レーキ

 「どうぞ皆さん 新しい地平へ旅立って下さい。
 
 我々は この世界で夢を見ていますから。
 
 褥には誰も いない方がいい。
 
 我等の神殺しの夢の始まりに、他の誰も巻き込みたくはない。
 
 この世界と一緒に死んで、やっと筧次郎は筧次郎になるのだから。
 
 この世界を見守り切って、やっと鳩は鳩になれるのだから。
 
 
 だから、行ってしまってください。
 
 我等の独りよがりな夢に、巻き込まれないように。
 
 我等の独りよがりな夢を、邪魔しないように。
 
 我等の独りよがりを邪魔して、我等の気分を害さぬうちに。
 
 妄想シルバーレイン
 
 U・O・R・I・J・I・E・K・A・K・O
 
――――殺意というのは……
――――憎悪のように燃え盛るわけでもなく、
――――憤怒のように真っ直ぐ伸びるものでもなく、
――――嫌悪のようにどろどろしている訳でもないんです。
――――邪魔な小石をどける……いや、違うな。
――――閉じているドアを開ける。それに近い感覚です。
――――うーん、却ってわかりにくいかな?
――――ドアが閉じていたら開けるでしょう?
――――殺したい奴がいる、という事態は、目の前の扉が閉じているということで、
――――そいつにナイフを突き立てるのは、ドアノブをひねるのと同じ。
――――異常、ですか?ああ、やっぱりおわかりになりませんか。
 
 
 「O’!カケイジロウ!ではないか!」
 「また殴りますよ。」
 
 結社・戦闘楽団デスパレードの室内。人数の少ない時間を選び、丘・敬次郎は椅子に座っていた。
 結社長である岩崎・燦然世界――――近日結社長から退くことになるのだが――――は、扉を開け、目に付いた丘に、大きな声をかけた。
 
 「O’!カケイジロウ!は気に召さないか!?それは失礼した!
 電気も点けずに何をしている!誰もいないと思ってきたのに驚いたではないか!」
 「悪意無くそう呼んだのなら本気で尊敬しますよ。ええ、本気で尊敬します。
 電気を点けなかったのは、誰も寄せ付けたくなかったからです。
 驚かせたのはごめんなさいでした。」
 「的確に答えきったな!」
 
 そう言って岩崎は懐からマグライトを取り出した。頭を捻ると白くて丸い光が散らかった部屋の一角を映し出す。
 
 「白くて丸い……まろい。」
 「丘、それどっかで聞いたぞ。」
 「先輩は何故今こんなところに?」
 「いや何……思い出探しをな。」
 「へえ。」
 
 張り合いのない答えを気にもせず、岩崎はライトで照らした先へと歩を進める。
 ごった返す小道具達を手にとっては、へー、ほー、と感嘆の声を漏らしている。
 
 「あ、これミキサーか!
 火炎王が入ったんだよな!ミツルも飛び込んだんだっけ?
 何でこんなでかいのがうちにあるのだ!どこの工場の何用だこれは!
 ああ!これは拡声器ではないか!初代デスパ用拡声器、どこに言ったかと思ったらこんなところでミキサーされて!」
 「……。」
 
 呆れたような、興味の無いような。
 そんな顔で丘は岩崎を見つめている。
 
 「お前は何しに来たんだ?」
 
 そんな丘に、背中を向けたまま岩崎が返した。
 
 「誰もいないときになら、デスパに入れるかな?と思って。」
 「何だそれは。」
 「ノリが合わない、という訳ではないんですがね。
  賑やかなのは好きなんですが、苦手で。ここ、尋常じゃなく賑やかなんで。僕は入る隙間が無くて。」
 「それはすまん!」
 「軽々しく謝らないでください!
 ……。いや、失礼しました。
 場に馴染めないのは僕の問題です。ここに非は無い。
 ましてや皆さんが悪いってことでもない。僕は此処が好きですが、
 好きですが……苦手ですね。表現するのが難しいです。」
 「そうか。すまん。」
 「だから、」
 「軽々しく謝っているわけじゃない。
  苦手意識を持たれることは、謝罪すべきことだ、責任者としてな!そろそろ責任者でもなくなるけどな。
  その代わり、ありがとうとも言っておこう!好きでいてくれて有難う!」
 「それは、どうもありがとうございます。
  まあ、そういうことで。
  デスパには行きたいけどが会話はできないな、じゃあ誰もいないときに来てみるかと。」
 「お前結構チャレンジャーだな!
  おお、コレは土鍋ではないか!いつ買ったのか覚えてないぞ!」
 「岩崎先輩は?」
 
