嗜虐主義者達の祭典

 「お願いします、豚のように鳴いてください。
 
 そしたら死んでください。お願いします。
 
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 日本一の餃子の店のラーメンは期待したほどではなかったな……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 絶頂タイランツ
 
 「思い切り殴って御覧なさい。」
 
 神は言った。
 否、間違えた。
 里長である筧・小鳩は言った。
 
 「これですか。」
 
 筧が目の前の少年に差したのは、直径3メートルはあろうかという岩であった。
 少年は長い髪をツーテールに束ね、首から上は女子のようにも見えたが、鍛えた肉体と胸板は明らかに男性のものである。
 彼の名は、丘・敬次郎という。
 その彼に向かって、灰色髪を同じくツーテールに束ねた里長の女が、思い切り殴れと命じた。岩を。
 女は、杖を突いてニコニコと笑っている。両手には、銀に輝くガントレット。
 これは装備ではなく、彼女の肉体そのものである、らしい。
 
 うなずく女に、少年は「イグニッション」の声で答えた。
 変身は黒いマオカラーコートと一本のダブルエッジナイフの装着にて完了。
 
 「アビリティの使用は。」
 「腕力のみで。
  強化は結構ですが。」
 
 言われ、少年は目を閉じ体に力を入れる。
 黒い蟲が彼の肌から染み出し、仄かに光って消えた。
 黒燐奏甲と呼ばれる術。肉体に飼った無数の蟲の力を借り、魔・理・膂の力を増加させる業。
 
 少年は腰を落とし、呼吸を整え慎重に構えを取った。
 長い間里長に叩き込まれた、戦い方。こんなところでトチったらどんな懲罰が待っているやらわからないから。慎重に。
 足から腰へ、腰から胸へ、胸から腕へのエネルギーの流れをイメージし、集中する。
 こんなところで、動かない標的相手に、型が崩れたなんてヘマは許されない。
 
 息を吸って、吐いて。吸う。
 
 鈍い音がして、少年の拳が岩にめり込んだ。
 拳の当たった場所を中心にして、小さなクレーターが出来ている。
 常人ではありえぬ破壊力。
 しかし、彼は渋い顔で、里長に一礼した。
 
 「この程度でございます。」
 
 返事が無い。
 数秒下げていた頭をようやく上げたときに見たのは、微笑む里長の顔。
 
 「一年前の貴方で、ここまでできましたか。」
 「いえ。」
 「ならばよいのです。」
 
 怪訝な顔をする丘に、小鳩は続ける。
 
 「伸びしろが、あなたにはある。
  もっと自信を持ってよい。
  もう一年後には、もっとあなたは強く恐ろしいものになっている。」
 
 そう言って、彼女は腕を無造作に振った。
 爆発音と金属の衝突音が同時に響く。
 岩の一部がえぐれて抜け落ちていた。
 痕跡は彼女の腕の軌道を正確に刻んでおり、削り落とされた岩の破片が丘の足元に突き刺さっている。
 その様を、眼を見開いて、丘は見ている。
 
 「わたくしは、生まれたときからバケモノではありますが。
  しかし、生まれたときからこうだったわけではありませぬ。
  わたくしには、伸びしろが異常にあったのです。
  人間の物理的な限界など軽く超えるほどに。魔属ですから。
 
  この世で最も巨大な魔の組織、銀誓館に属するあなたならきっと。
  わたくしなど超えてしまえますよ。しまってくださいよ。そして。
  それを証明してくださいませ。」
 「……。」
 
 
 丘は応える言葉を持たなかった。彼女は彼の主だったから。
 
 彼女が繰り替えさえ酔うとしているのは
 かつての彼女の主人の命令。
 
 『自分を殺して強さを示せ。』最低でも自分より強く無ければ、魔の王にはなりえないから。
 
 「さあ、わたくしももっと鍛えなくては♪
  そう簡単に追いつかれてはいけませぬしね♪」
 「お屋形様」
 「何です?」
 
 満足そうな顔で立ち去りゆく里長に、丘が声をかけた。
 
 「お屋形様は……。」
 「あなたは自信を失う必要は無い、ということです。あなたはバケモノなのですから。
  あなたは心配する必要は無い、ということです。わたくしもまた、バケモノなのですから。」
 
 そして、彼女は去った。
 
 それは丘が解体用に45人目の少女をかどわかしたときのことだった。
 
 迷っていたように見えたか。この僕が。
 迷うなといわれたわけか。この僕が。
 
 丘・敬次郎の至上命令は、「ハッピーエンドに立ち会え」。
 
 さあ。未来のために。
 
 
 以上。」

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