これは恋なんかじゃない。ただの憧れで嫉妬で尊敬だ。でも、添い遂げるに足る。

 「お前の自由を奪ってもいい。それが自由というものだ。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン……
 
 
 喜びと共に歩みたくて
 
――――ならば教えてやろう、僕等がお屋形様から与えられた至上命令を。
――――「人が紀元前から作り上げてきた科学と文明が、銀の雨と怪異によって支えられていたことが完全に確実に判明した暁には、
――――我等は、この世界そのものを否定し、『この宇宙』における地球を、いかなる手段を以ってしても破壊する。
――――そして、科学による文化文明が確かに歴史を築いたと信じられる次元に、転生する。」
――――諸共に消し去ってくれる!
――――貴様も、偽りの文明も、ヒトではなかったヒトも!この『ふざけた宇宙の』地球と共に!
――――砕けろ、この隕石で!
 
 「生まれながらの才覚というものは当然ありますけどね。」
 
 丘・敬次郎が手を止め、こちらを向いた。
 テーブルの上には分解されかかったオートマチック拳銃。
 
 「やはり、何だ。」
 
 次の言葉を探すように、丘はまたテーブルの上に手を伸ばす。
 ドライバーでネジを外すと、片目でパーツを眺めて歪みを探す。
 
 「積み重ねていない人間を、信頼したくはありません。」
 
 また銃の解体を始める。
 がしゃり、とパーツをテーブルの上に置き、彼は向き直った。
 
 「というか、あれですね。
  我慢がならないというか。自分と同じぐらいの苦労をしていない人間が自分と同じレベルの技術を持っているなんて、認めない。
  あはあ、まんま僕が憎む悪しき体育会系の思考回路ですねえ♪
  同属嫌悪とはよく言ったものだ。」
 
 完全に解体し終わったパーツを拾い、ブラシをかけ始める。
 
 「あー、同属嫌悪じゃないな。
  同属だから憎むんだ。
  自分が嫌っている物事が、実は自分自身だったと思った時に憎しみが生まれる。
  お屋形様の言う憎悪の論理とはまた違いますけど。」
 
 銃のパーツに油を差しながら、彼は笑った。
 
 「お屋形様の言う憎悪は、理屈なんです。
  あー、何だったかな。
  そうそう、人間には生まれた時から、理屈が通ると快感を得られる回路があるんですって。
  で、あれだ。不幸が起きた時も、自動的にそれを理屈で納得しようとするんですって。
  納得しさえすれば、すっきりするはずだから。納得できれば、不快感は消えるはずだから。
  例えば肉親が殺された時、その原因である仇を倒したいと思うのは、怒りじゃなくて、
  『不快感の原因を消し去ればすっきりできる』っていう本能的な反応なんだと。
  でも、本当はそんな訳ない。
  大事なのは、肉親が踏みにじられたという事実に対する悲しみなんであって、
  仇をどうしようが悲しみが軽減される訳がないんです。
  でも、人間は『仇を倒せば解決する』と思って『しまう』。そう思うことを止められない。
  理屈で納得することを知ってしまった人間特有の本能なんだそうです。」
 
 余った油を軽くふき取り、銃を組み立てていく。
 
 「……走るように生きてた頃、何も見えなかった。」
 
 え、という声に丘は口の端だけを上げて笑った。
 
 「いつも、いつも、笑いながら、ずっと……泣きたかった。」
 
 グリップを組み上げ、握りを確かめる。
 
 「ふふ♪」
 
 戸惑う相手をよそに、丘は銃を組みきった。
 照門から照星を覗き歪みが無いか確かめる。
 銃倉に弾薬を込めグリップに押し込む。
 グリップを握り。銃口を向け、引き金を引いた。
 
 「あ……。」
 「ふふ。」
 
 衝撃で転んだ鳥越・九(いちじく)は咄嗟に眉間を押さえる。
 肌が直径9mmに凹んだのを指の感触で知る。
 
 「ままならないものですよね。」
 「……。」
 
 ダメージによる緊急イグニッションで大事には至らなかったが、貫通しない分能力者には衝撃が全て伝わる。
 銃弾に跳ね上げられて痛む首を押さえながら、鳥越が丘を見つめる。
 そんな鳥越に丘はフルオートの射撃を見舞った。
 衝撃に押され鳥越の身体が為すすべなく倒れる。
 
 「本当に、ままならない♪」
 
 胸と腹に受けた痛みを手で押さえつつ、鳥越の目が彼を見上げる。
 丘が笑っているのは後ろ姿からでもわかった。
 この『ふざけた宇宙』に愛したいものを見つけてしまった。
 ジレンマに陥りけれど笑える丘。
 
 恋に溺れるでもなく使命のために見放すでもない丘の心情を、歳若い鳥越には測れずにいた。
 
 
 以上。」
 
広告

kiwivege について

nothing
カテゴリー: シルバーレイン パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中