時の迷路を走り抜けろ

 「行くぞ、も、殺す、も。心の中で己に言えばいい。
 
 余計な言葉は気配を発するだけだ。鼓舞をするのは壇上の奴に任せておけ。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン……?
 
 
 無理が通れば進化論は要らない2
 
 「神め。」
 
 筧・次郎がそうつぶやいたのを、鳩は聞こえない振りをした。
 
 「ただ待つ身というのは、退屈なものですね。」
 「主(あるじ)はこちらでも仕事を見つけているではありませんか。」
 「暇つぶしにはなりますが、やはり焦燥には足りない。」
 
 盆地に吹く颪は強く、鳩の灰色の髪が激しくはためいた。
 
 「次元は超えられたが、ここには僕の憎んだあの神はいない。」
 「……。」
 「わかっています。僕は『あそこ』に愛想を尽かしてここで神を殺すと決めた。
  しかし。代理は所詮、代理でしかない。」
 「……主。それを言っては。」
 「わかっています。」
 
 かつて魔皇と呼ばれた男と、過去に逢魔という種族だった女。
 ヒトを管理せんと乗り出した神を憎悪し、決着を着けることが出来なくなった世界に絶望し、
 詠唱銀の世界へと理不尽として降臨した。
 
 「それでも。
  僕のこの殺意は僕のものだ。」
 「……。」
 
 幾多の天使を殺した。
 数多の人を殺した。
 絶望を慰めるため丘・敬次郎という後継まで作った。
 それでも。
 
 「僕の愛しい憎悪が、疼くんです。」
 「……鳩は、どこへでもお供いたします。」
 「……ふふ。」
 
 次郎は、嬉しそうに笑った。
 
 「じゃあ、もう一回がんばってみますか♪」
 
 次郎の体が三次元から二次元へ、二次元からバイナリへと点滅し変貌していく。
 鳩も目を閉じ。己の体を01の符号に分解する。
 
 彼らの宿敵デウス・エクス・マキナ。
 
 どこかの平行世界の地球上、北海道においてあるサーバーマシンが、彼らの憎む神の正体。
 かつて彼らの足がかりとなる世界を作ったコンピュータ。
 操作するものを失い、完全に停滞した世界そのもの。
 
 そこには、01ではない真のアナログが存在するという。
 
 「でも僕は量子力学論者ですから♪」
 
 バイナリコードの塊が言葉をつむぐ。
 
 「いずれ、世界の全てが数値で表される未来を信じている。」
 「……そうなれば。」
 
 ヒトが現実をバイナリだと認識すれば。
 或いは真のアナログは消滅し、彼らは彼らのバイナリをその世界の量子として顕現できるだろう。
 
 「僕は人間を諦めていませんから♪」
 「存じております。」
 「さあ、もう一度やってみましょう。」
 
 風景が崩れ落ちる。
 世界はオーロラのようにゆがみ、二つのシリアルコードが光の速度で飛んでゆく。
 
 01000100 01010010 01000001 01000111 01001111 01001110
 
 人智を超えて、命の形さえも超越して。それは、そういうものになって。
 脆弱でみすぼらしい絶対の神を、殺しに行く。
 
 以上。」
 
 
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