自覚はある。

 「死を。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 俺TUEEEEって、どうしてこんなに「書きたさ」を刺激するんでしょうか……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 伝説、地獄、悪夢。
 
 尻餅をついた体を起こす前に、丘・敬次郎は耳栓を抜いた。
 
 「……。」
 「如何でしたか?」
 
 真っ赤に染まった体を折り曲げ、その男は、丘の顔を覗き込んだ。
 
 とあるゴーストタウンでの事。
 その日、丘の師匠である筧・次郎と、忍者の里の首領、筧・小鳩に連れられ、丘はそこに同行していた。
 次郎が「少し試してみたい」と、出現したゴーストから逃げ回り、ボスのいる広い空間に集めた。
 小鳩がそっと耳栓を手渡し、丘が素直にそれを装着した途端、丘の総身に悪寒が走った。
 
 能力者ならば、ある程度強力なゴーストの存在は、何となく不吉な気配で感知できる。
 だがその時丘が感じたのは、不吉などという曖昧なものではない。
 広間の中心に立つ、白い服を着た長身の男。そこから爆発的に発生した殺気。
 背筋に嫌なものが走り、胃がひっくり返る。奥歯ががちがちと音を立てる。恐怖で膝が笑い、座り込んでしまった。
 
 次の瞬間、凄まじい衝撃波が連続で発生し、その場にいたゴーストは全て殺された。
 刺殺、撲殺、絞殺、斬殺、爆殺、銃殺。
 彼の持つあらゆる暗器が、もっとも効率のいい動きを求めて、うねり、湧き出し、食い殺した。ほんの一瞬で。
 
 「如何でした?」
 
 次郎が再び尋ねる。
 上がった脈拍を抑えるため、丘は何度も深呼吸し、涙と鼻水をぬぐった。
 
 「……殆ど見えませんでした……。
  辛うじて、敵を切るときの姿が残像で幾つも見えるぐらいで……。」
 
 次郎は満足そうに笑った。
 
 「掃除の最短手順をイメージしてなぞっただけです♪」
 
 と。
 
 彼にのみ許された超音速機動と格下を確実に殺傷する技術。
 蓄積した経験が手順の具体的なイメージを起こし、内蔵する圧倒的な魔力と膂力でそれを具現化する。
 『実体を持つ霧影分身』も複数作成し、もてる力の全てを導入して完全な殺戮空間を作成する。
 
 「踏み越えられそうかな?」
 
 何を?
 
 次郎は――――小鳩もだが――――シルバーレインの世界に至ってから、正に神に、いや、悪魔に相応しい力を手に入れつつある。
 魔皇、逢魔という枷も薄れ、妄想という異次元の住人として。
 丘・敬次郎のような一般能力者を超越する存在として、完成度を高めつつある。
 
 陰陽都市など、自分より遥かに強大な力を持つゴーストに遭遇する機会が何度もあったから腰を抜かす程度で済んだが、
 最近転入した鳥越・九(いちじく)ならば、殺気に当てられて失神、失禁していたかもしれない。
 
 筧・次郎が雑魚ゴーストを殲滅したことは驚きに値しない。
 真におぞましかったのは、発せられた殺気の量と密度。
 一瞬、この世から何もかも無くなり宇宙空間に放り出されたように感じた。底の無い闇に落ちるような、圧迫されるような。
 その直後、衝撃波の連打が脳を揺らしてそれどころでは無くなってしまったのだが……。
 
 「一定の成果はあったみたいですね。
  もっと速さと精度を磨けば、壁を越えられるかな?」
 
 ゴーストの死骸を見下ろしながら、次郎は笑った。
 壁を越える?
 それは、もっと速く、もっと確実に、もっと完璧に、間合いの全てを殺しきることに他なるまい。
 一瞬で数多の命を滅ぼす、絶対殺戮空間の完成。
 刹那に永遠を圧縮する、理不尽の完成。
 『殺し尽くす伝説』。
 そんなことが。
 
 小鳩が、耳栓を抜かぬまま進み出た。
 「それでは、わたくしも見せたいものがございます。」
 
 後始末はお任せを。
 「げっ!」
 
 湧き上がる小鳩の闘志に丘はまた耳を塞いだ。
 
 一瞬後、部屋中にタールのような闇が迸った。
 引き絞った小鳩の銀の拳から、闇の塊が死骸に向かって打ち出される。無数に、無尽蔵に。
 これもまた凄まじい衝撃波の連打。地鳴りが止むと、ゴーストタウンの地面は死骸ごと深く耕されていた。
 
 「おお、龍撃砲と幻影の篭手の融合ですか、やるう♪」
 「恐れ入ります……。されど、未だ速さと正確性に不満が。」
 
 暢気な次郎の声に、頭を下げる小鳩。
 
 小鳩もまた、壁を越える気だ。
 もっと強く、もっと多く、反撃の余地無く闇のオーラが打尽する、空間支配攻撃。
 その完成形は、『叩き潰す地獄』。
 
 「さあ。」
 
 次郎が再び、丘の顔を覗き込んだ。朗らかな笑顔で。
 
 「父と聖霊の極みは、お見せしました。
  さあ、子よ。考えてください。三位一体に相応しい、あなただけの『悪夢』を。」
 
 丘は乾いた笑いしか出せなかったが、裏腹に、心は新たな奥義の道へと逸っていた。
 
 以上。」
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