自分が信じる正義すらも無しに

 「心配なのはお前じゃない。
 
 この先お前という愚物に迷惑をかけられる、お前よりはマシな有象無象だ。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 妄想シルバーレイン
 
 誰が為に弔鐘は鳴る
 
 「もしもし。」
 
 ポーランド行きの飛行機を待つ空港にて、少年、丘・敬次郎が携帯電話を開いた。
 
 『わたくしです。』
 「お疲れ様でございます。」
 
 聞きなれた女頭目の声に、挨拶を返す。
 
 『銀誓館学園の戦争へ赴くところでございますね?』
 「あと30分で、飛行機が出ます。」
 
 同校の生徒たちからそれとなく離れつつ、会話を続ける。
 何となく顔がやや伏せ気味になる。
 
 『がんばってきてくださいね。』
 「はい。」
 『何を?』
 「は。」
 
 何を頑張るのだ?
 
 「殺します。」
 『この戦において、わたくしは特に具体的な命令は下しません。
  精々学園の意思に忠実に戦いなさい。』
 「はい。」
 『何なら逃げてもいいですよ?』
 「いえ……。」
 
 口の中が乾くのを感じて、丘は唾を呑んだ。
 
 『我等の目的にも遠いし、一般人が巻き込まれるわけでも在りませんしね。
  単純なヤクザの派閥争いです。』
 「ヤドリギ使いの村には能力者でないものも多くいますが。」
 『そんな後顧の憂いは幾ら殺しても構いません。』
 
 電話の向こうの女の声が言い切った
 
 「はい。」
 『どうせ参戦する能力者を全部殺しても、全世界の能力者殲滅には遠いでしょうしねぇ……。
  日本に比べたら大したことも無い。』
 「しかし、狼共の中には有力なものも多数、」
 『数の話をしています。
  我々が求めているのは、"圧倒的な皆殺し"だ。
  それが出来る殲滅力を手に入れてしまえば、個々の力量など問題にならない。問題になるのは数だけ。
  今の段階ではそんな力を我等は持っていないので、今回のはタルい戦いだなあと。』
 「は……。」
 
 学友から離れておいてよかった、と、丘は胸をなでおろした。
 間違っても他人に聞かれたくは無い内容だ。
 
 「精々、化け物どもを沢山殺してきますよ。」
 『そうですね、少なくとも学びの場を与えてくれているという恩義には報いてください。』
 「はい。」
 『……まあ、そのぐらいかな。』
 「珍しく乗り気じゃありませんね?」
 
 戦争前はいつもなら、発破をかけて殺せ殺せというくせに。
 
 『あなたが一人いないぐらいでどうということもないでしょうし。
  神であるわたくしにも変えられる運命には限りがありますゆえ。
  それに、わたくしにはこの戦いに燃やすべき使命が無い。
  我等瑠璃は、人間の為に人外を滅ぼすのが最終目的です。
  シルバーレインの堕とし子どもは、存在そのものが人間の積み上げてきた科学と文明への侮辱と冒涜ですから。
  人間たちが、人間たち自身の手で我等を葬れるようになるまで、自らを鍛え、ついでにゴミを掃除するのです。
  今回の戦は、人間の命が脅かされているという緊急性もありませんし、
  はっきり言って誰が勝っても人間の為にならない。面白くありません。』
 「……。」
 『あなたは、何か面白みを見出しましたか?
  参戦する以上、モチベーションは高くないといけないはずですが。』
 「……ポーランドのロリっ子を、一人バラそうかなと。」
 『あはははははははは……。』
 
 高い笑い声が数秒。
 
 『好きになさい。幸い戦場は森だそうで。
  バレないように捨てて来て下さいね。』
 「は。」
 『参戦する以上、ポカは許されませんよ。
  生きて還ってきなさい。
  ああ、何なら森を思い切り荒らしても構わない。』
 「構わないんですか?」
 
 クスクスと笑う声が混じったセリフに、丘は聞き返した。
 
 『そうしたら、人間たちがもっとずっとわたくしどもを憎んでくれるかもしれないじゃありませんか♪』
 「……そうですね♪」
 『いつか我等の脅威を知った人間が、詠唱銀の篭ったグレネードランチャーを我等に向けて下さるときまで。』
 「全ては人間の文明に服従するべき、と♪」
 『恐ろしきものはいつだって、人の手で駆除されるべきなのです。』
 「了解。ダラダラ遊んできます。」
 『死なないように。命令ですよ?』
 「死にませぬ。命令ですから。」 
 
 不意に肩を叩かれ、振り返ると丘の同級生であった。
 時間なので、と電話を切ると、丘は彼らに合流した。
 
 少しだけ笑みをこめて。
 
 
 以上。」 
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