いずれ我らは無の中へ

 「叩き潰してやる!
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 使用許可なんかとりませんから。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 モニター
 
 「チャンネル変えてもイイ?」
 「……可決。」
 「アリガト。」
 
 銀誓館学園学生寮、丘・敬次郎の自室にて。
 丘とアリスティド・ブリュアンは並んでテレビを見つめ、
 真サキュバス・ドールの明美はヘッドホンをしてパソコンのディスプレイに向かっている。
 
 「アハハハハ!」
 「これは、かなり仕込みのあるボケですよ今の。」
 
 話がある、と呼ばれたブリュアンは、肝心の話を一向に切り出されないことは全く気にかけていないようだった。
 丘にも切り出す気配がない。
 
 何かあるだろう、とわかっていながらもわかっていないふりをするのには慣れていた。
 タスクが積まれていても、それはそれと現状を楽しめる程度には濃い人生を送っている。
 
 「美しい肉体を作りたいのです。」
 「またトツゼンだネ。」
 
 丘が口を開いた。ブリュアンも驚きはしない。
 こいつは、こういう奴だ。理解している。
 自分も、割とそういう奴だから。
 
 「美しい肉体を選りすぐってつなぎ合わせて、
  とても美しいモザイクレディを作ろうと思いまして。」
 「モザイクレディの時点で美しくないヨ。」
 「僕の美的感覚とアリス様の技術で。」
 「フランケンシュタインの花嫁にオナリよ。」
 
 だいたいボクとキミの美的感覚が同じとは限らないだろ、
 というか、キミのセンスに合わせてリビングデッドを作るギリはないますよ。
 
 ブリュアンはそう言って、テレビに視線を戻した。話はもう終わり、と。
 
 「うーん、残念。」
 「ビジネスならやらないこともないますがね。」
 「同好の士と共同作業がしたかったのですが。」
 「前提が残念。」
 
 同好じゃ、ない。
 
 「筋繊維と神経、血管。あの複雑に完成された未完成の肉体。
  あんな自律稼働装置が自然に生まれたと思うと、胸が高鳴りませんか?」
 「プライマリスクール入る前に卒業しましたね、そんなの。」
 
 人間の中身に性的興奮を覚える丘と、
 人体再生成が仕事のブリュアンとでは、畑は似ていても認識に天と地ほどの差がある。
 趣味で人を分解し、中を見たら廃棄する。
 そんな丘はブリュアンにしてみればアマチュアもいいところ。
 
 「死んだものを」「死なないように」再構成する。
 ブリュアンの家系に限った話ではない。
 『フランケンシュタインの花嫁』と呼ばれる能力者は、程度の差こそあれ、死体を生かす技術を知っている。
 彼らは、他の誰かが解剖学を学ぼうと志しすらする前に死体の秘密を知り終わっている。
 
 「興味はないんですか?美しいリビングデッド。」
 「コストかかるます。」
 「あー。」
 
 その一言で、丘はすべてを納得する。
 丘もまた若輩ながら忍者である。すなわち、「汚れ仕事の担い手」。
 仕事人間には大なり小なり、行動に対してコストの概念が染みついているものだ。
 「したいけどできないこと」の存在は、丘も身にしみて知っている。
 
 「まず美しい肉体の調達。
  生きている美人を探すのも難しいのに、死んだ美人なんてモットむつかしい。
  それから最良の保存環境と、設備。
  当然ある程度のものは自前があるますが、究極を求めるとなれば。」
 「傷みの一つも入らぬように。」
 「そそ。あー、それになにより。」
 「はい?」
 
 ブリュアンは、此処にきてから初めて、心から楽しそうに笑んだ。
 
 「『美しく考える脳味噌』が。」
 「あっはははは!!!」
 
 そいつは難題だ!
 ジョン・フォン・ノイマンの脳髄か、さもなくばまっさらな赤ん坊の脳味噌を片っ端から入れてみるしかありませんな!
 
 ヘッドホン越しに聞いていたらしく、明美も楽しそうに笑った。
 
 以上。」
 
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