神様、アルカナハートやってる奴は悲しい歌が気が触れるほど好きです

 「地下鉄心斎橋駅5・6番出口 会場 東心斎橋studio Candy 542-0083 大阪府大阪市中央区東心斎橋1-18-27 東急ビルB1F
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 眠れなくなれ、自分。
 
 妄想シルバーレイン
 
 ベット、コール、レイズ、ドロップドロップドロップ
 
――――神様、俺達は悲しい歌が気が触れるほど好きです そして今夜
THE BACK HORN 『孤独な戦場』より
 
 
 
 夏場のリビングデッドは臭い。
 代謝の止まった身体は容赦なく腐って行くから。
 内出血の滲んだ青白い身体には、発酵による熱気と熱気に伴う気流に混じった腐敗臭が強く漂う。
 
 ナイフでの爆水掌は、やはりいろいろと無理があるな。
 開いた掌をわきわき動かしながら、丘・敬次郎は眉を顰めた。
 
 まあ、龍尾脚とか獣撃拳とか吸血噛み付きとか、詠唱兵器関係なさげなアビリティは、考えてみたらいくらでもあるのだけれど。
 壁ごと粉々になったドスゾンビヤクザをちらりと見て、おえ、と舌を出して見せる。
 
 「先輩♪」
 
 声をかけた先にいたのは、楠森統次郎。
 
 「……何だ。」
 「スラッシュロンドかっこいいですよね♪」
 「お前も貴種ヴァンパイアになればいい。使いたいなら。」
 「いえいえ♪」
 
 くるりと身を翻して、首のないリビングデッドの死体に蹴りを入れる。
 人間に数倍する威力のそれは、コンクリの壁ごと腐った身体に穴を開けた。
 
 「……楽しいか。」
 「あは♪」
 「俺に見せびらかせて。」
 
 自分がどれだけ最低かを。
 
 思えば、これまでの接触の全てがそうだった。
 丘は、自虐のためだけに彼をつき合わせている。
 いや、丘に取っては自分以外の全てが、その為の道具に過ぎないのかもしれない。
 
 「……正直……悪くない気分です♪」
 
 本来能力者(バケモノ)のあるべき姿だぞ、これが。
 そう見せて、がっかりさせてやるのは。
 
 「何故俺だ。」
 「あなた、僕を何とも思っていない。
  ダメですよそんなのは。不公平だ♪」
 
 その言葉を聴いて、楠森は強い眩暈を覚えた。
 これは、この一ヶ月の休息の間彼自身が考えていたこと。
 巻き込まないようにしたいと思いつつ大切には思うことと、
 大切に思っていた人たちが巻き込まれに来てしまうことの、矛盾。
 それを解く答えを探していたのに。
 
 ああ、お前は。お前は。丘、お前は。
 
 「いや、先輩が僕をどう思おうと構わんのです。
  何とも思わんのだけは、許せなくてね♪」
 「丘。」
 「極々勝手な事情で、こちらは先輩に興味を持った。
  あなたの抱える……闇、ああ、陳腐で嫌な言い方ですけどサ。
  あなたは僕を目の前にして、走って逃げた。
  あんな異常な反応をしておいて、こちらが何も思わないとでも?」
 「……。」
 
 すまん、と言いかける前に、丘が畳み掛ける。
 
 「答えは聞きました、怖かったと。
  ええ、驚かせるつもりでしたから、ある程度納得は出来ます。
  でも、僕はわからないままだ。
  だが、あなたは僕が、『単に面白そうだから』と言う理由で追いかけたのを知ってる。」
 
 楠森が意外そうな顔をした。面白そうだから?もっと何か事情を知っていたんじゃないのか?そんな顔。
 それを見て丘が笑った。
 
 「何一つ、決定的な言葉をもらっていない。
  話したくない、とすらも。」
 「……。」
 「僕ら、酷く似てるな、と思いまして。
  頭の中で議論の9割を片付けて、1割だけ口にする。
  だから理解されないし、理解してもらおうとも思ってない。理解してくれるな、とすら思っている。」
 「手札を見せているのは、そのためか。」
 
 『僕が臓腑を見せているのだから、あなたも脳髄を晒してください。』
 丘の過剰な追跡と、今この場で見せた暴虐には、そういうメッセージが篭っている。
 『僕はあなたが思うより卑小な人間だ、人間ですらない。』
 それは、己を最低の位相に保ち、『自分はヤクザである』という、被差別意識に基づく特殊な自尊心を守るため。
 
 『ではあなたはどうなんだ。』
 
 卑小な僕を蔑むのか、俺も同じだと同調するのかもっと違う感想かどれだ。
 楠森統次郎あなたは僕に何の感情も向けていない。
 楽しげな反応を見せろよ。あなたを理解させろよ。理解することによってすっきりする生き物なんだ、僕は。
 
 
 いつの間にか、楠森は丘の瞳を覗き込んでいた。気付いてす、と目を逸らす。
 蔑むような、笑うような、諦めたような目。
 歴代のカケイジロウが宿してきた、底の見えない闇。
 透けて見える丘の悪意を、『透かして見てしまっている』。
 
 「どうしました?
  ああ、これですか?」
 
 丘がリビングデッドを指差す。
 
 「いや、きちんと殺しきらないと、怖いでしょう?
  ゾンビってそういうものだから♪」
 
 楠森は正直に、ただ正直に反応しているだけだ。
 恐ろしいものは恐ろしい。ただ、それを口にもしないし表現もしないだけ。
 その必要もないと思うし、意味も無い。他人に闇を見せて何になる。これは俺だけの問題なのに。
 
 丘も正直に、ただ、正直に反応している。
 楽しいものは楽しい。ただ、それを見た人間が自分をどう評価するか、必死に計算して。
 残酷に見えるように振舞うのは本当に残酷だからだが、演技臭さも残しておく。本当は何者なのかと覗き込ませる余地を与えるために。
 
 丘にとっては、未だ敗北である。
 楠森は、彼を覗き込まない。興味も持たない。
 かと言って、丘が彼の髪の毛を掴んで眼を開けさせ『話せ』と言うのは違う。
 こじ開けるのではなく、揺るがせるのだ。
 僕を覗き込め。僕を探求したいと願え。
 僕はもうカードを出したのだ。そのチェックぐらいしてくれ。自分の持ってるものと比べてみてくれ。
 
 それでも楠森は、自分のカードだけを見つめている。
 だから敗北。
 敗北だ。
 そのカードを見たいという丘の欲望を、折って殺したままでいる。
 敗北。
 彼我の役の強弱などどうでもいいのに。こちらがブタで、そっちがロイヤルストレートフラッシュでも、こっちは一向にかまやしないのに。
 自分の手札がクズ手だなんて、とっくの昔に知っている。だからこそ笑顔を貼り付けることを覚えたんだから。
 本当にクズ手か?と覗き込ませるために。
 
 「先輩、もう帰りますか?」
 「いや……討伐までは付き合う。」
 
 楠森が歩みを進めた。
 学帽の下にカードは伏せたまま。
 
 「これも、修行の一環だから。」
 「そうですか♪」
 
 
 もっと 強くならなければ。
 
 
 奇しくも、通じぬ両者は同時に同じことを思う。
 東洋新世界ビルディングは、上に下に、深く二人の革靴の音を吸い込んだ。
 
 
 
――――暗闇の中 ドアを叩き続けろ
THE BACK HORN 『孤独な戦場』より
 
 
 以上。」
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