精霊

「なんでドブにいないのですか?立って歩いていたら人類に失礼でしょうが。

こんばんは、鳩です……。

妄想シルバーレイン……。

 生き損ない

――――防護服を着たヒトがいたとして。
――――たとえば、オオスズメバチなら、貫くことができるかもしれません。
――――ヘラクレスオオカブトの突進なら、破ることもできるかもしれません。
――――しかしね、貴方方は同じ虫けらとは言え、
――――ショウリョウバッタに生まれ付いているなら、最早議論にも上れない。

筧・次郎は確かに状況を楽しんでいたし、同時に状況の危険度を正確に把握しても居た。

「行け行け!全力の一撃を喰らわせろ!二発三発は後続に任せるんだ!」

 銀誓館学園の、司令官らしい生徒が吠えた。
 自身の手にも大きな剣を持ち、腕を引き絞って必殺の構えを取っている。

 ふふ、と筧次郎は笑った。

 確かに、ダイスロールは時の運。
 一対一なら負ける気はしませんが、千も二千もダイスを振られたら、
 ファンブルもクリティカルもあり得ます。

 対してこちらはカードゲーム。
 如何なダイス目に対しても手札に無い対応はできません。

 これはとても、危険だ。
 次郎は、状況を正確に把握していた。

 自分めがけて落ちる隕石、振り降ろされる腕、剣、棍棒。
 それらを注意深く交わしながら、カウンターで凶器を突き入れていく。

 「フェニックス・ブロオオオオ!!」
 「ファイアフォックス様でしたか。」

 反撃の最中に割り込んだのは、先ほど見た司令官らしい能力者。
 ドラゴンころしのような大剣に炎を纏わせ、
 ブロウと言うよりはほぼ突きに近い形で突撃する。
 その剣を、次郎は手で受けた。

 「うーん♪」

 運動エネルギーは吸収しきれない。
 次郎の足は5センチほども地に埋まり、周囲に微震を齎した。
 だが、それまで。

 「!?」

 剣から炎が消えると同時、柄が痛いほど冷たくなる。
 見ると刀身は凍てついて霜を生やし、送り込んでいるはずの熱量が完全に消え去っている。

 「残念♪」

 次郎は、霜まみれの刃をいとも簡単に握り折った。
 能力者は、次郎の背後に無数の怨霊を見た。
 地の果てまで続く半透明の怨霊達の百鬼夜行。

 あれが、彼の業。
 常世を越え現世まで凍らせる忌まわしき怨恨の冷気。

 次郎はにこりと笑いながら、彼の頭部を拳で砕いた。

 筧・次郎を理解できただけ、彼は幸運だったと言えよう。
 続く数十人の包囲網は、次郎が振り向いた姿を脳裏に焼きつけたまま、
 超音速の打撃斬撃銃撃に死に絶えたのだから。

 次郎の周囲20mに、空隙ができる。

 「おや?」

 笑う次郎に、しかし戦線は上がらない。
 乾坤一擲を狙い、無駄を承知でダイスを振り続けると決めた作戦も、
 一撃も通らないとなれば心が揺らぐ。

 ヒーローの弱点を、次郎は見る。
 ヒーローは、自分の力で勝たなければならない。
 数ではなく、兵器ではなく、ヒーローたる己の力で勝たねばならない。

 しかし、彼らが選択したのは数の有利。
 傷を付ける方法を探せ、そのために実験を繰り返せ。

 それは、無駄を大いに織り込んだ作戦であり、
 意識的、無意識的に、己を唯一のヒーローとして扱う銀誓館生徒には聊かそぐわないものでもあった。
 反撃の礎になれば。
 そう自分を納得させていた者も、
 「反撃の礎にすらなれないのではないか?」と思えば、戦う手も鈍る。
 誰も彼も、兵卒の真の価値を理解していない。

 思わずため息をついた次郎の目に、水刃手裏剣が命中した。

 「おお……!」

 遠距離だからと油断していた。
 急所に!刃物が!!
 見ればその能力者の武器はナイフ。
 イニシアチブ、即ちクリティカルダメージが特に高い武器ではないか。

 確かに、銀誓館学園の作戦は正しかった。
 地力の勝る相手には優位で戦うしかない、
 だから数の優位をできるだけ生かせるよう戦う。
 どうせ二度目三度目の攻撃の前に倒されるのだから、初めから最大の火力を。
 後も先も考えるな、それはかすり傷を入れてからの話だ。

 次郎は再び嘆息した。
 次郎の眼は健在だ。
 無防備な眼球に突き刺さった水刃手裏剣は、眼球の強度に負けて散った。

 次郎のファンブルと、銀誓館のクリティカルは確かに重なり得る、事実重なった。

 だが、自動成功も自動失敗もステータスを変動させる効果は持たない。

 次郎は、珍しく笑みの消えた顔で手から長い水の刃を伸ばし。
 そして、生徒たちの首を薙いだ。

以上……。」

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