THE OBSCENITY SLAYER ~Rifle-Hold Neighbor~ Hey, Call and Responce.

 「うるさい、黙らせてやる。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 呼ばば応えよ
 
 黒い背広を纏い、灰色の巨大なツーテールが揺れる。
 彼は背の低い少年で、髪と服のそこかしこには、血の雫が散っていた。
 廊下の先にノートパソコンを持った影を見つけ、歩みを止める。
 
 『おかえり』
 
 彼が歩み寄ると、サキュバス・ドールがノートパソコンに文字を打ち、差し出す。
 学生寮内、丘・敬次郎の部屋の前。
 
 「只今帰りました。待ってくれていたんですか?」
 
 サキュバス・ドールはこくりと頷いて笑う。
 丘がイグニッションカードを取り出し念じると、
 背広とツーテールは消え去り、私服姿の少年が残った。
 
 「珍しい事もあるもんですね♪」
 
 集合住宅特有の重い扉を開け、二人部屋に入る。
 
 「暖房もつけていない?」
 『寒がりたかったのだもの』
 
 広くない部屋とは言えパソコンと少女一人の体温だけで温めるには、空虚に過ぎて。
 
 「何故?」
 『温まりたかったから』
 
 ああ、だから、わざわざ外で待っていたのか。
 服を洗濯籠に放り込みつつ、丘は得心する。
 ベッドの上には分厚いタオルケットが3枚も敷かれ、掛け布団は下に畳まれていた。
 
 『もうすぐ わたしを強くできるのでしょう?』
 
 苦笑しながら丘が頷く。
 サキュバスは使役ゴースト。使役する側の能力者以上には強くなれない。
 いや、その表現は正しくない。
 『自分より強い相手にしか使役されない』。
 ただ強くありたいだけなら、丘よりも強い能力者に多少の手続きをしてもらえばいいだけだ。
 
 それが嫌だから、彼女は『使役する側の能力者以上には強くなれない』。
 
 丘はもうすぐ、真・サキュバス・ドールを従えられるようになる。
 それは現在確認されているサキュバスの中で、最強の存在。
 
 何故強くなりたいのか、と丘は訊かない。
 分かりきっている、強くなければ従える意味が無いから。
 
 サキュバスを初めとする使役ゴーストには、じわじわと、では無く飛び級式に強くなるという特徴がある。
 『自分より強い相手にしか使役されない』という性質と合わせ、使役ゴーストと能力者には必然的に実力の隔絶が発生する。
 その格差が最も小さくなるのが、『使役ゴーストの成長段階より、能力者が一歩だけ強くなった瞬間』なのだ。
 
 彼女は、今は丘の使役ゴーストではない。実力の隔絶を嫌った丘に契約を切られている。
 ただ彼女の趣味で丘と一緒に生活しているだけの状態であり、イグニッションカードにも納められない。
 銀誓館学園を縛る偉大なる黄金律により、共に戦場に立つ事も出来ない。
 
 全部、彼女の趣味だ。
 
 「お風呂入りますか?」
 『要らない』
 
 ディスプレイを見せるが早いか、彼女はパソコンをテーブルに置いて丘に抱きついた。
 押し倒すつもりだったが、少女の姿の軽い体重では丘の体を揺らすのが精一杯。
 反対に、ベッドへと抱き倒された。
 
 破れそうなほどに互いの衣服を剥ぎ取り、冷たい身体に沈み合う。
 
 (血の匂いがしない)
 
 淫魔の唇が残念そうに動くと、清浄なる詠唱兵器のご加護です、と丘が応える。
 
 (呼んで)
 「明美ちゃん。」
 (ちがう)
 「明美。」
 (ケイジロウ)
 「明美。」
 
 愛していない。愛しちゃいない。
 明美は所詮、血の匂いに溺れて生きたゴーストであり、
 丘は詰まる所、臓腑の色を見るためだけに生きている能力者。
 愛ではない。愛であるはずが無い。
 こんなものが愛であって溜まるか。
 
 視線を交わすのも惜しんで、唇を貪り合う。
 冷たく熱い肌が擦れ合い、ねろねろと体中が汗にぬめる。
 
 こんなものが愛であって溜まるか。
 人間はもっと、綺麗で素敵で慈しみに満ちて。
 殺戮を正しく憎み、虚偽を正しく嫌う。
 愛は彼らのようなまともで眩しい奴らのもので。
 こんなものは愛であるはずがないのだ。
 
 ああ、愛しい人間よ、僕らはほら、こんなに汚れた生き物だから。
 ああ、愛しい人間よ、だから僕らは君らが大好きなのさ。
 
 君等はもっと、綺麗で素敵で慈しみに満ちて。
 殺戮を正しく憎み、虚偽を正しく嫌え。
 
 こんな僕らだから、僕らは一緒にいるのさ。
 こんなものが愛であって溜まるか。
 
 わたしが人間だった頃に愛したあなた。
 僕が殺人者を止めたくなるぐらい愛しい君。
 
 どうかあなた方は高潔な人間で居て。
 ここで僕らは、あなた方が嫌い憎む汚泥になるから。心臓が溶け合うぐらい同じ祈りに汚れるから。
 
 人間の光で、ワタシタチヲ マサシク タダシク コロして
 

 以上。」

 
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