抗いは権利にあらず

「さきいかですら酒のつまみに役立っていると言うのにお前ときたら……。

こんばんは、鳩です……。

妄想バロックナイトイクリプス……。

真白い闇

もう一度あの場所へ。
そう願ってもぐりこんだインターネット。

鳩目・ラプラース・あばたは再び人格の統合を試みる。

最初は自分の視界があった。
歩き続けると自分の手足が見え、
足の裏に地を歩く感触が生まれる。
自分の吐息を感じる。
鼓動に気が付く。

自分を定義する一切が再構築されていく。
白銀で出来た手を握り締める。
これはわたしがイメージする正しいわたしの姿だが、現実のわたしの腕はまた違う形なのだろう。ここで見るものは、全てが夢の中のようなもの。脳の中の真実をそのまま映し、それ以外の現実を一切反映しない。

だから、目の前に現れた男もわたしの中にいる単なるイメージなのだ。

「アクセスできるようになりましたか♪」

黒いツーテールの髪を揺らす少年がこちらを見ている。
丘・敬次郎。
鳩目・らぷらーす・あばたの「師匠」であり、彼女をエリューションとして叩き上げた張本人。

「御蔭様で。」

まるで感謝のこもらない言葉を返し、あばたは足を止めた。

「何用です?」
「少し憂さを。晴らしに。」

言うが早いかあばたが駆ける。思い切り右拳を突き入れる。ぱぁんと空気の弾ける音がして、丘の掌に受け止められた。

「あはぁ♪」

受けた拳を握り返し、捻って側面へ投げ飛ばす。あばたの体が白い地面を転がる。
即座に耐性を立てなおしたあばたが腰の銃を抜き撃つ。
発射された五発の弾頭はしかし、丘の片手にあっさりとあしらわれた。

銃を仕舞いながら跳ぶ。落下しながら拳を振り降ろす。
丘がほんの一歩下がっただけで攻撃は外れ、メタルフレームの拳は床に突き刺さった。

「そうそう、憂さ晴らしなら、壁でも殴っていればいいんです♪」

割れた床を踏みにじり、続いてアッパーカットを振り放つ。これも外れ。
嫌らしく笑う丘の顔に左のストレートを打つが、ツーテールの片房を掠めるだけ。
伸びきった手首を丘の手がつかむ。

振りあげ、振り降ろす。
あばたの肉体が白い床に叩きつけられ、全身にノイズが走る。
振りあげ、振り降ろす。
振りあげ、振り降ろす。
振りあげ、振り降ろす。
床が割れ、真っ白な闇が覗く。
あばたの視界はシェイクされ、肉体には深く痛みが走り、体中の骨が軋んだ。

一際強く地に投げつけると、白い床はあばたの肉体の形に凹み、彼女の体を捉えてしまった。

「全く、全然。話になりません。
あなたまだ、自分の人間的な心が何かを成せると思いこんでるみたいですけど、そんなことは一切ないんです。
『ぼくら』はバケモノだ。『手が口ほどに物を言う』。
敵を斃すことだけが、僕らの言葉なんだ。」

床が割れ、白い闇の中へ落ちて行く。

三半規管の齎す不安定感が、あばたの精神を肉体に呼び戻した。
目の前にはパソコンのモニタ、画面にはコンソール、打ちこまれた文字は、

“quantumd -avatar”

「……。」

電子接続式ツーテールウィッグをゆっくりと外す。現実の手応えを確かめるように。
掌を見る。
先ほど見た幻影とは、形が違った。
白い闇の中で丘・敬次郎に振るったよりも細く、繊細で、物を殴るのに向いてなさそうなメタルの手。
確かにこれがわたしの手だ。
ならばあの場で見た白いガントレットは、わたしのイメージの中のわたしの手なのだ。
この細い手にわたしは、あの太いメタルを想起していた。イメージしていた。わたしの手はそういう形なのだと思っていた。

現実はそうではない。

しかし。

『わたしたち』に限っては、現実がどうであるかはあまり大きな問題ではないのだ。
心の中の「こうであるはずだ」という思い込みこそが真実であり現実。

今は理解しなくていい。じきにわかる。すぐにわかる。

我ら超常の物にとっては、イメージこそが……。

以上……。

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