紛い物の弾丸

 「ああ、どんなに考えてみても役には立たない。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 ……妄想シルバーレイン……。
 
 Shot Your Baby!
 
――――のしかかる 暗闇に 立ちはだかる紫のLady
――――その優雅な眼差しに 旅人は明日をすり替える
――――アルバム流麗祭彩収録『Jimang Shot』より
 
 「本当は里の蔵でバラすんですけどね。」
 「あら、里に連れて行ってはくれませんの?」
 
 実家に紹介して頂いたらよかったのに、と、セドレツィーナ・クルムロフは眉を顰めた。
 
 「そういうわけには行かないのですよミス・クルムロフ。」
 「セド、でよろしいですわ。」
 「ではセドレ“ッ”ツィーナ様。」
 「意地悪ですわね。」
 
 明かりの無い朽ちたラブホテル。
 スプリングの効かないベッドの上に横たわるセドレツィーナと。
 のしかかる、丘・敬次郎。
 
 「召しませ♪」
 
 セドレツィーナはそう言ってシャツの前を開け、
 
 「汚れますよ。」
 
 丘はその服を剥いで横に置いた。
 
 「……っ……では……っ。」
 
 セドレツィーナの声には興奮が篭もり
 
 「頂きます♪」
 
 丘の声には愉悦が宿った。
 細く鋭いナイフが、セドレツィーナの腹に食い込んだ。
 
 ~~~~
 
 「……ご馳走様でした。」
 
 丘が両手を合わせる。
 セドレツィーナは縫い付けられた腹の皮を押さえ、ああ、と嬉しそうに悶えている。
 この中には、この腹腔には、あの方の子種が詰まっている。
 あの方にとっては欲望の残滓に過ぎないのだろうけど。 
 ……かわいい、けなげな顔で、わたくしの内臓に欲望を浴びせかけた。何度も何度も。
 あの顔は忘れない。決して。決して。
 ああ、ああ、ああ。
 
 「もっと鍛えた方がよろしいな。
  筋肉と神経の綿密な繋がりこそが僕の求める奇跡でありますし、
  何より、能力者として存在する以上、不幸を撃滅する存在であらねばならない。」
 「心得ます。」
 
 非難めいた丘の言葉にもセドレツィーナは怯まず答える。
 色々な都合があって、世に生まれ過ごした日々より若い肉体に宿ってはいるが、彼女の精神は老成の域にすら達しつつある。
 丘が一つため息を吐いた。
 
 「ナイフの感触は如何でした?」
 「冷たくて、容赦なくて、恐ろしくて。
  とても、気持ちよかったですわ。」
 「……難しいですね。」
 「何がです?」
 「サディストはマゾヒストがいないと生きていけない。」
 「難儀なことですわね♪」
 「痛がらず死にもしない、不老の美少女を、と言いはしましたが。」
 「『痛がって怖がって、死んでしまうような者でなければ』いけない?」
 
 クスクスとセドレツィーナは笑った。
 少しだけ切なげに眉間を歪ませながら。
 
 「申し訳ありません。」
 「謝らないでくださいまし。どうか。
  それはあなた自身の行いを否定するものです。」
 
 道は違えど欲望を最優先に生きるサイコパス同士、通じるものはあった。
 
 「もしわたくしをおそばに置いたことを後悔するというのなら、
  わたくし、あなたを殺してしまうかもしれません♪」
 「そばになど置いていませんよ、『ミス・クルムロフ』?」
 
 唐突に、冷たい目線が彼女に刺さった。
 
 「あなたは、まだ、ただの玩具だ。
  それすら覚悟して僕に近づいた。そうでしょう?」
 「マゾヒストがいないと生きてはゆけない、確かに、その通りですわ。
  わたくし……結構傷つきました。」
 「当然です。傷つく心もないなら、死んだ方がマシだ。死ね。」
 「本当にひどいわ♪」
 「ええ、『本当に酷い』、そうでなければ、僕は僕でいられない。」
 「お人形も大変ですわね、丘様?」
 「あなたがまともに痛がる人ならば、思い切りひっぱたいていたところですよレディ。」 
 「ああ、こわいこわい♪」
 
 
――――桜色 薄紅の頬に 浮かぶ 幾つもの思い出よ
――――抱きしめて 抱きしめあって その永遠が終わる
――――アルバム流麗祭彩収録『Jimang Shot』より
 
 以上。」 
広告

kiwivege について

nothing
カテゴリー: シルバーレイン パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中