 今度は丘が釘を刺す。
 
 「ん?」
 「何故、こんな夜更けに。」
 「だから思い出探しだと言ったろう!」
 「辞める訳じゃないんでしょ?
  賑やかなのは得意な方の人だと思ってましたし、それがわざわざ一人で来て。」
 「悪いか!」
 「何をしに?」
 
 丘の茶色い瞳が真っ直ぐに岩崎を見つめると、岩崎は何かを思い出したようにため息を吐いた。
 
 「そっくりだな。お師匠様、カケイジロウそっくりの目をしてる。」
 「そいつはどうも。」
 「友達のお母堂(ぼどう)様に、あいつは女の敵だと聞いた。
  闇のような目をして、覗き込ませて覗き込むんだと。
  お前を見て納得した。」
 「で?何故此処に。」
 「火炎王が入っていないミキサーとか、
  茜が仕切ってない鍋とか。
  ミツルが座ってない椅子とか。
  見てみたかっただけだ。」
 「ごめんなさい、僕、先輩はもっと大雑把でセンチもロマンも欠片も無い人だと思ってました。」
 「ロマン無くして何の楽団か!」
 「折角ですから、二人で話しません?」
 「話しているではないか!」
 「そういうことじゃなくて……ああ、まあいいや♪」
 
 
 それから岩崎は部屋中をひっくり返しながら、丘はその様子を眺めながら、他愛も無い話をした。
 夜が白む頃になって、丘が振ったのはこんな話。
 
 「ゴーストって悪い奴だと思います?」
 「悪い奴……悪い……悪くなってしまった、んだろうな!
  望んで悪くなった訳ではないが、放っては置けない。」
 「……いい社会人に、なると思います。」
 「大学生だ!」
 「大学生!」
 「笑ったな!」
 「いえ!あざ笑いました!」
 「お前本当に最低だな!」
 「最高のほめ言葉です!」
 「じゃあ、質問を返そう!
  ゴーストは悪い奴だと思うか!?」
 「悪い奴ですね、放っては置けない。」
 「ほう。」
 「意外だと思いましたね?」
 「いや!ありえないと思った!」
 「あなたはもう!」
 「ほめ言葉と受け取っておこう!」
 「じゃ、次の質問。」
 
 隈の出来た目を細めて、丘がくるくると指先を回す。
 
 「ゴーストを倒すとき、いい気分ですか?それとも、やるせなくなりますか?」
 「やるせないな。やるせない……。
  仕方ないんだが、仕方なくないことのはずなんだ。だが、仕方ない……。
  そう思うと、やるせないな!」
 「僕は……。」
 「……。」
 「いい気分、と言うと思いました?僕はね……前にその、カケイジロウが言っていたことが正にピタリと当てはまるのです。
  彼曰く……。」
 
 
――――――――
 
 「おっと、誰か来るかな?」
 
 夜明けの日差しが差す部屋で、話し終わった
 
 「誰も見えないぞ?」
 「足音が。」
 「しないぞ?」
 「忍者ですから♪では僕はこれで。」
 「次は、電気ぐらい点けておけ!」
 「嫌ですよ、誰かが来たら困るでしょ。」
 「電気が点いてなかったら、またわたしがノコノコと入ってしまうではないか!」
 「ノコノコと♪」
 「おセンチな乙女のか弱い部分を団員に見せたくは、ない!」
 「か弱い部分(笑)」
 「行け!」
 「言われなくても!」
 
 窓のサッシを蹴り、丘は朝の銀誓館学院へと降り立った。
 
 「ドアを開ける……か。」
 
 岩崎は、今正に団員が開けようとしてる扉を見て、リビングデッドの姿を重ねたが。
 開かれた扉がリビングデッドの倒れる様にどうしても重ならないので、すぐに考えるのをやめた。
 
 
 
 
 
 
 以上。」
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