絶叫するに足りない

 「花のように生きろ。踏みにじってやるから。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 熱情を寄越して
 
 老女の姿をしたリビングデッド、通称マダム通天閣を前に、丘・敬次郎はすう、と胸を張って息を吸った。
 
 「聞け!哀れな死人。
  我は丘敬次郎。
  今この時より貴様らの敵になるものなり。
  死して尚つまらない貴様らに、真の死を与えようと思う。
  死して尚残るお前らの深い情を、
  僕の単なる気まぐれで断ち切ろうと思う。
  いざ尋常に、今、己らのくだらなさを知れ!
 
  汝ら……」
 
――――――――――――――――――――――――――――――
 
 「何だったんデスか?あの口上。」
 
 上着をはたいて汗を乾かしているところに話しかけられ、丘はふうと息を吐いた。
 
 「いやぁ。
  そう言えば、そういう文化があったなあと思って♪」
 「文化、デスか?」
 「文化。
  最近は聞きませんけどね。ふと思い出しまして。
  こんなコトが出来るのも、こんな場所ぐらいですから♪
  出来るうちにカッコはつけておきたい。」
 「ふむう。」
 「早く出ますわよ。地下は匂いが篭っていけませんわ。」
 「お風呂に入りたいわ。」
 「はいはい。」
 「ハーイ。」
 
――――――――――――――――――――――――――――――
 
 地下街の出口。
 イグニッションを解くと、纏わり付いていた腐臭は消えて。
 
 「じゃあ、わたしはこの辺で。
  またね、先輩方。」
 「ではねー♪」
 「それではまた。」
 「おつかれさまでシタ。」
 
 パーティのうち一番年少なメンバーが一足早く離脱した。
 彼女の背中が角に消えたところで、メンバーの一人が丘に鋭い目を向けた。
 
 「先刻の口上、まあ、30点というところですわね。」
 「その程度がいい。
  僕はただ、熱くなりたいだけなんて。
  カッコを付けるったって、嘘八百を並べても意味が無い。」
 「特に単なる気まぐれって辺りが実に最低でしたわ。」
 「それでこそですとも♪」
 「んー……きまぐれ、デスか。」
 「熱くなりたいだけなんですってば。」
 
 応えつつ、丘はmp3プレイヤーのイヤホンを耳に突っ込む。
 くるくると目的の歌を探り当て、軽く首を上下させリズムを刻む。
 
 「花のように生きる、なんて、人間のやることじゃない♪」
 
 軽いステップで地を蹴りながら丘は言う。
 
 「自分の花を咲かせるために一生懸命になるってのは、自分以外見てないってことじゃありませんか。
  他人と触れ合ったら、絶対に憎んだり怒ったり喜んだり嬉しがったりするんだ。
  不可能なんです♪人間には脳みそがあるんですから。」
 「なるほど。」
 「その演説は長いんですの?」
 
 興味深そうに見る目と、またかとうんざりした目。
 丘は二人に、大げさに眉をひそめて見せた。
 
 「テレビのヒーローみたいに、怒りを爆発させてみたいだけなんです。
  カッコイイじゃないですか、あれ♪
  でも、どうもあそこまでドカーンと怒れないんですよねえ、僕。」
 「あなたがヒーローになれるなら、わたくしは今頃エルドランですわ。」
 「ご冗談を、悪の組織の女幹部なツラしてる癖して♪」
 「お前後で校舎裏来いよ。」
 「あわわわ。」
 
 睨み付ける目線に、舌を出して返す。
 
 「わたくしは人に仇なすゴーストを退治する為戦っているのですわ。
  わたくしの意思ではありますが、私怨では無い。どう思われようと構いはしませんけれど。」
 「いやあ、本気でうらやましいんですよ僕。
  僕には道義に反してるものに本気で怒るっていう感情回路が無いから。
  人を襲う楽しさを知っちゃったから、その手の怒りも湧かなくなったんですよねー。理解も出来るし。
  私怨ぐらいしか敵意がもてないんです。

  そうなると、『お前は間違ってる』と指差せて言えなくなったってのは、結構手持ち無沙汰でね。」

 「あの、夜も遅いデスシ、続きはまた明日ということデ、今日はお開きにしませんカ。」
 
 伸びそうだった議論に水を差されて二人がごめんなさいと彼女に軽く謝った。
 それぞれが、それではまた、と挨拶をして帰路に着く。
 
 
 
――――……聞け!哀れな死人。
 
 
 
――――僕の名前は筧次郎。
――――鬼を喰らい人を喰らう悪鬼であります。
――――なれば聞きなさい。
――――命を食う鬼が齧る音を。
――――なれば味わいなさい。
――――己の死の味を!
――――僕はただ怪異を滅ぼすためだけに切断する!
――――神を神話に!魔を地獄に!人外は塵に!
 
――――……されば!
 
 
 
――――我が名は筧小鳩。
――――我が主にして伴侶たる筧次郎に魂を捧げた悪魔!
――――なれば聞け!
――――主の道具たる我の鳴り響く音を!
――――なれば味わえ!
――――主の意志を代行するこの拳を
――――我らはただ世を人の手に取り戻すためだけに殴打する!
――――有り得ぬものを有り得ぬように、在るべきものを在るべきように!
 
――――……すなわち!
 
 
 
――――我は丘敬次郎。
――――今この時より貴様らの敵になるものなり。
――――死して尚つまらない貴様らに、真の死を与えようと思う。
――――死して尚残るお前らの深い情を、
――――僕の単なる気まぐれで断ち切ろうと思う。
 
――――……いざ尋常に、今、己らのくだらなさを知れ!
 
 
 
――――汝ら!今正に死すべし!!
 
 「ハッタリが、まだ少し甘いかな?」
 
 イヤホンからの曲に乗せてステップを踏む。
 踊り子のようにツーテールを揺らし、若きKAKEIの悪鬼は月の夜に歌った。
 
 
 以上。
 
 しかし、「この人と喧嘩する!」と決めないと、丘の独り言劇場になってしまうので、そろそろ覚悟決めてかっちり誰か借り受けないとなあ。
 
 →「 」
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