純然たるもの

 「これはただの絵だが、俺はこれを愛している。
 
 お前はただの肉だ。 ただの肉だ。
 
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 ……ネウロが好きです。
 
 妄想シルバーレイン
 
 石の意思
 
 瑠璃の屋形の服からは、無限にナイフが出る。
 少なくとも、無限かどうか確認するまでには決着がついている。
 
 「やはり、野生の獣は素晴らしい♪」
 
 倒れた熊の遺骸を見下ろし、屋形は陶然と言った。
 自らに刺さった無数の投げナイフを下敷きにしてうつ伏せ。背中にひとつだけ空いた穴から血があふれている。
 丘は構えていた自動小銃の銃口を下げ、ため息を吐いた。
 技術の粋を集めた火器も、能力者にかかれば形無しだ。
 徒手空拳で同等以上の破壊力を発揮して見せるのだから。
 
 「丘、今日は美味しい鍋になりそうですよ♪」
 
 前進してくる熊に対し、屋形はナイフを投げつけた。袖から裾からスカートから、それこそ自動小銃のような連射速度で。
 それでも熊は前進をやめなかったので、屋形は足を止め、振りかぶった。
 熊が爪を上げた瞬間、パン、と空気を破る音が一つ、ほぼ同時にずどんという衝撃音が一つ起こり、熊は糸が切れたように倒れた。
 貫通したのだ。重量300gに満たぬ、それも柄付きのナイフが。
 強靭な熊の皮膚、筋肉、骨を。
 『着弾地点』を見ると、粉々になったナイフが下草の上に散っていた。
 
 「丘、どうしました。早くしないと肉が傷みます。」
 
 はい、と答えてイグニッション。
 常人に数倍する膂力を彼も解放し、熊を背負い上げる。
 
 「見事な手際でございました。」
 「ありがとう♪」
 
 屋形は涼しい顔をしている。
 おそらくは、興奮すらもしていない。
 
 「野生の獣は、素晴らしい。」
 
 屋形が繰り返した。
 
 「恐ろしいと思ったら迷わず逃げ、あるいは立ち向かう。
  窮地に際して必ず本能に従う。
  無駄がなく、美しい。」
 「……。」
 「逃げる場面だったのに無駄死にしたとか、
  勝てたはずなのに逃げてしまったとか、そういう悔やみもそもそも無い。
  潔い、いや、そういう見方自体が失礼ですね。
  人間に対して、ただ災害としてそこにある。実に、実に素直で誠実だ。」
 「……。」
 
 丘の体は、熊から流れ出た血で既に真っ赤だ。匂いも酷い。
 それでもまるで気にすることなく、屋形は続ける。
 
 「対して我等ヤクザは、賢しい。
  金の為に人を騙し、
  相手も騙されながらこちらを騙すことを考えている。
  騙されているだなどと全く疑わぬ善良な市民から、そ知らぬ顔で巻き上げる。
  政治家、業者、被差別者、官憲、……ヤクザ。
  生きるための権謀術数が入り乱れすぎて訳が分からなくなっている。
  どの命脈を絶っても、誰かが尻をぬぐい、別の誰かが後釜に座る。
  ある意味では、生態系がなされていると言ってもいいが……美しくは、ありません。」
 「……。」
 
 丘の横顔をちらりと見てから、屋形はくつくつと笑って言葉を続ける。
 
 「それでも、わたくしどもには正義の味方として彼らに立ちはだかる権利は無い。
  わたくしどもはまさに化け物なのだから。
  彼らの求めに応じ、召喚され、災害をもたらし、なんとなれば自爆する……自滅せよ、との依頼は未だ一つも来ておりませんが♪」
 
 うれしそうに、屋形は言う。
 
 「しかし、死ねと言われれば迷わず死にます。望まれるまま、絶滅します。
  何しろ愛する人間の望みなのですから。
  だからこそ、我等に持てる唯一の権利は。
  愛する人間を同属から守ること。
  悪い人間は人間が裁くべきだ。人間の自浄に人外が手出しをすることは罷りなりませぬ。
  悪い、「人間ではないもの」ならば、我等にも裁けます。」
 
 汗が沁み出る感触を我慢しながら、丘は話を聞いていた。
 粘る血が皮膚を覆ったせいで、蒸れて暑い。
 
 「人の役に立ち、人の歴史に残らぬこと。
  自然淘汰のように、史実ではなく現象として過去になること……。
  気がつけば巌となりて、苔の生していた、ただの細石のように♪」
 
 木々がまばらなになり、獣道が太く明らかになると、木造の家屋が見えてきた。
 
 「さあもう少しです♪
  血の抜け切らぬ内に運びましょうね、
  捌くのはあなたに任ずるつもりなのですから。」
 
 お得意でしょう?とウインクした屋形に、丘は血まみれの呆れ顔をただ向けるだけだった。
 
 
 以上。」
 
 
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