人生美味礼賛っていう歌が凄くいいのっていう話

 「
  「犯罪を犯して何が悪い!」
  「態度。」
 
 正義は即ち集団潜在意識なり。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン
 
 我の肝は何時腑分けせん
 
 「片付けておくように!」
 
 部下にそう命ずると、丘・敬次郎は血の匂いの満ちる室内から歩み出た。
 
 少し前までは『年下だから』『少しでも謙虚な印象を』と抗争の後始末も積極的に手伝っていたが、
 最近は部下に強く命ずることの方が多くなった。
 
 どんなに謙虚に見せようとも、若輩者が上に立つことに不満を持つものは必ずいること、
 頭を下げる余り威厳のない頭領に成り下がることを警戒した結果だ。
 
 銀誓館学園という、超巨大コミュニティに属する限り、丘の最強は揺るがない。
 当代のお屋形様は別格としても、近い将来自分がこの忍者の里『瑠璃』を統括することになるのは間違いが無い。
 
 部下達が自分に不満を持つことが分かりきっている。
 それならば、それすらも呑み込んで厳格に命令する者でなければ、侮られるばかり。
 
 お屋形様の犬として仕えて来た自分には多少無理があるし、まだ何とも言えない罪悪感があるが、それでも丘はそれを自分のタスクとして課し、実行している。
 
 
 「……。」
 
 携帯ミュージックプレイヤーのスイッチを入れる。
 このような抗争は、丘にとっては単にストレスばかり溜まるものに過ぎない。
 
 人体の中身を見ることに至上の喜びを見出し、性的に強烈なエクスタシーを得られる。
 与えられた任務を冷徹に完遂することに誇りを持っている。
 
 それでも、『争い』を丘は好まない。
 
 「……。」
 
 音量を上げる。
 曲は勇ましいアニメソング。
 こういう曲を聴くたびに、正々堂々と命と尊厳を賭して戦うヒーローになることを夢想する。
 
 でも自分は違うのだ。
 
 己を解放できるほど激情に身を任せられない。
 殴り合い、痛みを与え合うことに快楽を感じられない。
 生来、怒りが暴力に直結しない。
 痛い目を見るのは嫌だ、一方的に惨殺せしめずして何の忍者か。
 
 自分にあるのはただ任務に対する義務感と、肉体を弄び覗き込む陰鬱な快楽だけ。
 
 部下が建物から遺体を担ぎ出してきた。
 乗り付けたバンに乗せる前に、丘に「お先に参ります」と挨拶する。丘は手を上げて返した。
 
 焦燥。
 
 俺はヒーローになりたい。
 でも俺は、正々堂々と戦ったら『俺じゃなくなってしまう』。
 そんなガラでもない。
 
 熱くなりたい。
 
 思うに、人には生まれつき、心の温度に閾値があるのだ。
 辺りを焼き尽くすまで怒れる者と、
 焼ける苦しみに耐え切れず憎悪に変換し内に押さえ込んでしまう者と。
 
 自分は明らかに後者だ。
 務めも勤めも生来も、どれも影に生きるに適した作りをしている。しているはずなのだ。
 それでも、熱い人間をうらやむ気持ちが止まらない。
 
 里の師範は清掃を生業とする。
 『殺して、「お前は弱いのだ、油断していたのだ」と見せ付けてやることが何よりも楽しいのです。』
 里のお屋形様は師範の右腕だった。
 『仕える事がわたくしに許されたただ一つの喜び。人の死など感傷に値しませんし実際に何も感じません。』
 
 丘は確かに里では最強だ。
 しかし銀誓館内では凡人と言わざるを得ない。
 彼はお屋形様より、どれほど時間がかかっても良いから彼らを凌駕するように、否定し殺戮し後も残さぬようにと命を受けている。
 丘も異論はない。異常で異状たる能力者の存在という事象を否定し消し去る。
 それは師範、お屋形様、そしてその狗たる丘・敬次郎の唯一絶対とも言っていい願いだ。
 
 異能への嫌悪は変わらない。
 人体への愛欲も変わらない。
 ドス黒い自分が好きだ。
 先ほどの抗争だって、圧倒的な能力者の力で人間を肉塊に変えた瞬間には背筋に甘いものが走った。
 
 そこまで承知しているのに、どうにも銀誓館の戦争狂たちの熱が、丘を惹き付ける。
 
 「……。」
 
 丘の哲学は、『欲求を最も合理的に満たすこと』。
 熱い者になる、それが最も簡単で、まっすぐに欲を満たす方法には違いがない。
 
 そうするべきだと囁く自分は、そうすることによって失われる全ての暗黒が押し殺している。
 
 丘・敬次郎16歳。
 清濁併せ呑むには、まだ若すぎる。
 
 以上。」
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