全てはこの一撃の為に

 「糞が!
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 ……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 倒れろ倒れろ倒れろ
 
 「かっはっ……はっ、はっ……。」
 
 ピジョン・ブラッドの服は銃弾と爆風を浴び、もう襤褸切れになってしまっている。
 
 「ひぃ、ひぃ、ひっひっひぃ……ふう、ふう……。」
 
 丘・敬次郎は片足を引きずり、顔を引きつらせながら笑う。指が折れた左手が震えている。
 
 「ウォーミングアップ、ですカ?これが……?」
 「冗談ではありません……。まだまだですわ。」
 
 龍臥崎・まきなの声にピジョンは強く応える。
 冗談ではない。
 能力を継承し、力に磨きをかけ、結社長として君臨しているこのわたくしが。
 
 「おい、いい加減にしねえとコトの前に潰れちまうぞー?」
 「それは……向こうに行ってくださいよ。」
 
 植松・弾の言葉に、丘は笑って応える。
 ふざけるんじゃない。
 この俺は神の化身だぞ。
 世界を否定する為に生み出された極北中の極北。
 たかだか能力者ごときに倒されるようでは話にならない。
 
 「わたし、先に行っても構わないかな?」
 「一応、待ちまショウ……。」
 
 呆れて溜息を吐く滝沢・玲魅を、まきながたしなめる。
 
 「ピジョン様ー。
  お気持ちは重々承知ですが、
  ここで僕かあなたが倒れたら、何の為にこのメンツで来たかわからないんですけど。」
 「倒れるのはあなたですわ。断じてわたくしではない。」
 「でもそれは今じゃ無い。
  アレをくたばらせてから存分にやりましょうよ、カス。」
 「……ちっ。確かにわたくしとしたことが熱くなっていました。
  一理は認めてあげますわ、塵。」
 
 一応の終戦に、弾、まきな、玲魅が、やっとか、と長い息をつく。
 
 ピジョンも丘も、互いを矮小だと思っている。
 だから、やり始めたら徹底的な殺し合いになってしまう。
 圧倒的に踏み潰せなければ、「相手が塵でもカスでもない」と認めることになるから。
 それだけは、絶対に譲れない。
 
 丘にとってピジョンは、唯一「会話すら交わせない」能力者だ。
 明確な敵意を持っている滝沢とですら、丘はまだ会話が可能だが、
 ピジョンだけは、ダメなのだ。
 
 「では、作戦概要をお願いしマス。」
 
 息を荒げる二人のツーテールをまきなが両肩で支えた。
 
 「ふう、ふう……。
  あれを、殺します。
  我等の持つあしきゆめ、よきゆめ全てをかけて。」
 
 あれ、と指差した先には、目に見える空間の歪。其処から降る詠唱銀の驟雨。
 
 「この世界から、ゴーストや能力者の災厄が消えてなくなるように。」
 丘は折れた指を畳んで拳を固め。
 
 「この地上から、人を脅かすものが一つでも多く消えるように。」
 ピジョンは破れに破れた装備を一旦イグニッションカードに返し。
 
 「力無きものの防人であるために。」
 弾はカードを千切り、
 
 「世界を守るために、デス。」
 まきなはカードを掲げ。
 
 「イグニッショーーーーン!!」
 滝沢が吼えた。
 
――――それは、神域へ至る呪文。
――――己を作り出したものへの数少ないアクセス。
 
 「白目剥くほどステキな苦痛、やめてあげなぁい♪」
 
 丘・敬次郎の肉体が変わっていく。
 二枚取り出したイグニッッションカードは、どちらもロングコートに金糸の文字が書かれていた。
 黒いコートには金糸で『筧』、
 白いコートには金糸で『鳩』。
 
