オーロラを見つめ続けて

「鳩が倒れろと言ったら二つ返事で手首切るんだよ!
……こんばんは、鳩です……。
妄想シルバーレイン……。
絶佳
――――あの方と関わった人間は、例外無く人生を狂わされます。
――――あの方の放つ激しい死の匂いに、誰もが抵抗し、屈服し、苛まれ続ける。
――――良く見、そして聴き、遂にたどり着いた答えは、
――――あの祟り神を倒せるようになること。
――――……ええ、やつがれの人生はつまるところ、もう、彼女の呪いに芯まで侵されきっている。
色の抜けた白い髪は短く刈られオールバックに。
低い背丈。童顔に似合わぬ無骨な筋肉。
小高い山の山頂にて、独り座して、杯に口をつけている。
「……ん。」
山を見下ろし、彼女はうなづく。
飲酒は能力者の異能を封じ妨げると言われている。
だが、彼女はこう思っていた。
『酔った程度で失われる異能など、強度が足りない』と。

最早彼の森は全て彼女の掌握する物となった。
既に彼女は、遍くなる方法を手に入れていた。
「……。」
杯の酒を飲み干す。
喉から胃が、焼けるようにひきつる。
これでいい。これがいい。
もう少し。あと少し。
長く諜報部隊に身を置くことで知ったのは、
情報が未来を確定すると言うこと。
十分な情報を把握していれば、どんな些細なことであれ、予測ができる。
一カ月先は無理でも、一週間以内の事なら前後一日程度の誤差で『視え』る。
明日の事ならより鮮明に。
今日の事ならほぼ違わずに。
一時間以内なら詳細に。
ほんの一瞬先であれば、完璧に。
もう少し。あと少し。
完全に完璧にアカシックレコードを一ページ読むには。
いつだって、逃げ出す術を探していた。
攫われて、体を弄られ、髪を染められ。
先輩忍者に何度も凌辱され。世界を恨みさえした。している。
やつがれの中に潜む獣は、最早世を妬いて焼いて足りない。
だから、やつがれが憎むこの世界を余すところなく暴きたててやるのだ。
山と言う山に。森の影と言う影に。眼球が現れる。
そのすべての景色を彼女は見ていた。
都会という都会に、ビルの影と言う影に。眼球が現れる。
そのすべての景色も、彼女は見ていた。
海と言う海に。
砂漠という砂漠に。
町と言う町に。
平地と言う平地に。
彼女の目が浮かぶ。
「まだ、足りない。」
人工衛星に。
惑星に。
太陽に。
月を破壊したあの女を倒すには。
あの女の「僅かな未来」を完全に予測するには。
小さな粒子の動きも、巨大な星の動きも、見逃してはならない。
もっと細かく、もっと大きく。
『目』を開け、開け、開け開け開け開け……
「……!
これだ。」
扉が開く音がした。
今と未来の間に聳え立つ高く重い扉に情報の洪水が殺到し、
何日、何カ月、何年押し続けた結果、遂に時の扉が軋んだ。
見える。わかる。クリアに。
1秒後に何が起こるのかが、『視える』。
彼女の身に潜む幾億の獣たちが、今を見据え分析し演算した結果を、『感じる』。
かくて世界は彼女の監視下となりぬ。
世界よ、貴様はやつがれの掌の上。
今何が起こっているのかやつがれは全て知っている。
これから何が起こるかやつがれには見える。
何もかも、止まって見える。
ああ、そうか。

『掃除屋』は時を圧縮し、
『あの方』が空間を圧縮し、
『解剖主義者』は時を止める。
やつがれは、空間を止めることができるのだ。
この世界を遍く監視し、ピンで止め観察することができるのだ。
盃に、瓢箪から新たな酒を注いで高く掲げる。
ぶち壊された月の裏側の魔王に、献杯。
同時、彼女は気付かぬまま別の扉を開けていた。
悪魔となる扉を。
最早彼女に、人に戻る術も無く。
――――輝かしき未来のありさまよ、我が痛む目を傷つけることなかれ!
――――汝ら今だ生まれいでぬ年月よ、我が魂に押し寄せることなかれ!
――トーマス・グレイ「吟遊詩人」
《未来視/Visions》
以上。」
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