因果より運命より

「消えて失せろ!こんばんは、鳩です……。

 妄想エンドブレイカー……。

正気の担保
 
――「人の喜ぶ顔が見たくて。」そうとも俺達は。その為にヒーローをやっているのだろ。
やり方が正しかろうが間違っていようが、頭がイカれていようがまともだろうが、誰かを笑わせたい気持ちに良いも悪いもあるものか。

巧妙に作られた夢は、現実と区別がつかない。少なくとも目覚めるまでは。
真っ黒な空間が徐々に白むと、四体の怪物が立って、彼を睥睨していた。

一人は背の高い男性。無数の蟲で作られた人体が、気色悪く蠢いている。
一人は背の低い女性。二つに結った髪が翼の形を無し、全身から黒いタールを染みださせながら真紅に燃え盛る。
一人は背の高い少年。六対の腕に刃物、銃器を満載している。
一人は背の低い少女。千色皮で出来た皮膚から、無数の目玉が覗いている。

これらは、彼――パトリック・ケイジバランズ――が従えている悪魔たちだ。

「……何だよ。」

パトリック本人をして、悪魔達の姿をこれほどはっきりと見るのは稀なことであった。
悪魔は、この世界に正しい姿を現すことができない。
ちょうど、心のありようを目で見ることができないように。
だから、今ここに見える彼らの姿は、単なる幻に過ぎない。
そして、幻が「はっきり見える」などというのは、正に夢か狂気かのどちらかに間違いがないのだ。

「少し考えていたのですが。」

長身の男が口を開いた。

「自分の仮説にどうやらある程度自信がもてそうだったので、告げたいと思いまして。」
「……。」

ここにきて、初めてパトリックは自分が跪いていたことを自覚し、立ち上がる。
そうすると男の悪魔は体を曲げ、無理な体勢でパトリックをねめ上げた。

「マスカレイドを作っているのは、エンドブレイカーではないのか、ということです。」
「……。」

別段驚きはない。ここは夢の中。
全ての事象はパトリック自身が作りだしたもの。だから彼の言葉もまた、パトリックの思いの代弁に過ぎない。

「善悪を問う気はありません。」

今度は六対腕の少年が笑顔で言った。

「事実、マスカレイドが悲劇を量産し、エンドブレイカーがそれを阻止している。
もしかしたら、『阻止できる程度の悲劇』を、マスカレイドの形に具現化しているのかもしれません。ならば、エンドブレイカーがこの世界の平和に寄与していることに変わりはない。」
「しかし。」

後を継いだのは燃え盛る女。パトリックにはわかっていた。

「我らの悲願は、マスカレイドの掃滅です。」

そう。パトリックは知っている。悪魔はマスカレイドの退治でも撃退でも無く、『掃滅の為に』彼に宿ったと語った。即ち、撲滅、絶滅、根絶の為に。
そうであるならば。

「聊か、揺らぐ。」

千色皮の少女が静かに告げる。パトリックの傍らには、いつの間にか娘が立っていた。

「……ヘンリエッタ。」
「……何故ここに?!」

娘――ヘンリエッタ・「ハティ」・ガント・バランズ――が驚いた顔でこちらを見て。
パトリックの夢は覚めた。

目覚めると、頭が痛かった。
ああ、頭痛で目覚めたのかとすぐに理解し、また目を閉じる。
しかし、もう眠気は去ってしまった。頭が痛いと自覚してしまったから。
昨夜あんなに飲んだからな。

……ハティ。

夢の中で見た娘の姿を思い出す。
母の仇として俺を殺しに来た彼女の姿は、懐かしく、新しく、嬉しくて悲しかった。
あそこに彼女がいたということは、どういうことなのだろう?

悪魔が見せる夢は、いつだってはっきり覚えている。
だってあれは夢ではないのだから。
俺の中に巣食う悪魔が、俺という脳味噌を使って思考している過程だから。
目覚める直前に娘が居た。
デモン達と娘には、何か因縁が……。

しかして、起きぬけの頭脳には悪魔の意図を探るだけの集中は期待できなかった。
尿意に立ちあがり、今日の仕事を想起する。

焚火の前で目が覚めた。
炎は最早枯れ果てているが、灰の中に微かに赤熱する薪が見える。
そんなことは問題ではない。
今夢見たのは。

–否、夢ではない。

ハティ・ガントバランズの思考ははっきりとしていた。
白い空間。四体の怪物。
そのうち一体は、間違いなくわたしが見た赤い少女だ。
燃え盛る、二つ結びの女……!

餓えて倒れたわたしに、彼女は言った。

「わたくしは貴方を生かすことができる。
ただし約束が必要です。
この世界を脅かす、マスカレイドを根絶する役目を負って欲しい。
人に災いと堕落を齎す不可視の魔を。
戦い続ける過酷な生で良いなら、差し上げます。」

そしてわたしは、エンドブレイカーになった。
エンドブレイカーがマスカレイドを生むなら、わたしが倒すべきは……。

だが、深く考えないようにした。
わたしは生きている。
そして、例えマスカレイドを倒さなくても生きていけるだろう。
ただ、見えてしまったエンディングを我慢できないという性(サガ)さえ除けば。
知らないバッドエンドは、予防することもできない。
約束なんて守らなくてもいいのだ。

マスカレイドよりももっと殺さなければいけない相手がいるのだから。
わたしの母を殺した、あの男を。

何故夢に出てきた。
赤い少女のそばにいた三体は何者だ。

わたしは一体、何に生かされた?

「よう。お前にしか見えないものが現実であると、誰が保証してくれるんだい?」

盲いたモグラは、目など当てになるのかと疑い。

「教えてよ。だれがアンタを生んだのか。アンタの仮面を誰が付けたのか。」

暴君は、答えられない問いを問う。

以上……。」

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