音声刺激光学刺激

 「mixiをやっていることが恥なのではない。
 
 mixiで油断することが恥なのだ。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 ニコニコ動画と同じく、あれほどたくさんの人が集まってしまったら、もう密閉性もクソも無い気がいたします。
 
 一つの空気で統一されないこと。それは、公共的であることの条件の一つだと思っております……。
 
 
 さて。
 
 妄想シルバーレイン
 
 食い意地
 
 「フランケンシュタイン。」
 「出し抜けになんですか。」
 
 銀誓館学園の結社の一つ、『廃屋Pigeon-Blood』。
 その地下アジト、薄暗いコンクリート張りの部屋で金の縦巻きツーテールと、黒のストレートツーテールが、座して茶を飲んでいる。
 
 「あれ、ロボットなんですよね。」
 「霊に属するもの、でございますね。」
 
 金髪の廃屋首魁・ピジョン・ブラッドは、目の前の少年、丘・敬次郎を快く思っていない。
 目線も合わせず、大して話題に乗る気もなく、茶を啜っている。
 
 「霊、ですか。
  ともあれ、脳はある。」
 「ありますわね。」
 「命というものがあるない、という議論は別にして、あれの肉体稼動は、脳髄からの命令によるわけだ。」
 「使役ゴーストという観点から考えますと、元となった霊の本能的な行動ともいえますが。」
 
 相変わらず目線を合わせるつもりの無いピジョンに、丘は少し頭を掻いてから、話を続けた。
 
 「筋肉の動きや成長は、電気信号で説明できてしまいます。
  多分、何かを見たり聴いたりして反応するのも、あれだ。
  それらの音声刺激や視覚情報を分析し、脳が蓄積された経験や記憶と照合し適切な電気信号を発生させ、
  その結果として肉体が行動している。
  その電気信号の発生手順を「意識」と、多分呼ぶのですが。」
 「ですが、何ですか?」
 「……。
  うん。
  今のところ作られている人工知能は、まだ知能じゃないといわれています。
  チャットとかIRCとかの人口無能も「知能」かといわれるとそうじゃない。
  意思とか意識があるかと言われれば、恐らく多くの人は、
  あれは唯のプログラムだ、あらかじめ定められた反応を返しているだけだ、「まだ足りない」、というでしょう。」
 「それと今の人間と何の違いがあるのか?」
 「話が早くていいなあ♪」
 
 ピジョンの苛立ち混じりの声に、丘はころころと笑った。
 
 「刺激に対して特定の反応を返すことを「知能に足りぬ」というなら、人間も他の生物も同じだ。
  意識を持つ持たない、知能がある無いの境目なんてありはしない。
  いや、意識や知能なんて幻想に過ぎない。
  ……と、おっしゃりたい。」
 「その通りです。」
 「そんなにべもないことを、わざわざ告げに?」
 「いやはや♪」
 
 ため息の混じるピジョンに、しかし丘はなおも笑う。
 
 「僕はロマンチストらしくてね。
  『それでも人の意思はあるんだ』と考えたいんですよ。
  だって意思ある行動はカッコイイ。
  何もかも決められているなんて、空恐ろしくてやってられない。
  自分というものが曖昧になって不安になって、惨めな気持ちになる。」
 「慰めて欲しい、と?」
 「まあ、そんなところですかね?」
 「つまらないことで呼び立てるな早漏野郎こちとらあなたのママじゃねんだよ
  と申し上げます。」
 「それでも僕は、あなたもロマンチストだと信仰している。」
 「信仰。その表現の仕方、
  吸血鬼が出てくるあの漫画の受け売りですわね?
  なんと言ったか、小太りのいけ好かない男……。」
 「あなたには、意思は無いので?」
 「非常に不愉快ですわ。」
 
 試すように目を見開いて首を傾げる丘を、金色の前髪の隙間から赤い目が睨む。
 
 「そういう挑発も、乗ってしまいたくなる自分自身も。」
 「信念や理念や気分や正義を、好きそうですもんね、あ な た。」
 「背徳や挫折や本能や悪徳が、お好みなんでしょう?あなたも。」
 
 ピジョンの赤い瞳は、燃えるような熱さで睨む。
 丘の茶色い瞳が、タールの様な濁りでそれを受け止める。
 丘はイグニッションと呟き詠唱兵器を肉体に装填すると、その装備を脱ぎ始めた。
 
 「……喧嘩を?」
 「ええ、所望します♪」
 
 ブーツを脱ぎながら、丘はまた笑う。
 髪を結うリボンを解き、分厚い上着を脱ぎ捨てる。上着の上に、回転動力炉のついたナイフを置く。
 靴下はブーツの中に片方ずつ突っ込む。
 ズボンに手をかけてから、「これは、ご勘弁を」と言い、ポケットから小銭入れと鍵を引き出しテーブルの上に置いた。
 
 「気分が悪いですわ。
  売られた喧嘩には違いないが、乗せられているのが非常に腹立たしい。」
 
 イグニッション!
 