 混ざり合った果てに、詠唱防具は、白のスラックスに、黒のゴスロリ上着と相成った。
 銀に覆われた両腕で巨大な空竿を掲げる一方、
 脇腹から新たに生えた二本の腕は、空の手を前に向ける。
 ツーテールの片方は灰色に染まり、『神』を下ろす。
 足先は甲虫の如く鉤爪状になり地面を捉え、頭からは二本の長く鋭利な触角が生えた。
 速さと力と兵器の渾然一体。水練忍者、『ゴキブリ』。
 
 
 「我が志よ、姿を現せ!」
 
 ピジョン・ブラッドの周囲に激しい風が渦巻く。
 背中から猛禽のような羽根が生え、宙に浮く。
 風に翻る真紅のスカートはより長く大きくなり、
 反対に、上半身は露になり、紅くぴちりと包まれる。
 両腕のブレードは肉体と一体化し、膝のように折りたたまれた。
 エアシューズは地面を捕らえ、しかし詠唱動力炉の唸りを止めない。
 勁の一撃の為の踏み込みに耐え、しかしその軽やかさをも失わない。
 月のエアライダー、『一暴殲勁(いちぼうせんけい)』。
 
 
 「わたしの番ですネ。」
 
 龍臥崎・まきなの肉体が激しい動悸に襲われる。
 忌み名に秘められた、鬼。
 まっすぐに修行してきた中国武術。
 彼女の変貌は、見た目には極小さい。
 ……見た目には。
 内部の筋肉が、龍のように引き締まり、龍のようにしなやかになっていく。
 痛みすら覚える速度で、龍臥崎の筋繊維が新生を行っている。
 頭には二つの角が生え、両手両足には鋭い爪が伸びた。
 外見の変化は小さいが、その分、今までと同じ戦い方を壊さないまま、数段上の破壊力を発揮できる。
 龍にして鬼なる水練忍者、『黄道の龍』。
 
 
 「敬人尊野蛮!」
 
 叫んだ植松の体が超高密度の筋肉に置き換わる。
 湧き上がるような充足感。
 両手のスパナが鋭利に尖る。禍々しいほどに。
 白い特攻服の背中には、先ほど叫んだ『敬人尊野蛮』の文字が光る。
 下ろした金髪が逆立ちうねる。
 骨が伸び、肉が増え。遂にはその肉体の大きさは倍になった。
 力を持って力を制するゾンビハンター、『滅死咆哮』。
 
 
 「おうおう、皆随分と派手になっちまったなあ!」
 
 滝沢の脳裏に浮かぶのは、能力者に覚醒したあの時。
 暴走賊の仲間がゴーストに襲われ次々と死んでいく光景。
 能力に目覚め仇は殺ったものの、死んだ命は戻ってこない。
 悲しみ。怒り。それでも前に進もうとする決意。
 自分自身に力が無ければ、何も語れないという事実への苛立ち。
 それが今、形になる。
 両腕の六気筒エンジンが全速力で回転し、それを支える背中、腿、ふくらはぎにも綿密な機構が備わる。
 拳が全力で握れるように内側は柔らかい素材で包み込まれ、外側はこれ以上ないほどの硬さの鋼が覆っている。

 全ては、最大出力を支える為に。

 気づけば、その両脚は左右を支える足ではなく、前後に配置されたタイヤになっていた。
 地上戦特化でありながら、飛ぶが如き速さ。『ハヤブサ』。
 
 
 彼らは彼らであって彼らではない。
 彼らを構築する何者かだ。
 
 しかし彼らは行くだろう。
 彼らが『銀誓館の生徒』である限り。
 全てを怪異を滅ぼすことに、何の疑問も抱くまい。
 
 劃して、5の異形は飛ぶ。
 この世の全ての理不尽を、殲滅する為に。
 
 
 以上。
 
 追記:読み直してみました……。
 
 酔っ払って書くととんでもないね。
 
 
 ……。丘を書き始めてから、急速にモチベーションと描写力が落ちた気がします……。
 
 主……。」

 
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