捕食者の道理

 「黙るな。喋るな。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 鳩がシルバーレインをプレイしているのか、鳩の妄想の中にいる鳩のようなものがプレイしているのか、わからなくなってしまいました……。が。
 
 ……思い出しました……。鳩がプレイをしています……。
 
 妄想シルバーレイン
 
 過去は過ぎ去らず、未来は既に来たりて
 
 銀の篭手に覆われた手を見る。
 ブロックノイズが景色に割り込み、普通の人間の手と重なった。
 
 「二年……か。」
 
 一つの口から出た声は、少女と少年の、二つの声だった。
 
 
――――
 
 「……ありがとうございます、丘先輩。」
 
 奇妙な趣味をした後輩に、丘は苦笑して手を振った。
 多少得た経験と、この学園の歪さを口伝しただけ。
 他人に教えるというのは酷く優越感を刺激するものだが、忍者としての自重がそれを自嘲した。
 
 「鵜呑みにはしないように♪
  何しろ僕は忍者ですから。」
 「ええ、ほどほどに致します。」
 
 この子は、よく分かっている。
 何の因果か、この丘・敬次郎を知り、興味を持ち近づいてきた。
 悪意ではなく、好意。
 
 二年間の学生生活において、期待していなかったといえば嘘になるが、正直多少客観的に見ても、自分が名も知らぬ他人から頼られることなどないと判断していた。
 悪を自称し、自認し、尚且つ、自分が好みだと思った人間には遠慮なく――――必要最低限の遠慮すらなく――――近づいた。
 自分の周りには自分がそうやって好きだと思って、それに嫌でも付き合ってくれている人たちだけだと、そう思っていた。
 
 “貴方様になら、この身委ねて裂かれても良いです。”
 
 何てことだ。
 何という、事だ。
 
 「他に何かご質問は?」
 「いえ、ありません。」
 「個人的なことでもいいですよ?
  他人に踏み込むことはあっても、踏み込まれることは中々無いので。」
 「そうなのですか?
  それでは……そうですね。
  ラスボスに、何時なって頂けますか?」
 「ふふふふ♪」
 「流石に、おばあちゃんになるまでは待てませんわ?」
 
 その子は笑った。年齢不相応の妖艶さで。
 極まった者の集まる銀誓館学園においては、不自然ではないことだが。
 
 「あと……」
 
 丘は指折りなにやら数えていたが、すぐに辞めた。
 
 「何レベル必要なことやら♪」
 「100ぐらい?」
 「全然足りません。」
 「では200?」
 「それでも多分ダメでしょうね。」
 
 丘が丘であり続けるには、何時の日にか。
 銀誓館学園全てを相手にして勝てるだけの力を手に入れなければならないのだ。
 彼の里の現頭首、筧・小鳩、これを超えなければならない。
 ちなみに首領小鳩は化け物である。
 いつぞや丘が野心を種に夜襲をかけた際、喉めがけて全体重を込めて振り下ろしたナイフは、彼女を眠りから覚ましすらしなかった。
 ナイフの先端にかかる丘の体重を、首の皮で平然と支えて見せたのだ。 
 
 詠唱兵器を以ってしても皮一枚切り裂けない。
 そんな、『悪魔』だ。
 そしていつかは、それすらも越えなければならない。
 人の夢の書いて儚いとはよく言うが、儚いどころか、丘にはその夢の姿さえも見えたことがない。
 
 「銀誓館には人海戦術がありますものね。」
 「ええ。
  『あの戦力』に勝てなければ、魔王とは、言えない。」
 「魔王になりたいので?」
 「悪を為す帝王は、そういう名で呼ばれるというだけです。」
 
 実際には、小さな忍者の里の切り盛りにすらも頭を悩ませているというのに。
 
 「あなたのお傍に。」
 「……僕が魔王になってからお願いします。
  信じられるのは、苦手です。職業柄♪」
 
 仕方ないなやるしかないか。
 そう思い苦笑する。
 
 幼い頃憧れ、今も胸焦がすヒーローの姿を、丘はそれと知らず自分に投影していた。
 
――――
 
 ざりざりと音を立て、己の姿がノイズに塗れていく。
 
 「案ずるな。全ては神の求むるままになる。」
 
 灰色のツーテールには黒が混じり、白い肌には黄色がモザイクのように入る。
 丘・敬次郎の姿が割り込んでくる。
 
 わたくし、『お屋形様』と、アレ、『丘・敬次郎』とは、ほんの一つの差しかない。
 
 銀誓館に名を連ねるか否か。
 
 そして神にとって、わたくしとアレの存在意義は同等だ。
 ならば。
 
 「いずれ必ず、アレはわたくしに取って代わる。」
 
 否。
 
 「アレが、わたくしだ。わたくしが。
  アレなのだ。」
 
 総身に糸を張られた操り人形。
 人形が操る人形と、人形を操る人形に、果たしていかほどの差があるのか?
 どちらも見世物ではないか。糸を繰る『人間』に、満足を与える為の。
 
 「ふふふふふふふふ……。」
 
 わたくしはわたくしだ、などと、青臭いことは言いませぬ……。
 
 その笑い声には、少年のものが。先ほどよりも強く混ざっていた。
 
 
 以上。」
 

 
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