クローズドベータ、またはアサイラム

四肢切断!そして治療、あんど育成!

こんばんは、鳩です……。

妄想シルバーレイン……。

 キマイラブレイン

 痛くて泣きそうだった。
 背中に撃たれた銃弾が肺まで喰い込んで苛む。
 能力者の治癒力を以ってしても、楔を貫くことは難かった。
 
 血混じりの咳を吐きつつ、鳥越・九(とりごえ・いちじく)は拠点へと跳び続けた。
 
――――
 
 「初潮は来ていますので。」
 
 そう言ってゴムを咥えて臨んだ相手に、無造作に蹴り出された。
 入れ違ったクノイチに嘲笑された気がした。
 
――――

 とっくに諦めたつもりでいたって、ダメな物はダメなのだ。
 一頻り山を走り上って見たものの、落ちた気持ちは戻ってこない。
 山頂の大岩に腰掛けて、水筒の中の液体を飲みながら、空と山を見るともなく見ていた。
 
 「荒れていますね。」
 
 反射的に振り向き、跪く。
 
 「そんなに恐れ入らなくてもよろしいのに♪」
 
 男はくつくつと笑いながら、ジェスチュアで『立て』と促した。
 筧・次郎。忍者の里・瑠璃の技術師範である。
 
 「お恥ずかしいところを。」
 「いえいえ♪」
 
 頭を下げる鳥越に、筧はにこやかに笑ったまま。
 
 「気晴らしに行きますか?」
 「は?」
 「……もしもし?僕です。少し鳥越さん借りますね♪」
 
 返事を待たずに筧は携帯電話で何かを伝えると、鳥越の手を取った。
 
 「それでは参りましょう。」
 「……はい?」
 
 電車を乗り継いで一時間半。
 とっぷりと暮れた夜に光る、繁華街の看板。
 隙間に食い込むような細いビルの地下へと、階段を下りていく。
 何の印もない木の扉を開くと、煙草とアルコール、そして香水の匂い。
 
 「どうも♪」
 「いらっしゃいませ。」
 
 鳥越が招かれたのはこじんまりとしたバーだった。
  
 「僕はそこのウイスキーをロックで。
  あとチーズの盛り合わせと、サラミ。
  この子には……何がよろしい?」
 「あの……」
 「ご心配なく。」
 
 自分は未成年、と言いかけた鳥越に、筧はウインクをした。
 
 「……同じものを、ウイスキーを戴いてもよろしいですか。」
 「畏まりました。」
 
 顔には出さないが、驚く。
 鳥越の疑問に筧が先回りして応える。
 
 「ここは僕らの御用達なので♪」
 
 『僕ら』。
 つまりは、法律なんて糞食らえな連中のタメのバーだ、と。
 
 「しかし、いきなりウイスキーというのは。なかなかにお強いようで。」
 「はぁ。」
 
 合わせただけです、とは言いだせなかった。
 この男には、何やら不思議な圧力を感じる。
 
 「お待たせしました。」
 
 ウイスキーを揺らすグラスが二人の前に差し出され、
 その間にチーズとサラミの盛り合わせが置かれた。
 
 「では、乾杯。」
 「はい。」
 
 カン、とグラスの縁を合わせ、二人して琥珀の液体に口をつける。
 
 「……お師匠様は、」
 「はい?」
 
 何故誘った?何故能力者の自分にお酒を?何故自分が荒れていると気付いた?
 上手く言葉にできない。何が訊きたいのだっけ?
 筧はこちらを見るともなく見て、続きを待っている。
 
 「こちらには、良く来られるので?」
 「あんまり来ません。」
 「……そうですか。」
 「お酒はよく飲まれるので?」
 「は!」
 
 冷や汗が吹き出る。
 里では、能力の減退を防ぐため未成年の飲酒喫煙は戒められている。
 法律など守る必要はないが、忍者としての働きを阻害する物は排除しなければならない。
 「よく飲む」などあってはならないのだ。
 それなのに自分は、躊躇わず筧と同じウイスキーを頼んだ。
 通常なら、無理にでもソフトドリンクを頼むべきだ。
 いや、それを言うならそもそも酒を飲まない者をバーになど誘うか?
 それでも『はい』とだけは応えられない。
 
 「いえ……。」
 「そうですか♪」
 
 とっさに絞りだされた言葉は、とても模範回答とは言えない物だったが、すっと目線を外した筧に安堵する。
 
 「夜空を見ながらの晩酌など、なかなか粋な御趣味だと思っていましたが♪」
 「あ……。」
 
 筧はにっこりと笑って、また鳥越の顔を覗きこんだ。
 
 「……。」
 「不問に処します。」
 「は……。」
 「そも、酒如きで消え去る脆弱な異能なら初めから要りません。」
 「はい。」
 「すみません。次はビールを。」
 「畏まりました。」
 
 ビールに始まり、以降は度数の低いカクテル、ソフトドリンクを順にこなしていった。
 できるだけ長く細く酔い続けるように。
 鳥越の口は少しずつ饒舌になり、依頼の失態、売春の失敗などを語り始めた。
 そして、やはり。話題はここにたどり着く。
 
 「神は、やつがれに何を求めておいでで。」
 
 先輩忍者である丘・敬次郎に攫われ、鳥越・九という名前を与えられ、
 忍者としての鍛錬を受け、銀誓館学園に投入され。
 
 『ハッピーエンドを齎せ』と命じられた。
 けれども何故自分なのか。何故丘・敬次郎だけでは足りないのか。
 日々の任務がどのようにハッピーエンドと繋がるのか。
 それは分からないまま。
 
 「貴方が貴方であることを。」
 
 『神』の一柱、筧・次郎は応えた。
 
 「……役割、は。」
 「『鳥越・九』。それのみです。」
 
 自分が作り出された『キャラクター』なら、意味があるはずだ。
 そう願って絞りだした問いは、霞のような答えに消えた。
 
 「……。」
 「酔いは、醒めてしまいましたか。」
 「いえ……。
  ですが、ビールをもう一杯いただきたく。」
 「よろしいですよ♪」
 
 
 翌日、鳥越は深刻な二日酔いに悩まされたが、苛立ちの靄は晴れ、
 代わりに砂塵のような不快感が漂った。
 顔が引き締まるのが分かる。
 これでいい。これで十分だ。
 
 「イグニッション。」
 
 鳥越・九は百目の衣装に身を包み、トンファーを握った。

 
 以上……。

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