翼の生えた人間

 「お前にはこの世界の全てが似合わないから。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 飛び立つな
 
 「……。」
 
 説明を、しておく。
 
 銀誓館学園高校二年生である丘・敬次郎は、
 奈良のとある山里から派遣された忍者である。
 
 決して他者に胸を張れるような生き方をしていない彼は、神によって作り出された。
 一神教の神ではなく、数多いる超越者の一柱に。
 その、自分を生み出した神が、燃えている。
 
 心理的に高揚している、という意味ではなく、物理的に燃えているのだ。
 
 灰色髪のツーテールを振り回すその女神は、「鳩」または「筧・小鳩」と呼ばれた。
 
 地獄の底の様な叫び声を上げながらも原型は留めつつ、しかし体表はタールのようにただれ黒光りしている。
 
 その粘液はよく見れば、幾つもの人の顔の形をしていた。
 溶けた彼女の身体から闇が噴出し流れている。
 
 異常なのか正常なのか、瀕死なのか無傷なのかわからない。
 
 何しろ彼女は設定上「デビル」なのだ。
 熱も冷気も窒息すらも、彼女には全くダメージを与えることが出来ない。
 そういうモノだから。
 
 だから、何が起こっても不思議ではない。
 だから、彼女に起こるすべてが不可思議だ。
 
 やがて溶けたタールが固まり始めると、炎の勢いも弱まった。
 肌は元の白磁のような色に戻り、骨格さえ怪しかった腕は以前のように銀のガントレットに包まれている。
 
 すっかりと炎が消えた時には、いつもどおりに微笑む『お屋形様』、「鳩」の姿があった。
 
 「ただいま、還って参りました。」
 「お帰りなさいませ。」
 
 敬次郎は言葉の意味も理解できぬままに跪く。
 
 「んふ♪」
 
 『お屋形様』が深く笑むと、その背に鳥のような翼が広がった。
 片翼の長さは約3m。両翼と胴体で、彼女の横幅は7m近くにまでなった。
 
 「それは……。」
 「うふふふふ……。」
 
 『お屋形様』はその銀の手に煮えたぎる闇の塊を握っていた。
 力を込めて握りつぶすと、地が裂け、叫びと共に黒い液体が吹き上がる。
 
 「あなたは。」
 「ええ、もう、レプリカントである必要を感じなくなったので♪」
 
 翼は消え、闇の液体も姿を消した。
 しかし。
 
 しかし。
 
 異常。」
 
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