僕は僕のヒーローであるように

 「自省をしない態度が嫌いなだけだ。
 
 そして、それだけで、殺すには十分。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 誇りは自前でご用意下さい
 
――――ときは はやく すぎる
――――ひかる ほしは きえる
――――だから きみは いくんだ ほほえんで
――――そうだ うれしいんだ 生きる よろこび
――――たとえ どんなてきが あいてでも……
 
――――アンパンマンのマーチ
 
 「忍者ってのは、ね。」
 
 丘は、ナイフを仕舞い、服の中から忍者刀を引き出した。
 
 「生きることを強く求められる。
  『死ぬぐらいなら裏切れ』と、何度も何度も言われてきましたよ。」
 
 丘・敬次郎、水練忍者。幾度目かの戦役にて。
 その言葉は、誰に向けられたものともわからない。
 
 「でも、それは『命を捨てるな』って事じゃあない。
  死んだら役に立たなくなるからできるだけ生きていろって事です。
  自分の命に執着することとは決定的に違う。」
 
 切っ先を向ける。
 ここは戦場の外に向かう道。
 
 筧次郎を迎え撃つ道。
 
 前に見えるは、ただ黒い闇の塊。
 残留思念が固まりすぎて訳の分からなくなったゴースト。
 或いは、世界結界が押し潰し続けて出来た澱。
 
 そうだ。俺は。
 
 「任務を最優先に生きろ、ということ。」
 
 悪よ此処にあれ。正義の眩しさを知らしめる為に。
 俺はそれでいい。俺は悪でいい。悪でなければ生きられない。
 
 だから。
 
 「結局、何も定まらなかったな……。」
 
 丘は、自嘲した。
 忍者としての誇りのため?違う。
 愛する者のため?違う。 
 自分の欲望を満たす為?……多分、違う。
 
 何も、定まりはしなかった。
 忍者として溝と闇の中を生きるのには、未だ慣れていない。
 愛する者がいくら死のうが、怒る自分など想像できない。
 欲望の通りに生きてきたなら、そもそも自分に『忍者たれ』などと言い聞かせなかっただろう。
 
 俺には、大切なものなどなかった。
 好きなものはあっても、守るべきものなどない。
 その場のノリでテンションを上げて、最も効率の良い悪を遂行する人形。
 それ以上でもそれ以下でもない。
 
 善悪どころか、己の正義すらもふらついたままで。
 守りたいものなど何一つなく。
 それでいて、英雄になりたいと、また、極上の忍者になりたいと、或いは最強の悪になりたいと、仄かに願った。
 
 何を思っても、するべきことはいつも一つしか定まらない。
 敵を打ち倒すこと。
 考える余裕の少ないこの日本のゴースト事情は、ある意味で丘の救いとも言えた。
 
 結局、最後まで。
 誰と戦い、何に勝つか。
 それは定まることはなかった。
 
 「……死ね。お師匠殿。」
 
 考える余裕の少ない、この日本のゴースト事情は、丘の救いとも言えた。

  

 敵は実に明白で、多数派と言う名の正義も明白。
 
 自分だけが知る強大な神が、正義を殺しにやってくる。
 ならば。するべき意思は定まらずとも、するべきことは決まっているではないか。
 
 胸には、チェーンソー剣のイグニッションカード。
 己の力とともに継承するための、ささやかな恋の証。
 
 結局、何も定まらなかった。
 正義のヒーローを貫くことも、悪の権化として生きることも、愛に殉じる戦士にすらもなれなかった。
 
 凡百な英雄の一人。
 
 ああ、そうか。
 
 そのように。名も知られずに死ぬのが。
 
 
 
 正に俺に。似合いなのだ。
 
 
 「イグニッション。」
 
 
 以上。」
 
 以上。」
 
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