daisuki!

 「お前敵キャラだろ?
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 化物どもの愛
 
 「今晩は♪」
 「またお前か。」
 
 窓からの訪問者に、滝沢・玲魅は何度目と知れない溜息をついた。
 今日も丘・敬次郎は、コンビニのレジ袋を掲げてニコニコと笑っている。
 
――――
 
 「信じようと信じまいとって話ですが、僕の里のお屋形様は、
 「へえ……?
  ……ああ、降魔の剣って訳か!
  てめぇ、人の作った結社にケチつけやがって!」
 「ケチつけてないですよ!」
 「お前が口にするだけでケチがつくんだよ!」
 
 菓子を取り合いながら、二人は話をする。
 玲魅は銀誓館学園の卒業生であり、敬次郎は学園の高等部2年生。
 世代は2つしか違わないのだから、先輩後輩として仲がいいのは他人から見れば自然な話だ。
 彼らが不倶戴天の敵同士であることなど、誰が思い至ろうか。
 
 「卒業してから何してるんです?」
 「お前らを倒す算段。」
 「働けよ……。」
 「バイトはしてるよ!うるせえな!何だその可哀想な奴を見る目は!」
 
 丘・敬次郎は忍者の里の生まれであり、里の一員として忠実に働いている。
 忍者である、ということは、あらゆる悪事に手を染めると言うことだ。
 文書偽造、窃盗強盗、誘拐殺人、恐喝、潜入。
 必要とあらば最も効率のよい手段を迷い無く行う。
 それが忍者の――――少なくとも、丘の住まう里『瑠璃』の――――鉄則だ。
 玲魅は敬次郎のそういった数多の企みの内一つに謀らずもかかわり、手痛い反撃と引き換えに犯罪を食い止めた。
 要するに二人はそういう仲なのだ。
 
 「ちょっと立ってみてください。」
 「ん?」
 
 敬次郎が立ち上がると、玲魅も続いて立ち上がる。
 
 「ん~~~♪」
 「撫でるな!」
 
 玲魅が丘の手を振り払う。
 玲魅は19歳であるが、身長は140cmに僅か及ばない。160cm強の敬次郎も決して背が高い方ではないが、相対的にも十分「小さい」と言えた。
 
 「僕、ちっさい女の子大好きなんですよ♪」
 「ちっさいとか言うな!」
 「かわいい!」
 「やかましい!全っ然嬉しくないわ!!」
 
 敬次郎は筋金入りのロリコンである。
 正確に言うならば、幼さの残る外見を非常に愛する。
 外見さえ幼いのならば年上だろうが年下だろうが構いはしない。
 
 「どうしたら嬉しがってくれるんですか?」
 「何それ?口説いてんのか?」
 「なびかないのは百も承知で、照れるところが見たい。」
 「ばかたれぇ!」
 
 ああしかし、女は生まれた時から女なのだ。
 男は生まれた時はただの子供だけれど。
 男が憧れ求める、かわいく幼く純情な乙女など、やはりただの憧れで。
 
 「嫌いな相手に何を言われても虫唾が走るだけだ!」
 
 へえ、と笑った敬次郎はそっと身をかがめて耳元に「好きです」と囁いた。
 
 「ぎゃあ!」
 「ぎゃあですか。」
 
 飛びずさる玲魅に敬次郎は肩を竦めて見せた。
 間違いない。本気で気持ち悪いと思っている顔だ。
 ちょっぴり残念と思いつつも、敬次郎は玲魅が耳をがりがり掻き毟る様を眺める。
 小さい女性を見下ろすのは、丘にとってはそれだけで眼福である。
 
 「キモイ!キモ過ぎる!」
 「キモイという日本語は僕あんまり好きじゃないですねえ。
  気持ち悪いとちゃんと述べ立てていただきたい。」
 「死に晒せ!」
 「殺した後でね♪」
 
