欲望のみで

 「かわいいけど綺麗じゃない女の子とセックスしたいなあ。
 
 ……はっ!?
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 最近買ったルリルリの同人誌がまさにそんな感じだったそうです。知るかよ。
 
 このご時勢にルリルリの同人誌と言うこと自体が希少と踏んで買ったそうです。知るかよ。
 
 妄想シルバーレイン
 
 道は出来てしまった
 
 プールの淵に掛けた手を突っ張り、身体を起こす
 ぷはあああああ。
 長い黒髪が水を含み、肩や背中にびたりと張り付く。
 丘・敬次郎はその態勢のまま片手で髪を上げ、辺りを見渡した。
 
 夏休み最後の土曜日、日も暮れかけて避暑の必要もなくなったこの時間にわざわざプールに居座るのは、水泳に魂を売った生徒だけ。
 誰も彼も、適度に引き締まった「泳ぐための身体」をしている。
 惜しげもなく曝された腕、肩、太もも。
 ワンピース型の水着から透けて見えるボディライン。
 必ずしも扇情的な在り方とは一致しないが、丘にとっては極上の甘露である。
 
 能力者をやる前から、丘は人の身体が好きだった。
 小さな胚に過ぎない細胞が、母の胎内で増殖し人の形を構築する。
 出来上がりは、未熟ではあるものの既にきちんと生命活動に足る形。
 内臓、骨、筋肉、神経。一切の無駄なく接続し稼動する。
 モーター音もせず有毒な排気もなく、排熱機構も既に組み込まれている。
 何と素晴らしいことだろう。
 
 プールサイドに身体を上げ、ベンチに腰掛ける。
 小学校の図書室で初めて解剖図を見たときから、丘はずっと変わらない。
 人の中身を見たい。自分の中身を知りたい。
 
 生命を暴き出す。
 
 薄皮一枚の下には、既に目に見えないほどの神経と血管が隙間なく張り巡らされていて、
 その緻密さを惜しみながら切り裂いた下には筋繊維。
 化学物質を燃料、電気信号をアクセルに持つ、この世で最も古く、かつ最も効率的なエンジン。
 さらにそれを取り除くと骨がある。
 主成分は鉄でもアルミでもなく、カルシウム。
 棒状のそれは、強度を増すために内部が空洞になっている。
 最高の強度を最適の素材で実現、誰に教わったでもなく。
 ただ空洞になっているだけでなく、骨盤や肋骨など胴体部分の骨髄は造血組織も持っており無駄がない。
 骨盤、肋骨を追えば、自ずと臓器が見える。
 食物というおよそ燃焼には適さないものを燃料に変換するために長い長い消化管が存在し、
 肝臓、脾臓、心臓がそれを身体の隅々に分配し、
 肺臓が燃焼の為の吸気排気を行う。
 
 一秒たりとも止まる事の無い社会が、人間の身体には詰まっている。
 完成した無駄の無い仕組みが、小さな赤子の中にさえある。
 
 この不思議に魅せられない人間など居るものか。
 
 競泳水着が食い込む尻を目で追いながら、丘の目にはその中の筋繊維の有様が見えている。
 
 そうだ。そうだとも。
 
 シャワーを浴び、水気を払い服を着れば、外はもう夜。
 
 イグニッション。
 黒いコート、片手にはナイフ。
 
 人間の中身を見るために本を読み、
 人間の中身を見るために身体を鍛え、
 人間の中身を見るために技術を身につけ、
 人間の中身を見るために座学を行い、
 人間の中身を見るために忍者になり、
 人間の中身を見るために殺人者になり、
 人間の中身を見るために借金も取り立て、
 人間の中身を見るためにヤクザになったのだ。
 
 
 アレ は。美しいんだ。
 お前、日本最高の技術者に同じものを作れって頼めるか?
 アレ を見てしまったら、人工知能や人工筋肉なんかじゃ満足できないぜ。

 
 世界結界がどうだろうが、
 銀誓館が何と言おうが、
 お屋形様に利用されていようが、
 俺が誰かを愛そうが愛されていようが、
 俺は解剖学者なのだ。
 ばかげたことに、忘れてた。
 ふざけたことに、自惚れてた。
 
 躊躇うな。俺から解剖を取ったら、何も残らない。
 俺は。
 
 

 「ピジョン・ブラッド。」

 「……嫌な空気を嗅いだのでね。」
 
 正しい。
 彼女は正しい。
 これからやることは罪だ。犯罪だ。法に反する。倫理に反する。
 それを止める。
 やんごとなき正義だ間違いない。
 
 「何です、デートのお誘い?」
 「いえ?お独りでどうぞと送り出しに参ったところですわ。」
 
 イグニッション!
 一声吼えると、彼女の身体に赤いドレスが装填された。
 
 「あの世へね。」
 「警察呼びましょうか、通り魔が出たって。」
 「あなたに言われたらおしまいですわね!」
 
 逃走も許さぬ接近からのクレセントファング。
 丘はナイフで受けるが、逸らしきれぬ力が彼の胸を裂き血の花が咲いた。
 
 「あなたの中身でも、まあ、いいか♪」
 「能力者でありながら、その力をか弱き人に向ける。今のあなたはゴーストも同然ですわ。」
 「勝てない勝負はするなと、お屋形様から厳命されてはいるんですけどね?」
 「あなたとの付き合いも長いですが、終わりにいたしましょう。」
 
――――知ったことか、俺の脳髄何処を切ったって、中身の見たさしか入っちゃいねえぜ
――――俺は『それで出来てる』!
 
 
――――同胞を手にかける、となれば、なるほどわたくしも穏やかな学園生活は送れぬやもしれませぬ。
――――しかしこいつは同胞などではない。今このこいつを許したら、『わたくしはわたくしでなくなる』!
 
 「申し訳ありませんが……。」
 「くたばっていただきますわ。」
 
 夏の終わりの夜。
 黒髪と金髪は、世界結界が割れるほどに己の刃をぶつけた。
 
 
 以上。」
 
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