人に非ず。

 「お前の事だけど一生理解するな。
 
 こんばんは、鳩です……。
 
 妄想シルバーレイン……。
 
 
If Another Despaire -viewpoint of the Overbeing-
孤龍の絶海
 
 
 丘・敬次郎は佇んでいた。
 人の形をした、水流。それが彼だった。
 
 『幽霊せせり』は、顔を軽くひきつらせながら、ようやっと声を絞り出す。
 
 「……それが、君なのかい。」
 
 丘の形をした水の塊は、にこりと笑った。
 
 
――ドラゴン。
 未知を呼ぶ名前。
 
 ドラゴンは、ファンタジーの中にしか存在しえない生物だ。
 銀誓館の歴史の中で、ドラゴンの形をしたゴーストとの戦いは、幾度もあった。
 青龍拳士という、龍の力を身に宿す能力者も存在する。
 
 だがそれでも、ドラゴンは飽くまでファンタジーの中の存在である。
 ドラゴンに見えるものはただ、ドラゴンのような形をしているだけ。
 真なるドラゴンとは幻想であり、故に不老、不死、不生。
 人が目にすることのできる「ドラゴン」は、その片鱗、面影でしか無い。
 
 
 「これが、答えです♪」
 
 透き通る外観とは真逆の、泡立つような鈍い声で丘は応えた。
 
――能力者。
 ゴーストに唯一対抗することのできる彼らの力は謎に満ちている。
 
 年端のいかぬ細身の少女が、大型の肉食獣を素手で叩き潰す。
 見た目、体重からはとても算出できぬエネルギーと、
 一般人を遥かに超える反射神経。それが能力者の根本的な力だ。
 「詠唱銀を扱うことができる」という広義の定義はあっても、
 物理法則を否定するその力の源泉には、未だ多数の説がある。
 
 
 そのうちの一つに、「能力者は詠唱銀を媒介にして別の空間から力を得ている」
 というものがある。
 
 彼らの力はその身に収まっているのではなく、常時どこからか借りているのだ、という説である。
 
 その「どこか」を観測する術すら、未だ目途も立たない有様ではあるが。
 
 
 「そうか。」
 
 『幽霊せせり』は、深く納得した。
 
 彼が煙草を――――能力者にとって飲酒・喫煙の習慣は、己の異能を薄める禁忌である――――常用している訳を。
 彼がこの事態にある種の余裕を持って挑んでいる訳を。
 
 彼はもう、多分ずっと前に既に死んでいて。
 行ってしまったのだ。
 
 「水練忍者に、なったんだな。」
 
 丘は笑った。
 
 そうです、と。
 
 最早彼は、詠唱銀を介して力を引き出す能力者ではない。
 引き出される力の側に行ってしまったのだ。
 
 現世に見える丘・敬次郎をいくら倒しても、滅ぼすことはできない。
 だが、異次元の存在となってしまった彼は、この世界に顕現し続けることもできない。
 それこそ、煙草や酒で、溢れるエネルギーを消耗させ続けない限りは。
 
 『幽霊せせり』は、何故だ、とは問わなかった。
 
 寧ろ、彼ならあり得ると妙な納得さえしていた。
 
 時折どこか達観した目でこの世界の仕組みを語る彼は、
 生まれつき、何かがこの世から外れていたのだろう。
 
 「もう、トミーウォーカーのモノじゃない。」
 
 
 丘がそう言った瞬間、世界結界が大きくひび割れる音が響いた。
 
 
 
 
 
 
 
 以上。」
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