 ピジョンも吼える。
 カードから展開された、トレードマークである赤いドレスを脱いで畳む。
 T-REXを模したリボルバーガントレットを腕から抜く。
 指輪も外し、エアシューズと靴下はドレスの横にそろえて置いた。
 胸には晒、下半身はスパッツ。
 
 双方、徒手に裸足。
 殺し合いではなく、肉体をぶつけ合う構図。
 殺す覚悟も殺される覚悟もないが、遠慮も容赦もしない構え。
 
――――どうなったって知るか
 
 つまるところ、求めるものはそれだけ。
 
 「それがあなたの構えですか?」
 
 前後に大きく開脚し右掌を前に差し出すピジョンに対し、丘は四つんばい。
 クラウチングスタートにも似た構えだが、両手を大きく曲げて、溜めている。飛び掛る前の猫のような構え。
 
 「ビルの合間を蹴り跳び、上へ下へと駆け回る能力者ですよ?僕らは。
  数十キロの自重を物ともしない僕らの膂力で、体重を大きく利用するような人間由来の武術など何の意味があるというんです。」
 「なるほど、理屈ですわね。
  では試して差し上げますわ。
  人の作り上げた技術体系の尊さと、
  にわか仕込みで獣スタイルを取るあなたの安直さを。」
 
 人型をした金の獣が手を中空に掲げる。
 万物を掴み、ヒトがヒトたる形に進化した源である、どの生物より器用なその手を。
 獣を模した黒いヒトが前肢を地に着く。
 地を駆ける、精々食物を押さえ込む程度の役にしか立たなかった、あの頃の様に。
 
 丘の体が弾けて跳んだ。
 後の先を狙ったピジョンの掌は、傾けられた丘の横顔を掠めるに留まる。
 直線に対し直線のカウンターを取ろうとしたため、却って読まれてしまった。
 舌打ちするピジョンの直前に、丘が屹立する。接触直前にブレーキをかけていた。
 両手をピジョンの腰に回し、見下ろす。
 まだ始まったばかりだ、と。
 タックルはきっと成功していましたね、と。
 
 金的狙いの膝蹴りは丘の両手が食い止めたが、衝撃で肉体は跳んだ。
 蜻蛉を切って着地した丘が、痺れる手を振りながら言った。
 
 「ほらね、こんなに軽々と、人間並の体重を飛ばしてしまう♪」
 
 そう言って、また四つんばいの溜めの姿勢に入る。
 ピジョン、今度は待たず、飛び込んで顔を凪ぐようにソバットを打ち込む。
 丘は体をねじりよけると、立ち上がり、両手を繰り出した。
 ピジョンの掌底が丘の肘に受けられ、丘の貫手がピジョンの手に握られ、押し合う状況に。
 
 「どうしました、それは人間の技術ですわよ?」
 
 両者の足元が落ち窪んでいく。
 壁を登り空を飛ぶ膂力が澱み溜まり軋んでいる。
 
 丘が受けていた肘を伸ばし拳を放てば、ピジョンは握った腕を振り丘の体を再び宙に浮かせる。
 今度はピジョンが笑い。
 丘の顔に怒気が宿った。
 
 着地を狙ったピジョンの突きは体の捻りでまたしてもいなされる。
 丘の体ごとの突撃をピジョンは闘牛士のようにステップで交わす。
 
 もっと原始的で、愚かで、野放図な拳の打ち合いをしたかったのに。
 それは二人共の願いではあったが、それを許せるほどの信頼は、互いになかった。
 だがいずれは。人間の尺度で見れば途方も無い時間をかけたやり取りの果てには。
 小細工や防御を行う体力も判断力も残ってはいまい。
 二人はそれを待っている。
 そうなるのを待っている。
 原始的で愚かで野放図な打ち合いしか頭に残らないぐらいの、疲弊と、熱病に冒されるのを。
 苛立ちと不安を、遠慮なく叩きつけられる、神でも自動的反応でもなく、自分の意思の感覚で肉体が満たされる子供じみた熱情を。
 
 どうか、それまで。床は抜けませんように。
 奇しくも二人は、同じことを同じ刹那に願った。
 
 
 以上。」
 
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