこと自体には興味があるのです……。何ゆえこんなに、他人のことを全く気にかけずにいられるのだろうと。
 
 ああ、ややこしい。
 
 妄想シルバーレイン
 
 思いついていたものを忘れた。
 
 
 マーチを謳えるように
 
――――金や、地位や、名誉。
――――信頼や、友情や、愛情。
――――そうした、命より大事なものを積み上げてゆきなさい。
――――いざというときに切り売りして、
――――自分の命だけを守るために
 
 少年は立ち上がった。
 足取りは危うく、胸から流れ出した血は夥しい量。
 目はうつろで、とても「立ち上がる」などという能動的な意思を実現できるような状態には見えない。
 血反吐を出す。
 吐きながら、二つに結った髪の片方から、ナイフを抜き出す。
 ナイフの柄には小さな動力炉がついていて
 銀の光を放ちながら唸って回る。
 
 「……。」
 
 その男、丘・敬次郎は。自分が立っている理由を考える余裕も無い。
 けれど鍛え上げられた意思は本能と化し。考えるより早く体を動かす。
 
  戦え。
  戦え。
  戦え。
  世界に平和をもたらすために。
 
 里の長は、彼にそう言った。
 自分の世界を平和に出来なかった苛立ちと怒りを鎮めるために。
 丘は何度と無く言われてきた。
 お前は、私の人形なのだ、私の溜飲を下げるためだけに存在させたのだと。
 
 だが、彼は納得を求めた。
 
 世界に平和をもたらす。
 
 手段であるべきそれを、彼の心は第一の目的とした。
 一つの生命の代替として生きるには、丘・敬次郎は脆弱に過ぎた。
 だから、彼の脆弱な精神は、「他人の溜飲を下げるために世界を平和にする」ことを、
 「世界を平和にするために自分は生きている」として、納得することにした。
 
 もはや彼は立ち上がるだろう。
 背中から胸まで抜けた傷はふさがるだろう。
 もはや彼は里長の人形ではないだろう。
 この世界から自分を含めた理不尽を消滅させる、里長と全く同じものになるだろう。
 
 彼は粛々と、自らに強化の術をかける。
 ナイフを構え、彼方を見据える。
 快楽も。怒りも。善悪さえも。考えている余裕は無い。
 そしてもう、丘・敬次郎は彼の彼たる記憶を思い出そうとすることも無いだろう。
 
 粛々と、魂を磨き上げる。
 
 引き継がされた、里長達の魂を。
 
 だが正気で背負い切るには、丘・敬次郎は弱すぎたから。
 
 彼の体は、ただただ永遠の戦士と化すだろう。
 人の文明を狂信するもの
 神と悪魔を憎悪するもの
 ただ「それ」になる。
 人の歴史と歩みを肯定し
 人の歴史と歩みを踏みにじるものを全力で憎む
 その焦がれる思いを叶えるためだけの、完全なマシンであり不完全な人間。
 それが。それこそが。『能力者』というものなのだ。
 
 地平線に、『能力者』のヒーローたる、とある戦士が戦っている。
 丘・敬次郎は油断無くナイフを構え。じりじりと進む。
 教え込まれた戦い方、心配りに身を委ねて。
 

 
 
 人の形をしたバケモノが、丘の手のナイフによりパズルのように解かれて、バラバラになり地面に落ちた。

 

 「丘、先輩?」
 
 ヒーローは思わず声を出す。
 
 「丘先輩!」
 「何ですか?」
 
 屈託の無い微笑で、彼は振り返ってみせる。
 
 「……いえ!何でもありません!」
 「そうですか♪」
 
 ヒーローは判断した。
 この『悪人』は。たった今このときから。信頼の置ける勇ましい戦士の一人になったと。
 命より大事なものの為に、確かに命を使うことのできる戦士になったのだと。
 
 「大きくなりましたねぇ♪」
 「丘先輩も元気そうで!」
 「ヤクザは廃業でスカ?丘くぅん?
 
 『ヒーロー』の隣で斧を振るっていた青年が軽い声をかけると、
 
 「いいえぇ?」
 
 丘は魔獣を刻んで応えた。 
 
 
 
――――なんの ために うまれて
――――なにを して いきるのか
――――こたえられないなんて
 
――――そんなのは――――
 
――――なにが きみの しあわせ
――――なにを して よろこぶ
――――わからないまま おわる
 
――――そんなのは――――
 
 
 
 「卒業でございます。♪」
 
 ほほえんで。
 
 以上。」
 
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