悪には悪の

 「しばしば、自分を信じることのできない人が宗教にハマる。
 
 宗教とは何を信じるかを教えるものではなく、自分を信じることをこそ教えるものであるというのに。
 
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 全く嘘をつかず全てを報道する、アカシックレコードのようなマスメディアが欲しいのです……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 集団潜在意識だけが
 
 「『お屋形様』こそ、悪を憎んでいらっしゃるんでしょう?」
 
 謁見の間の空気が凍ったのを感じ取り、丘は恐怖と同時に確かな手ごたえを感じた。
 御簾の向こうにいるあの悪魔の、心臓を掴んだ、と。
 膝をつき頭を垂れつつも、口からはべろりと長い舌を出していた。
 
 「何の話ですか?」
 「以前、僕があなたの指令に難色を示した時、あなたは言った。
  『自分の憎悪をターゲットにぶつけるな』と。」
 「そんなことは申し上げておりません。
  わたくしは、『貴様の自意識には文句を言わないからいちいち覗かせるな』と申し上げただけです。」
 「では『お屋形様』は悪辣な人間に何も感じないというのですか。」
 「それは、」
 「それは嘘です。」
 
 丘は、『お屋形様』に対し今初めて優位を取ったと確信していた。
 
 「あなたは、人の秩序を愛していらっしゃる。
  日本人を愛していらっしゃる。
  だからこそ。
  いいですか、だからこそ。
  秩序を守らぬ、「非日本人的な」人間を、人間と認めていない。
  憎悪と怒りを持って接している。違いますか。」
 「正しい認識です。」
 
 肯定の言葉にも関わらず、御簾の奥からの声に丘は全身が凍て付いたかのような錯覚を感じた。
 
 「わたくしはある種の人間を憎悪している。
  人間と認めてすらいない、というのもその通り。
  そして、そういう、秩序を守ることに一銭の価値も感じていない輩に、私刑を加えたことも一度や二度ではない。」
 「……。」
 
 会話をする際に最も厄介な手合いは、こういう、己の中の感情と理屈を全て言語で表わすことができる者だ。
 
 「そして、法を単に『己の行動に制限を加えるモノ』としか見ていないもので構成される国家があることも知っている。
  そういう国、集団を、わたくしは確かに憎悪している。」
 「……。」
 「だが、わたくしはあなたにそれを求めてはいない。」
 
 全ての矛盾が結論する。
 
 「あなたはただの暴力装置だ。
  あなたには、取るに足らない程度を超える思慮を許していない。」
 「……。」
 
 つまりはそういうことだ。
 丘・敬次郎の思想や態度は決して、『お屋形様』のそれに反していない。
 ただ、思想や態度の自由をそもそも与えていない、というだけで。
 
 「確かにわたくしは、この世界では、あなたに頼らざるを得ないほど脆弱だ。
  だが、それがロボット三原則を破っていい理由にはならない。
  犬に手を噛ませる理由にはならない。
  プログラムに人格を認める理由にはならない。
  昆虫に人権を認める理由にはならない。」
 「……。」
 「あなたの思想自体には賛成です。
  わたくしも、悪辣な人間を除きたいと願う。
  良識ある人類だけを残したいと願う。
  だが、わたくしはわたくしの配下に自分と同等であることを認めていない。
  思想を持つことを許していない。」
 「……。」
 「欠陥品め。
  痛い目に合わせる以上に方法がないのがまた腹立たしいことです。」
 
 丘・敬次郎は殺されない。
 北海道のサーバーにある彼のデータには、『お屋形様』でも手が出せない。
 
 存在を無に帰す、殺すということを脅迫の材料には使えない。
 どんなに痛めつけられても、死ぬような目にあっても、命だけは保証されているのだ。
 ああ、命が保証された暴力に何の恐怖が宿るだろう、と『お屋形様』は悩んでいらっしゃる。
 
 だが、丘は、肉体の痛みを厭う程度にはまだ俗物であり、己のその未熟さに垂れた顔面をしかめるのであった。
 
 
 
 以上……。」
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