蔑み

「内臓ぐらいは、綺麗なんでしょう?皆と同じ赤色で。

こんばんは、鳩です……。

妄想エンドブレイカー……。

 復仇

溜息だって深くなる。
パトリック・ケイジバランズは食事の邪魔をされるのが嫌いだ。
最近は犯罪課の仕事も相まって、アクスヘイムに居た頃よりも濃くて具の多いスープを味わえるようになっていたのに。

「聞いてる?」
「聞こえてるよ。」

ハティ・ガントバランズの乱入は、パトリックのささやかで厳かなディナータイムに行われた。地下の放棄領域に隠されたパトリックのヤサを突きとめ、容赦なく扉をぶち壊して押し入られたのである。
現実から逃避するように、闖入者に目を向けずシチューをひと匙口に運ぶ。
ハティが苛々と斧剣を突きだし、テーブルに落とす。パトリックは皿をずらして間一髪食器の破壊を逃れた。

「勿体ないことするんじゃない。」
「暢気ね。」

女の斧剣が今度は横に振られる。パトリックは大柄な体を器用に畳んで床を転がった。

「……飯ぐらいゆっくり食わせろよ。
げ、血が入っちまってるじゃねえか。」

毒づきながら皿に伸ばした手は、女の斧剣に阻まれる。
刃に滴る赤い液体は、ここに辿り着くまでに斬り伏せられたマスカレイドや夜盗共の物だろう。

「どうして母を殺した。」

女の青い目がパトリックを見下ろす。

「それこそ飯食いながらゆっくり話そうぜ。」
「ふざけるな。」
「まあ座りなよ。」
「ふざけるな!」
「座れ。」

パトリックが、初めてハティの目を見据えた。
ハティも、浅くない皺が刻まれたパトリックの顔を見据える。
穏やかな口調とは裏腹な、赤く血走った目。
同じだ。自分が斬り伏せてきた夜盗共と同じ、罪悪を伴侶に生きると決めた、悪人の目。奪うことに何のためらいも無くなった、擦り切れ果てた魂の目だ。

「……どうして母を殺した。」
「……髪と目の色、変わったよな?」
「質問に答えろ。」
「わかったわかった。」

そう言ってパトリックは皿を持ってキッチンへと移動し、棚から手鍋を取り出して食べかけのスープをあけた。

「どうして母を殺したか、だったっけ?」
「そうだ。」
「いい女だったなあ……。」

背中を向けたまま、パトリックは皿を洗いだした。

「言ってもしょうがねえことではあるけど、 言わなくてもしょうがねえことだもんなぁ。」
「……。」

ハティは音を立てずに斧剣を構える。いつでも首を取れるように。

「俺の中の悪魔が言ったのよ。殺せって。」
「……それだけ?」
「それだけだよ?」

パトリックが応える前にハティは地を蹴っていた。
テーブルを飛び越え総身を引き絞り、群竜士の技・流星脚を繰り出す。

パトリックが横に身を交わすとハティの足が床をえぐった。間髪を入れずハティの斧剣が振られるが、これも届かない。顔を向け直した途端、身を縛る呪いがハティに襲い掛かる。パトリックの手にはいつの間にか、魔道書が収まっていた。
開け放たれた棚には、ナイフや斧、トンファーに紫煙銃と言った武器が一揃い転がっている。食事を片づける振りをして、初めからこれが目的だった。

「クソッ!」
「クソはこっちのセリフだ。」

パトリックの右手には既に仕込み杖も握られている。不意打ちによるハティの優位はあっさりと覆されていた。

「むさ苦しくもここは俺のヤサだ。勝手に入って来て暴れるってんなら、正当防衛をさせてもらうぜ。」
「何が正当防衛だ、人殺し!」
「へえ、お前はまだ誰も殺してないってのか?」
「わたしは!……お前とは違う!!」

呪いに縛られた体を精神力で押し、再び飛びかかる。しかしその腹には、パトリックの蹴りが突き刺さった。

「お……えぇ……。」

蹲るハティを確認しながら、パトリックは後ずさる。

「逃げる……のかっ……!?」
「勿論♪」

ハティの目線を、パトリックは笑顔で受け流した。

「死にたくないし殺したくもないし、かと言って話しも聞いてくれそうにねえし。」
「待て……!」
「俺の二つ名はご存知だろう?」

『モグラ』・パトリック。

「不意打ちに押し入ったつもりらしいが、生憎、地下の放棄領域は、俺の巣だ。」

そう言いながらパトリックが押した壁は、扉のように開いた。

「狙いは良かったけど、まだまだだねえ。」
「待てぇ……っ!」
「そういやブーステッドになったと聞いたが、『赤い少女』の姿は覚えているかい?」

『赤い少女』。ブーステッドとして才能を開花させる時に見るという、バッドエンドとの戦いの意思を問う幻の名前。
ハティの脳裏にも、彼女の姿が浮かぶ。顔は思い出せないが、強烈な印象は忘れない。
いずれ地上からマスカレイドが消え去ったら、真意を問うつもりでいる、燃え盛るツーテール少女のシルエット。

「いつか聞かせておくれよ。俺の中の悪魔どもも興味津津らしいから。」
「ふざけるなっ!」

そう言って、パトリックは闇の中へと消えた。
三度飛びかかるも、壁は既に閉じた後。
パトリックを倣って触ってみるがびくともしない。

「……くっそ!」

ようやく呪いの解けた腕で、思い切り壁を切りつける。
壁は当然のように斧剣を弾き、ハティは少しだけ、星霊建築を恨んだ。

以上……。」
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