戦争や平和がありますように。

 「いいから脱いで表で走れよ、そんで警察に捕まって来い。
 
 官憲ぐらいしかお前を見ちゃくれないってわかるだろ。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 妄想シルバーレイン
 
 八本足の蟲
 
 重い蔵の扉を開けると、日差しが眩しく目を刺した。
 丘・敬次郎は呆けた顔で手をかざし光をさえぎると、とぼとぼと林に向かって歩いていった。
 右手に握ったナイフから、まだ鮮やかな血が滴る。サンダルが草の上に赤い足跡を残していく。
 既に赤黒く固まったいくつもの足跡を、踏んでいく。
 
   足りない。
 
 木々の合間へと進む丘は、火照る頭で歩いていた。
 つまらない。
 心は醒めて、思考が酔っている。
 
   楽しいことをしたのに。
 
 今日の自慰は、余韻より早く醒めてしまったから。
 あんなに夢中になって切り開いている途中で、あの顔を思い浮かべてしまったから。
 
   ああ……。
 
 きっとあの子は嫌うだろう。
 嫌な顔をするだろう。
 俺はいったい何をやっているんだ。
 
   退屈だ。
 
   つまらない。
 
   いっそアレを解体してやろうか。
 
 がさり、がさり。
 当て所もない彷徨をしているカッコイイ自分が、悩む自分を憐憫する。
 
   こんなに悩んでいるんだ。
 
 意味もなく口元に笑みを浮かべてみたりして。
 
   いっそ殺してやろうか。その方が気分がいい。
 
 気分がいいのは、自分が最低だと定義したからだろう?
 もう落ちるところがないと安心したからだろう?
 最低と最高は同じもの。
 どちらも世界全てを見下せる位置。
 自分はなんて最低なんだろう。
 それは、自分がつまらない、取るに足らない存在なんかじゃなく、確かに此処にいる、濃密な存在だと主張したいってことだろう?
 
   いっそ殺そうか。
 
 出来もしないことを思うな。
 お前の懊悩に、愛する子を殺すなんて方法論はない。
 寧ろお前は、自分の手にかけることを拒絶したいはずだ。
 
   望み……。
 
 酔っているな。
 抽象的な言葉が出るときは、大抵何かに酔っているときだ。
 自分か、哲学か、酒か、愛か。
 
   全て……。
 
 お屋形様の命令は。
 この世界をくだらなくすることだ。
 刺激的な、好奇心をくすぐる、未知な、お前たちを。
 超能力者を。
 ゴーストを。
 霊を。
 リリスを。
 鬼を。
 全部全部叩き潰して、
 「今のは全部手品でした♪
  御代はそちらの缶にどうぞ、それではみなさん、ご観覧ありがとうございました。」
 と幕を引くことだろう。
 全てとお前が呼んだ、人類に。
 情けも容赦も希望も妄想もない、資本と理念と物理と偽善と戦争の世界を取り戻すことだろう。
 
   人間なんてくだらない。
 
 それは、人間じゃないお前が。
 
 「言ってはいけない言葉です。」
 
 
 灰色のツーテールが丘の前に立ちはだかり、言い訳の暇もなく、銀で出来た腕を振り下ろした。
 折れた鎖骨を押さえ、恐怖と痛みに戦慄きながら、それでも丘は思考した。
 
 
    でも、でも。
    つまらないんだよ……。
 
 「楽しく生きなさいよ。楽しく。
  悩むなんてらしくない。
  いらないものは、斬って捨てなさい。
  どうぞ、お悩みならわたくしの胸に吐露なさいな。」
 
 それでも丘は、彼女のアイスブルーの瞳を睨むだけで、退屈の苦さを唯かみ締めていた。
 
   殺すのは違う。
   殺したくない。
   楽しい女の子なのに。
   あの子には、僕を悪く思って欲しくない。
   丘・敬次郎の癖に。
 
 「さあ。」
 さあ。
 
   さ あ?
 
 以上。」
  
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