 誰が誰を、は言わずもがな。
 彼『ら』が「人類に対しての侮辱」と捉えている、「ポッと出の怪異たち全て」。
 能力者、来訪者、ゴースト。その全てだ。
 
 「ではまた♪」
 「もう来るな!!」
 
 窓から飛び降りる影に、玲魅は憎悪を込めて叫んだ。
 直後、一斉に周りの家の明かりがついてちょっとビビった。
 
~~~~~
 
 「へぇ、滝沢玲魅さん。」
 「ええ。まあ、ある程度距離は当然とってますけども。」
 
 瑠璃の夜は終わらない。
 仕事のため、敬次郎は寮の自分の部屋ではなく、玲魅の家からまっすぐ里に向かっていた。
 仕事までのちょっとした空き時間に、敬次郎はヒトと会っていた。
 瑠璃の武術師範、二つ名『先生』、或いは『悪鬼』、或いは『瑠璃最狂の掃除屋』、筧・次郎。
 一人で仕事をするために里には所属せず、普段は里と関係ないところで人に言えない仕事をしている。
 
 「好みでいらっしゃる?」
 「一番ってわけじゃありませんが、なかなか。」
 「あなたも随分と気が多いですな♪」
 「銀誓館はかわいい女の子が多いですから♪」
 
 ふ、と次郎の顔色が変わる。
 
 「女の子?」
 「はい?」
 「あれは女の子じゃありませんよ。
  ただのケダモノ、バケモノだ。
  抱いていい感情は、小動物に対する愛情程度。良くても愛欲。
  それ以上は、背信です。」
 
 人間への。
 
 『先生』は笑顔のままではあったが、敬次郎はその冷たさに凍りついたように動けなくなった。
 
 「あなたまさか、ケダモノと愛し合おうなんて思っちゃいないでしょうね?」
 「……。」
 「愛してもいいし好きになってもいいが。
  恋をするようでは、バケモノすらも失格です。
  いいですか?奴らは自分がバケモノだという自覚も持っていない、クズどもなのですから。
  心を奪うことはあっても心奪われるなど、僕なら願い下げだ。首を吊った方がマシですよ♪
 
 自らをバケモノだと知っている我々だけが、人の尊さを知っている。
 『彼ら』の殆どは、己の異常性に気づいていない。
 彼らは、己の存在が如何に人類の歴史の根幹を揺るがすかわかっていない。
 彼らと我等は人類のために死ぬべきだ。
 我等が生きているのはただ、彼らが「死にたい」と願わないからというだけ。
 彼らが望んで人類社会から消え去ってくれるなら、わざわざ殲滅など目標にする理由はないのだから。
 
 「……。」
 「ヒトが愚かだと断じていいのは、ヒトだけだ。
  エイリアンに、ヒトを語らせなどしない。決して。
  でしょう?」
 「……。ご不浄に、行って参ります。」
 「どうぞ、未熟者♪」
 
 丘は走った。
 ああ、確かにアイツは『瑠璃最狂の掃除屋』だ。
 ヒトへの狂信に染まりきっちまってる。
 俺は、『それ』から生まれた。
 彼に、正しくは、彼のコピー元である存在に忠誠を誓った、とある魔族。
 それがコンピュータの上に構築した自分とその主のコピー。
 即ち、『師匠:筧・次郎』と『里長:筧・小鳩』。
 俺は、里長である筧・小鳩が『シルバーレイン』というゲームの上に作ったキャラクター。
 ゲームの上に作られたキャラクターが文章で綴った存在が作り出した『真なる造物主』の孫。
 『真なる願い』をかなえるためだけの、人形の人形の人形。
 
 丘は走った。
 俺は恋をしている。
 恋をしているんだ。
 
 俺は何故、恋をさせられているんだ?
 
 滝沢・玲魅をからかうのが楽しいのは本当だ。『  ・   』に恋をしているのも本当。
 その他諸々のかわいい男女を愛らしく感じているのも本当だ。
 でもコレは。コレハ。俺はなんで未熟者なんだ。
 俺は何の為に生まれて。
 何で俺は。
 
――――いいですか?奴らは自分がバケモノだという自覚も持っていない、クズどもなのですから。
 
 ああ、それは神の言葉。
 何よりも優先して信じ殉じます。
 
 しかし、しかし。
 
 
 丘は、走った。
 
 以上。」
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