腹が減った…帰る

 「そうだな。お前は素晴らしい。
 
 いや、皮肉じゃないよ?
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 クラスSの死に心地をあなたに。2
 
 「若頭。おつとめご苦労様です。」
 
 年上の黒服に挨拶された丘・敬次郎。
 
 「気分イイ~~ッ♪」
 「調子乗るなよ。」
 
 先輩の言葉に丘は舌を出して返す。
 
 「わかってますよ。全部銀誓館のご加護だ。」
 「腹立つなあ。」
 
 能力者の力は、自身の属するコミュニティに大きく左右される。
 メガリスやその破壊効果、あるいはもっと別の要因によりそのコミュニティの力が決まり、
 それは、コミュニティ内の能力者の最低レベルと最高レベルをそれぞれ規定する。
 
 万人単位で能力者を抱える銀誓館は、間違いなく世界最強レベルの能力者コミュニティだ。
 
 そのため、銀誓館生徒である丘・敬次郎は、能力だけなら瑠璃の里の中でもきわめて突出している。
 敵対勢力の排除など、『力仕事』については、お屋形様を除けば右に出るものはいない。
 
 「銀誓館学園サマサマ、でございます♪」
 「ほんっと腹立つ。」
 「でも先輩は生まれが里なんでしょ?僕は拾われっ子ですからね。
  結果出さないと簡単に首切られちゃうから、必死なんですよ。」
 「あのお屋形様が、粛清するのに身内とかそうじゃないとか気にするかよ。」
 「気にしてると思いますけどねえ?
  その手の感情を気にしないで運営するぐらいなら、そもそもあの方は里長なんかやらずに全部自分でやってますよ。」
 
 そして、丘は白いバンに乗り込んでその場を後にした。
 
 呼ばれていた通り、丘・敬次郎は、若頭だ。
 今は下働きだが、いずれは里長になることが決まっている。
 よそものであるにも関わらず。
 若輩者であるにも関わらず。
 
 先輩達の不満は丘自身が一番感じている。
 銀誓館学園由来の比類なき膂力。文句を言わせないだけの力があるから、尚更面白くない。
 それもわかっている。
 
 自分だって銀誓館に派遣させてもらえれば、もっと力を持って、もっとがんばれる。
 なんであいつだけが。
 
 そう言った不穏分子も含めた軍団をいずれは統率しなければならないかと思うと、
 いくら丘と言えども、将来に不安を覚えてしまう。
 当代首領のように恐怖政治を引くだけの度胸もない。
 膂力で無理矢理従わせることは出来ても、自分には当代のような悪魔じみた迫力は無い。
 過度にストレスを与えても爆発されるだけだ。
 
 爆発されるということは、侮られているということだ。
 結束すれば倒される程度のモノだと。
 容易に想像がつく。
 
 いっそ舐められる頭首というのはどうだ。
 実力はそこそこで、お飾りでも構わない。
 元来組織というものは、首長の不在で機能が止まるようでは健全とは言えないのだ。
 俺がワンマンで好きなようにする組織ではなく、全員が瑠璃というマフィアとして動ければいい。
 最終目的はあるものの、今の瑠璃ですら、一つの志の元に集っているわけではないのだ。
 比類ない戦闘集団になるのがまずは当面の目標なのだし、そこには丘・敬次郎の個人的な意思など介在する余地は無い。
 いつもどおり笑顔でいればいい。
 自分は組織の象徴でありさえすれば。
 クーデターをする気も起こらないぐらい柔軟な姿勢で、かつ、そう簡単には殺されない膂力。
 平和的に、暴力組織をまとめる。つまるところ、俺は集う為の旗印であればいいのだから……。
 
 「着きました。」
 「……ここは?」
 
 バンが止まったのは、里の山ではなく、先ほど『清掃作業』を行ったのとは、違うが似ている街のビルの前。
 
 「追加のお仕事が入りまして。」
 「そうですか。」
 
 バンから降りると、丘のポケットの電話が震えた。
 二つ折りの携帯を開いて応じる。
 
 「はい丘です。
  お屋形様。お勤めご苦労様です。ごきげんうるわしゅう。
  ……はい。はい。……ああ、そういうことですか。
  ……仕方ありません。ご命令とあらば……。謹んで、お受け致します。」
 
 電話を畳み、ポケットに仕舞う。
 ビルに入った瞬間、複数の銃撃音が響いた。
 銃弾を受けた体を緊急イグニッションが修復する。
 倒れながら見えたのは。
 狙撃銃や水刃手裏剣を構える同僚、先輩の姿。
 
――――ああ、なるほど。
 
 灰色の巨大なツーテールが、大きくしなった。
 
 
 ---------------------------------------------
 
 「任務完了です。お屋形様。」
 『ご苦労様でした。』
 
 丘を囲んだ忍者達に課せられていた使命は、『丘・敬次郎の粛清』。
 理由は、『銀誓館の思想に当てられ、反乱を起こそうとしている為』。
 
 そんな事実は無い。丘には、お屋形様の命に逆らうという選択肢は無いのだから。
 だが、15歳の思春期の少年が跳ね返る、という情報は、それなりに信憑性のある話だったらしい。
 彼らは命令を承諾し、『清掃作業』直後で疲労の残る丘を迎え撃てるようそれなりの準備をした。
 
 一方、丘に電話で入った連絡は、『あなたに従いそうも無い奴等を集めたから、自分の手で始末してみろ』。
 始末すべき不穏分子は、丘を狙った側だったと言う訳だ。
 
 近代兵器の破壊力・水練忍者の能力の前に苦戦はした。
 だが勝ったのは丘だ。
 
 
 『銀誓館学園サマサマで、ございますね♪』
 「全くで。」
 
 若頭の前途は、多難である。
 
 安らかに、とは言わない。ただ、苦しまずに死ねていますように。
 不穏分子達の死体に、丘は少しだけ願った。
 
 
 
 
 
 以上。」
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