主従と申したではないか

「失せて。こんばんは、鳩です……。
 妄想シルバーレイン……。

主従と申したではないか
 中指を立てる。それは蹂躙の意思と証。
首を縦に振る。それは肯定と従属の証。

魔神筧・次郎と魔神筧・小鳩の、神域にしては余りにも卑近に過ぎた、マグワイ。

—-
翌日の手合わせもやはり、次郎の圧勝に終わった。
里の衆も拍手を終えると、まばらにそれぞれの持ち場へ戻って行った。

「やはり、主人には勝てませんな♪」

手を差し出すでもなく顔を覗き込む次郎。
仰向けに倒れた小鳩は、少しだけうらみがましく憎む。

――――しかし主(あるじ)。貴方の望みは、わたくしによる自身の打倒ではありませんか。

時と空間を越え、どれほどの修練と試行があったかは知らない。
しかし、どれほどの力も知識も、彼ら亜神の虚無を埋めるには足らなかったことだけは分かる。

「なるほど、伯爵を討ちそびれましたか。」
「は。」

丘・敬次郎は、御簾に移る『お屋形様』=筧・小鳩の影に頭を垂れる。

「如何様にいたしましょう。」
「なるように。」

御簾の奥からは穏やかな女の声。
怒声さえ覚悟していた丘には、肩すかしのようにさえ感じられた。

「なるように、でございますか。」
「数多の神と大御神の意思は、わたくし一人の力では動きませぬ。」
「なれば。」
「なるようになれ。」
「しかし。」
「しかして、丘よ。お前はお前であれ。」

丘はその声に、僅かながら人間性を嗅ぎとれたように感じた。

「……難しいことでございますね。」
「致し方ありませぬ。
銀誓館は絶対だ。わたくし如き脆弱な神の意思は通らぬ。
ならば次だ。次のハッピーエンドへ。」
「……承知いたしました。
当面は、伯爵を異形への切り札とする大陸妖狐の策をうかがいます。」
「……不服ですか。」

僅かな変化を嗅ぎ取ったのは、丘だけではなかったらしい。

「いえ。しかし……煮え切りませぬ。」
「でしょうね。
銀誓館の正義が世を平らげるには、余りにも障害が多すぎる。況や我らの『悪徳』をや。」
「なれば。」
「されど。
丘よ。まずは、ハッピーエンドを献じよ。」

その声に、迷いはなかった。

「そなたの望みは叶わぬかもしれぬ。
我らの望みは儚いかもしれぬ。
それでも。諦める訳にはいかない。
最後を見届けなくてはいけない。
でなければ、何も判断はできない。
よいか人形よ。持ち場を離れることは許さぬぞ。」
「は。」

「貴様は、わたくしさえも殺すことができないのだから。」

丘は只、頭を下げ、その言葉を聞いた。
悲しみなど聞こえぬふりをして。 


以上……。」

アイコン

広告

kiwivege について

nothing
カテゴリー: シルバーレイン パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中