メッセンジャーがまるで通じませんでした。

 「表題の通り。
 
 2009にしたら死んだ。
 
 さて。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 価値
 
――――世界結界の破壊の果てに。
――――人が紀元前から作り上げてきた科学と文明が、銀の雨と怪異によって支えられていたことが完全に確実に判明した暁には。
――――この瑠璃は、この世界そのものを否定し、この世界における地球を、いかなる手段を以ってしても破壊する。
――――そして、科学による文化文明が確かに歴史を築いたと信じられる世界に、転生する。
 
 ああ、初めから全て間違っていたのだ。
 わたくしは、世界結界の意味を承知した上で、丘を投入したつもりだった。
 浅はかだった。
 一年半以上もかかって、ようやく、「この世界の人間は、『そもそも人間じゃない』」と気づくなんて。
 ああ。
 ああ。ああ。ああ。
 
 
―――――
 
 「これは、手合わせ、でよろしいんですか?」
 
 既にイグニッションを完了した丘が、灰色髪の首領と向かい合わせに立っている。
 
 「ええ、思い切り、どうぞ。」
 
 灰色髪のツーテール少女。
 それが、この忍者の里、瑠璃の長の姿。
 両手に銀色のガントレット、丸レンズのサングラスに羽織とスカートという不思議な取り合わせ。
 
 だが、丘だけが知っている。
 この衣装こそが、本当の、本物の筧・小鳩。悪魔、鳩の姿。
 
 「……どうしました?
  機先を制する気は無いのですか。」
 「本気のお屋形様に機先も何も、僕如きでは……。」
 「無理だと言うだけでは何も始まりませんよ、丘。」
 「お屋形様は、僕を殺すおつもりなんですか?」
 
 里の裏手の広場。適度に雑草の生えた、田舎らしい土で出来ている。
 配下の忍者達は部屋に篭もったり山に登ったりと、仕事や修行の最中。
 この場には、彼と彼女二人だけ。
 人形とその操り手、二体だけ。
 
 「……丘。
  わたくしは、先日のコルシカ島の戦役をつぶさに見ていました。
  その中で、己自身が書物の形をした吸血鬼が居たでしょう。」
 「……居ましたね。」
 
 人狼と原初の吸血鬼の抗争。
 銀誓館は、両勢力の企みを諸共に止めるべく、闘いに介入した。
 原初の吸血鬼の中のある一人は、饒舌に語りながら銀誓館の生徒と戦った。
 その名も、闇の歴史書ヒューベリック。
 丘の顔が曇る。
 書物のように己の体を開いたこの男が口にしたのは……。
 
 「『分かっているのかね? 君達が知っている歴史はすべて偽りに過ぎないという事を!』
  ……彼らは、世界結界の発生以前の世界を知っている。
  世界結界は、13世紀から14世紀にかけて作られたと言われています。
  それ以前は、様々な神秘や魔力に満ち、遍く人間が能力者だった。」
 「……。」
 
 もう、丘にはわかってしまった。
 彼女が何を言いたがっているのか。
 
 「そんな歴史は、人類史上には残っていないのに、です。
  あらゆる物証は全く確認されていないのに、です。
  これは、わたくしどもがわたくしどもの世界で味わった理不尽と裏切りに極めて近い。」
 「……しかし……!」
 「そう。
  わたくしは愚かにも、この事実を軽視していた。
  『人間はそもそもが能力者である』という一面を失念していた。
  人類が科学と探求によって歴史を紡いできた、という信仰は、初めから。
  その拠り所が存在していなかった。
  それに気づかず、わたくしはあなたをここに作り出してしまった。
 「……。」
 
 丘も薄々、気づいてはいた。
 この戦役の一年以上前に、とある貴種ヴァンパイアの少年が「世界結界が無ければ人類は皆、能力者であったのに。」
 と発言したのを知っている。
 その時からずっと、しこりが残っている。
 
 「でも、この世界の人類は、守るに値しなかった。
  皆バケモノだ。無自覚なバケモノだ。
  命を賭ける価値も無い。
  まして、『千年以上も人類が魔術や神秘を使ってきたのにその証拠がほとんどない』だなんて、
  そんな『無茶な世界』に付き合うのも馬鹿げている。
  付き合おうと思ったこと自体が馬鹿げている。
  何よりも一年以上気づかなかったわたくし自身が、滑稽に過ぎます。
  ……地球破壊爆弾でもあれば、全部ぶち壊していくんですがね。」
 「……ズレたことをおっしゃる。」
 
 丘が、ベロリと舌を出した。
 
 「僕らはバケモノでヤクザです。
  人間は食べ物。狩って搾って食べるものです。
  守るだなんて、とんでもない♪」
 
 明らかな反逆の言葉に、しかし鳩は微かに笑んだ。
 
 「どんな経緯があろうと、今の人類は科学に根ざして生きる、無力な存在です。
  まさか、そこまで否定はしないでしょう?
  でなければ、こんな機会など設けず、僕を凍らせて終わらせていたはずだ。
  本当にその気なら、『あなたの中にあるあなたのシルバーレインは、あなた自身が終わらせている』。
  違います?」
 「うふふ……。
  禊のようなものですよ。
  或いは、対外的な挨拶、かな?
  『あなたが目的を失って銀誓館学園での活動を完全に停止した』ということを、
  わたくしには、他の神々に公開する義務がある。
  だから、あなたは、今ここでわたくしに殺されて終わります。」
 「あはははははは……。
  僕みたいなものを学園に送り込んでおいて、
  今更対外も何も無いでしょう?
  何より、僕は僕として此処に生まれ落ちてしまった。
  その事実は、もう覆せない。
  二年近くの柵(しがらみ)を、最早無かったことにはできない。
  死ぬわけには、行きませんねぇ!」
 「ならば勝ち取れ、己の生を!」
 
 鳩が羽織から投げナイフを取り出すと、超音速で投げる。
 銀色のレーザービームを何本も胸に受け、しかし丘は舌を出す。
 
 「ははははは、
  何を言おうと!」
 
 丘は、身の丈もあるような水で出来た刃を投擲する。
 鳩のわき腹を掠め、衣服を破る。
 
 「あなたほどの方が、わざわざ『ぶっ殺す』などと宣言した時点で、
  『本当は殺したくない』と言っているのと同じですよ!」
 
 これはただの暇つぶしだ。
 自分にとっても里長にとっても。
 
 戦意はあっても殺意に遠い。
 俺も死にたくないし、里長も殺すほどの気持ちが無い。
 
 なら、俺が勝つに決まっている。
 お屋形様にできるのは、せいぜい俺をどれだけ苦戦させられるか?
 
 そう。それはまさに、暇つぶしだ。
 
 「ハッピーエンドを齎せとか命じておいて。
  今更イモを引くとかありえませんよ!」
 「ですよねえ、でも死ね!」
 
 
  以上。」
 
  
 
 
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メッセンジャーがまるで通じませんでした。 への4件のフィードバック

  1. トオル より:

    メッセスレに修正ファイルのURLがあった気がする

  2. きうい より:

    ありがとうございます。どちら様でしょうか。

  3. トオル より:

    名乗るほどのくノ一じゃないでさあ

  4. きうい より:

    くのいちはあく

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