世界が平和になりますように

 「Peaceとの出会いは、鞄をぶつけてめがねを壊してしまったとある男性との出会いがきっかけです。
 
 ……出会いっていうか、眼鏡弁償させていただいた後、喫茶店で吸ってらした。
 
 両切りたばことの初の出会いでもありますが、心底どうでもいいですよね……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 驕慢
 
 部屋を出て廊下に転がり出る。
 迫る足音に振り向きもせず、丘・敬次郎はポケットから携帯電話を抜いて開いた。
 揺れる視界で着信履歴を確認しボタンをプッシュ。
 耳に当てたスピーカ部分から数字をなぞる音が聞こえる。
 
 (出ろ早く!)
 『はい、若頭?』
 「いてっ!」
 
 背中を襲った衝撃に思わず振り向く。
 “敵”を視認、あの残心は龍撃砲だ。煌く火花が砲撃の跡を描いている。
 青龍拳士は自分もやっていた時期があるからよくわかる。
 
 『若頭!?』
 「お屋形様を呼んで下さい!早く!僕じゃ手に余る!」
 
 角に転がり込みながら電話を畳む。
 近寄る足音を確認し、右腕に体内の水分を集中させ、放出する。
 鋭い水流が刃となり壁を掠めて飛んだ。
 
 「くそっ!」
 
 “敵”の舌打ち。
 どうやら目潰し程度には効いたらしい。
 
 が、逃げてくれる程柔でもない。
 程なくして、“そいつ”は角から姿を現した。
 
 背は高くも無く低くも無く。歳は25~35と言ったところ。
 短めに刈られた黒髪、茶色の瞳。
 紺色の背広とスラックス。
 そして。右手には、狼を模したリボルバーガントレット。
 左手で右脇腹の傷口を押さえている。
 水刃手裏剣は、どうやらそこに当たったようだった。
 
 丘はここに、『特別攻撃』を執行するために来ていた。
 忍者団瑠璃の平均レベルを上回る能力者専門の撃退・殺害。
 瑠璃の中で突出した実力を持つ丘は、能力者組織の切り札として度々特別攻撃を執行していた。
 
 「……。」
 
 目の前にいる青龍拳士もまた、そんな『ごんたくれ』だ。
 人ではなく、能力者を殺す専門の用心棒。
 互いに立場は分かっている。交わす言葉など無い。必要無い。
 丘は既に、右手にナイフを握って構えていた。
 
 実力は、四分六分で多少丘優勢と言ったところ。だが、その程度の差は簡単に覆る。
 『五分の勝負は勝負では無い』。これは瑠璃忍者団に徹底された、仕事に対する姿勢だ。
 任務の遂行が全ての前提である忍者にとって、五分の勝負というのは、『五分負けている』のに等しい。
 
 四分六分でも同じ事だ。忍者に博打は許されない。
 だから丘は、『お屋形様』を呼んだ。『お屋形様』ならば、野良の能力者風情に敗北はありえない。
 つまり、保険をかけたのだ。博打に負けてもいいように。
 
 ふうぅー ふうぅー
 
 丘は、細い息を吐く。
 目の前の男は既に臨戦態勢で、動きを待っている。
 向こうも、四分の不利は知っている。その上での戦術を組み立ててくるだろう。
 手にはナイフ一本。
 奴の狼に比べれば、破壊力で劣る。鋭さ一点が唯一の勝機。
 
 そう。鋭さ一点が……。
 
 丘は、口の端を僅かに吊り上げた。
 
 
~~~~~
 
 「お見事でございます。」
 
 灰色のツーテールを揺らし、『お屋形様』が“敵”の死体を眺めている。
 
 「恐悦至極。」
 
 頭を下げる丘の手には、べったりと血のついたナイフが一本。
 『お屋形様』は死体を見下ろしながら、にっこりと笑った。
 
 「見つけたようですね。あなたの『悪夢』。」
 「はい♪」
 
 “敵”の肉体は、ズタズタに切り裂かれていた。
 指先、肘、肩、腿の付け根、下腹、そして首に、深い裂傷が残っている。
 対して、丘の体には左腕の骨折のみ。
 
 「僕にとっては、人体は急所の塊です。」
 
 何年も前に人体の内部構造の虜になり、実際に数十の肉体を腑分けした。
 どこに何があり、どう繋がって動いているのか。
 丘にとっては、それを知ることが喜びでありそれを見ることが悦び。
 故に、『分からない』ことは許せない。
 世の誰より人体を愛しているというプライドに賭けて。
 それが人の形をしている限り、丘には急所が透けて見える。
 腱、太い血管、神経、強い痛みを齎す部位。全部知っている。
 
 だから。
 
 “奴”が防御に構えた手そのものを狙った。
 リボルバーガントレットの間接部にナイフを通し、指を切り落とす。
 そこからはもう、止まらない。
 精神を集中させた丘には、皮膚の中が透けて見えた。
 気丈にも更に打ち出された腕は手首を切り、
 血を抑えようと庇った左手も切り裂き、
 両腕から流れる血を抑える方法を模索している間に、腿に刃をつきたてた。
 血管から腱まで一気に引き裂く。
 膝が折れ前のめりになった肩、喉、顔をめった刺し。
 
 手足の末端から始まり、抵抗できなくなったところに呼吸器、消化管を破壊、痛みと失血と呼吸困難で人体の機能を不全にさせ、最後に脳を破壊する。
 
 人体の機能を物理的に停止させる術。
 それが、丘が見出した『暴き立てる悪夢』。
 
 「お見事、お見事♪」
 「研鑽に励みます。」
 
 能力者は、その卓越した能力から、無意識でさえも急所を交わすという特性がある。
 しかし、丘にはもっと細かな急所が見えている。
 心臓でなければ肺を。肺が駄目なら胃を。それも駄目なら腸を。胴が硬ければ脚を。脚が遠ければ腕を。
 
 全ての攻撃を分解し、あらゆる防御を解体する。
 ナイフの刃が通りさえすれば、大きな勝ち目を見出せる。それが、彼の『悪夢』。
 
 「……後始末の面倒さは課題ですかね?」
 「そこは……世界結界にお任せとは、行きませぬか?」
 
 微笑む『お屋形様』に、丘は苦い笑いを返した。
 
 以上。」
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