On Her Majesty’s Secret Service

 「生まれてすぐに殺すという作法があった。
 
 風習じゃない。因習でもない。れっきとした自衛の、そして社会に害悪を出さないための作法。
 
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 You Only Live Twice 2
 
 アミーゴ横須賀。
 正しくは、アミーゴ横須賀と呼ばれていた量販店の廃墟。
 
 リビングデッドの身体からナイフを抜くと、丘・敬次郎はその死体を噴水の中に叩き込んだ。
 
 「実に汚い。」
 
 ナイフを拭ったティッシュを餞のように水の中へ放る。
 
 「実体があるのはお好みではありませんの?」
 
 呪髪を靡かせてセドレツィーナ・クルムロフが振り返る。
 
 「死体を刻む趣味があると思っていたのですけれど。」
 「ああー、誤解されやすいんですよねえ。」
 
 丘が頭を掻く。
 
 「僕は殺すことには興味ないんです。
  というか、鮮度の面から言うと死んでほしくすらない。
  でも僕が捌いてると人間は死んじゃうんです。」
 「ややこしい方。」
 「グロ趣味ではないんでね。
  蛆が涌くとか腐り落ちるとかに美を感じはしません。」
 「臓腑を覗くのも十二分にグロテスクな趣味だと思いますけれど。」
 「世界が僕に追いついていないだけです♪」
 
 丘は笑って、自販機コーナー前のベンチを指差した。
 
 暫しの休憩。
 
 「まあ確かに、リビングデッドは鮮度の面では極めて劣ることは認めますけれど。
  誰にも咎められることなく分解できる人の身体、となると、あれ以上はありませんわよ?」
 「人、と言えるのかなあ?」
 
 丘が持参の水筒から水を注ぐ。
 蓋一杯をカッと飲み干して言葉を続けた。
 
 「腐っているってことは、明らかに人間の通常の代謝とは別の機構で動いているということ。
  僕は、人間、というか『生き物』の身体に詰め込まれた理屈が好きなんです。
  『死に物』なんてどうでもいい。」
 「どうでもいいなら、何故ゴースト退治を?」
 「趣味以外の部分でどうでもよくないからですね。
  それこそ、生物学の範疇から外れた……ああー、未だカテゴライズされていない、という方が適当か?
  そういうバケモノが人間に危害を加える。
  腹立たしい事です。」
 「あらら、意外とおセンチ?
  人間の生死なんてどうでもいいと思ってらっしゃるのかと。」
 
 セドレツィーナは嗤い、丘は笑顔で応じる。
 
 「人間を侮ってはいけません。決して。
  彼らの技術、彼らのコネクション、彼らの文化、彼らの歴史。
  いずれも能力者如きが積み上げられるものじゃない。
  僕だって忍者という日陰者ではあるが、人間が、それも比較的温厚と言われている日本人が作り上げた闇にすらとても及ばない。
  僕らはそういうヤクザや人でなしからおこぼれを貰って生きているだけ。
  ……これは、いと尊き我が『お屋形様』の受け売りでありますが。」
 
 セドレツィーナが眉を顰める。
 彼女にとって、人など餌にも及ばない。
 ただそこにあるだけの人形。
 命など無価値だ。
 生命活動など興味がない。
 そいつの人生がどうしたというのだ。
 
 何より、丘自身だって個人個人のヒトは軽んじているはずなのに。
 でなければ生きた人間を解剖してエレクトなんてできるものか。
 
 「なるほど、人間に御執心なのはよくわかりましたわ。
  けれど人間工学に即しないと言う意味では、能力者(あなた)も同じではなくて?」
 
 だが、丘の中ではヒトに対する悪行と敬意の折り合いは既についていた。
 
 「だから僕は、『死ななければならない』。」

 
 それが、ヒトを軽んじる能力者(バケモノ)が等しく辿るべき末路だと。 
 丘が立ち上がる。目は次の区画を見据えている。
 
 「ヒトを害する僕は、僕自身の、つまり、『いと尊き我らが『お屋形様』』の正義によっていつか殺される。」
 「正義、ですか。」
 
 はっ。
 
 呆れの吐息と共に呪髪が宙を薙ぐ。
 胴を狙った攻撃は地に伏せた丘の長い髪を掠め、
 振りぬかれたナイフはセドレツィーナの脇腹に細い傷を刻んだ。
 
 「ちっ。」
 「あなたのことをセドレ“ッ”ツィーナと呼ぶのはやめましょう。
  あなたは今の年齢相応に短気でいらっしゃる。」
 「短気だなんて。ちょっとした余興ですわ?」
 「余興、ね。」
 
 丘はにこりと笑い、ダンと地を蹴る。
 開いた扉の向こうへ。
 腐った匂いを漂わせ、リビングデッドが現れる。
 丘が吼えた。
 
 「お前らはここで終わり、終わりだ!
  お前の二度目の生を、
  この丘・敬次郎が余すところなく暴き立てる!」
 
 一閃、二閃、三閃、四閃。
 指が落ち、腹が割れ、腱が切られ、歪んだ生命の機構が露になる。
 
 「YE NOT GUILTY!」
 
 最後の審判は下り、それは呆気なく二度目の人生を終えた。
 
 「さあ。」
 
 エゴを見せてください。
 
 そう語る丘の眼差しに、セドレツィーナは言葉には出さぬまま、「はい」、と応えた。
 
 以上。」
 
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